アメリカの退職プランを理解しよう!401(k)と Secure Act 2.0

アメリカの多くの労働者にとって、退職プランは福利厚生の中でも最も魅力的なベネフィットです。メットライフ社が実施した調査では、60%の従業員が、新規雇用先を検討する際に退職プランを重要視していると述べています。アメリカでは2022年に既存の401(k)などの退職プランをさらに強化するためにSecure Act 2.0という法律が制定されました。この法律は退職プランを特に中小企業や若年層、高齢者にとって利用しやすくするためのものとなっています。今回はアメリカで働く人なら絶対に知っておきたいアメリカの主要な退職プラン401(k)とSecure Act 2.0の重要なポイントについて詳しくご紹介します!

アメリカの主要な退職プラン、401(k)とは

401(k)プランはアメリカでの退職準備において非常に重要な制度であり、従業員が自身の退職金を積み立てるために使われる個人運用型の確定拠出年金プランです。
下記に401(k)プランの仕組みや関連するポイントについて説明します。

確定拠出年金とは

確定拠出年金は企業や従業員が毎月一定額を積み立てて運用し、将来のリタイアメント時に受け取る年金です。この仕組みの代表的なプランには「401(k)プラン」と「IRA(個人退職口座)」があり、リタイアメントの資金を積み立てるためにアメリカで多くの人が利用しています。アメリカの確定拠出年金は、自分で積立額と運用方法を選びながら、リタイアメント資金を計画的に増やす仕組みになっています。

  1. 401(k)プランの仕組み

従業員拠出: 従業員が自分の給与から指定の金額を401(k)口座に拠出します。年ごとに拠出限度額が定められており、2024年時点では50歳未満で$23,000、50歳以上では「キャッチアップ拠出」として$7,500の追加の拠出が許可されています。2025年からは50歳未満は最大$23,500ドルを積み立てることができます。50歳以上の従業員のキャッチアップ拠出限度額は、2024年と同額の7,500ドルに据え置かれますが、60歳から63歳の従業員のキャッチアップ拠出限度額は7,500ドルから11,250ドルに引き上げられる予定です。

雇用主のマッチング: 多くの企業は、ベネフィットとして従業員が拠出する金額の一部に対して企業の追加拠出を行う「マッチング」を提供しています。例えば、従業員が年収の5%を401(k)に拠出し、企業がマッチングとして、その50%を上乗せして拠出する場合、合計で7.5%が拠出されます。企業によってマッチングの割合は異なりますが、この上乗せは従業員にとって大きなメリットとなります。

  1. 税制上の優遇

従業員の税控除: 401(k)の最大のメリットのひとつは、拠出金額が税引き前の所得から控除される点です。これにより、拠出額に対して課税されないため、拠出するほど所得税の負担が軽減されます。

投資利益の非課税運用: 拠出金額は、運用中に得た利益も含めて非課税で成長します。例えば、401(k)で株式や投資信託に投資して資産が増えたとしても、引き出すまで課税は発生しません。

ロス401(k): 従来の税引き前拠出型とは異なり、「ロス(Roth)401(k)」は拠出時に課税されますが、引き出し時には非課税で受け取れるという特長があります。引き出し時に税金を避けたい場合にはロス401(k)が適しています。

  1. 投資の選択肢

401(k)プラン内での投資オプションは、通常、雇用主が提供する投資商品から選ぶ形です。多くのプランには株式ファンド、債券ファンド、ターゲット・デート・ファンド(引退予定年に合わせてリスクを調整するファンド)などの選択肢が含まれています。

  1. 引き出しの制限とルール

401(k)プランは、基本的に59歳半以降に引き出すことが推奨されており、それ以前に引き出す場合には10%の早期引出しペナルティと所得税が課されます。ただし、住宅購入や医療費、障害などの「ハードシップ例外」がある場合はペナルティが免除されることがあります。引き出し時に税金が課されるため、資金計画の段階で税金についても考慮する必要があります。

  1. 退職後の取り崩し(RMD: Required Minimum Distribution)

401(k)プランには「最低引き出し義務(RMD)」があり、規定された年齢から(2024年では73歳)毎年一定額を引き出すことが義務付けられています。引き出す額は、口座残高や年齢に基づき決定され、引き出しが行われないと罰金が課されます。ちなみにロス401(k)にはRMDの規則が適用されないため、将来的に資金を引き出す必要がない人にとっては有利です。

このように401(k)プランは、アメリカの従業員が退職に向けて効率的に資産を増やすための重要なツールであり、税制上のメリットや雇用主のマッチングを活用することで、退職後の生活を支える資金を計画的に準備することが可能です。

その他の主な退職プラン

403(b)プラン

403(b)プランは、主にアメリカの教育機関や非営利団体の従業員向けの退職プランです。仕組みは401(k)プランに似ており、給与天引きでの積立が可能で、税引き前の拠出により税金が繰り延べされます。そのため、将来の引き出し時に課税されるものの、運用時は非課税で資産が成長します。

IRA(Individual Retirement Account:個人退職年金口座)

IRA(Individual Retirement Account:個人退職年金口座)は、アメリカで個人が老後資金を積み立てるための税制優遇つきの貯蓄口座です。主に2種類のIRAがあり、それぞれ異なる税制優遇を提供します。

Traditional IRA

Traditional IRAでは、毎年の拠出額が一定の条件下で所得税控除の対象となり、資産運用の成長分も非課税で積み立てができます。引き出す際に課税されるため、現役時代に税負担を軽減し、退職後に収入が減少してから課税されるメリットがあります。また、規定された年齢から「最低引き出し義務(RMD)」に従い、一定額を毎年引き出す義務があります。

Roth IRA

Roth IRAでは、拠出時に税金がかかりますが、その後の資産運用や引き出し時に非課税で受け取ることができます。長期的な投資成長が見込める場合や、退職後も課税を避けたい場合に適した選択肢です。Traditional IRAと異なりRMDの規定がないため、生涯にわたり口座内の資産を成長させることが可能です。

また、IRAは雇用主のプランに依存せず、個人で開設・運用ができるため、401(k)や403(b)の補完的な老後資金対策としても活用されています。

SecureAct2.0とは

2022年12月29日にバイデン大統領によって退職プランの改革を行うSecureAct2.0 が署名されました。SecureAct2.0では 米国市民の貯蓄を促進し、退職金プランを提供する企業のインセンティブを高め、 退職後の貯蓄の管理を柔軟柔軟にするため の92の新しい規定が含まれています。

SecureAct2.0が制定された背景

多くのアメリカ人が退職後の生活費を賄うための貯蓄が不足しており、老後の経済的な不安が広がっていました。特にアメリカの主要な退職プランである401(k)やIRA(個人退職年金口座)などへの加入者の割合が十分ではなく、また十分な貯蓄を積み立てられていない層が増えていました。また、アメリカでも急速に高齢化が進んでおり、退職後の生活を支えるための資金確保がますます重要になっています。SecureAct2.0はこれを改善するため、貯蓄促進策を提供し、退職後の経済的安定を支援することを目的としています。

また、従来、中小企業や非正規雇用者にとって、退職プランにアクセスするのが難しいという課題がありました。SecureAct2.0では、中小企業が従業員のための退職プランを提供しやすくするための税制優遇やインセンティブが含まれており、多くの労働者が退職貯蓄を始めやすくなることを目指しています。

SecureAct2.0の重要なポイント

  1. RMDの開始年齢引き上げ

退職プランに入れたお金は既定の年齢に達したら、最低限の金額を引き出すようIRS(内国歳入庁)で義務づけられており、これをRMD(Required Minimum Distributions)と言います。従来、401(k)や個人退職口座(IRA)などの税制優遇のある退職口座からの最低限の金額の引き出し開始年齢は72歳でした。SecureAct2.0は、この年齢を2023年から73歳、ならびに2033年からは75歳に段階的に引き上げます。これは、高齢者が資産を長期的に成長させ、より柔軟な資金計画を立てやすくするための措置です。さらに、開始年齢の引き上げにより、税制上のメリットを長期間享受でき、老後の備えが強化されます。

  1. 自動加入(Auto-enrollment)と自動増額(Auto-escalation)の義務化

SecureAct2.0により、2025年1月1日から401(k)や403(b)といった退職プランの新規加入者は自動的に口座に加入し、給与の一定割合が自動的に拠出されるようになります。初期拠出率は3%から10%の範囲で設定され、さらに毎年1%ずつの自動増額が行われ、10%から15%の範囲で最大拠出率に到達します。この措置により、従業員が計画的に老後のための貯蓄を進めやすくなり、より多くの資金を確保することが期待されます。

  1. キャッチアップ拠出額の増額と特定年齢層への優遇措置

50歳以上の従業員が追加で行える「キャッチアップ拠出額」が増額され、特に60歳から63歳の年齢層に対しては2025年以降に限度額がさらに引き上げられます。この特定年齢層のキャッチアップ拠出は、より多くの資産を短期間で積み上げられるよう支援し、早期の退職や不足する老後資金への対応策となります。

 4. 長期パートタイム労働者への401Kへの参加を義務化

従来、ほとんどの退職プランは、従業員が12ヶ月間に1,000時間以上勤務することを求めていました。この基準により、多くのパートタイム従業員が退職貯蓄プランから除外されていましたが2024年からSECURE法に基づき、企業は3年連続で12ヶ月間に少なくとも500時間の勤務を行った長期パートタイム従業員が401(k)プランに参加する機会を提供することを義務づけました。SECURE法は、今後、長期パートタイム従業員の適格性をさらに拡大し、2025年からは2年連続で500時間以上サービスを行った従業員が401(k)プランに拠出できるようになります。

  1. 緊急出金の許可

SECURE Act 2.0では、特定の緊急時に退職口座からのペナルティなしでの引き出しを認める条項が含まれています。具体的には、災害や医療費などの緊急事態に対して、従業員が最大1,000ドルまでの緊急出金が許可されており、これにより、突然の経済的負担に柔軟に対応できます。

 6.中小企業への税制優遇措置

SECURE Act 2.0は、従業員の退職プランを新たに導入した小規模企業に対して、税制優遇措置を提供しています。具体的には、退職プランを新設する際の費用に対する税額控除が拡大されており、中小企業が従業員のための退職プランを導入しやすくなっています。これにより、より多くの企業が退職プランを提供し、全体的な労働者の老後準備が促進されることが期待されます。

そのほかにもSecure Act 2.0は多数の改定が施されており、多くの人々の退職資金形成を助ける重要な役割を担うと考えられています。より詳細な内容を知りたい方はSECURE 2.0 Act of 2022をご覧ください。

今回はアメリカで働く人なら絶対に知っておきたい主要な退職プランとSecure Act 2.0の重要なポイントについて詳しくご紹介しました。高齢化社会が加速するにつれて老後の資金対策は誰にとっても大変、重要な課題となっています。ぜひ、今回の記事を読みこんで老後の資金対策の参考にしてください。

 

参照

https://www.jccc-chi.org/wp-content/uploads/JCCC-News-0524-14-15.pdf
https://www.irs.gov/newsroom/401k-limit-increases-to-23500-for-2025-ira-limit-remains-7000
https://www.finance.senate.gov/imo/media/doc/Secure%202.0_Section%20by%20Section%20Summary%2012-19-22%20FINAL.pdf
https://www.irs.gov/retirement-plans/401k-plans
https://www.bankrate.com/retirement/best-retirement-plans/#ira-plans
https://am.jpmorgan.com/us/en/asset-management/adv/insights/retirement-insights/defined-contribution/secure-2-0/
https://www.kiplinger.com/retirement/bipartisan-retirement-savings-package-in-massive-budget-bill#:~:text=SECURE%202.0%20increased%20the%20required,age%20eventually%20moves%20to%2075.
https://www.shrm.org/topics-tools/tools/express-requests/part-time-employee-401-k–eligibility

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