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アメリカでは医療用または娯楽用の大麻が合法化される州が増え、職場でも混乱されていらっしゃる方も多いようです。
そこで今回は「娯楽用のマリファナ解禁に伴う職場への影響」について、Pacific Dreams, Inc.の酒井氏にお話を伺いました。ご参考となれば幸いです。
日本では見つかれば即刻逮捕されるという違法薬物の大麻、別名マリファナ、英語での俗称はWeed、PotあるいはGrassなど多数。日本では大麻取締法という厳格な国の法律があるからで、アメリカでも連邦法上では非合法でやはり見つかれば逮捕の対象になります。ですが、1996年にカリフォルニア州で医療用(Medical Use)マリファナが解禁され、今年現在(2019年4月)33の州で医療用としてのマリファナ使用が合法化されています。
さらに2014年からコロラド州とワシントン州が州レベルで娯楽用(Recreational Use)マリファナの解禁を州民投票のよって可決され、事実上マリファナは解禁状態となりました。州レベルで解禁されている州は毎年増え続け、現在は10州プラスワシントンDCとなっています。今後、ニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット、デラウェア、そしてイリノイの各州でも年内に娯楽用マリファナの使用が合法化されることがほぼ決まっています。
このようにアメリカの各州は、マリファナ合法化に完全にシフトをしてきており、米ギャラップ社が行った最近の全米世論調査でもアメリカ国民の61%はマリファナ合法化を支持しているという数字が出ています。隣国のカナダでは昨年10月に国としてマリファナを合法化する法律が制定されました。
それでは、会社としてそこで働く従業員がマリファナを娯楽のために吸うことに対して、もはや何の介入もできなくなるのでしょうか。さすがに答えとしてはノーで、業種や職種によっては他の法律のもとに会社が介入をして、マリファナの使用を禁止することができます。たとえば運送業や製造業など、自動車や機械を操縦する職務にある従業員に対しては、マリファナの使用を一切認めないという会社ポリシーを課すことができます。
それらのポリシーは皆さんの会社にある従業員ハンドブックの中にマリファナを含む薬物禁止ポリシーという項目の中で通常記述が書かれてあるのではないでしょうか。もしそのような薬物に関する記述がハンドブックに書かれていないようでしたら、やはり次回のハンドブック改定時には、薬物禁止ポリシーをあらたに付け加えるべきでしょう。
ここで注意するべきことは、もはやマリファナはいくつかの州レベルにおいては違法薬物ではないということです。違法ではないものを禁止するということですから、会社としてはそれなりの覚悟と従業員が納得できる理由とが必要であると思います。職場での事故をなくし、従業員の安全を守るというのは誰もが納得できる正当な理由です。マリファナ使用者は、非使用者と比べて業務上での事故や怪我による労災(Workers’ Comp)申請率が5倍も高いという数字が出ています。また遅刻率は3倍、欠勤率も2.5倍高いという数字も出されています。
今年合法化をするであろうニューヨーク市では、雇用前におけるドラッグテストの検査禁止条例を賛成多数で市議会は可決したところです。デブラシオ市長も条例へ署名することをすでに表明していますので、市長署名後1年にこの検査禁止条例は施行になることはほぼ間違いありません。ですが、この条例ができるまでは雇用前のドラッグテストは依然合法ですので、続けるべきであり、もしまだテストをやっていないのであれば、新たに開始してもよいとさえ考えます。ドラッグテストをやっている会社はドラッグ使用者からは雇用上で敬遠される傾向があるからです。
マリファナのドラッグテストは通常尿検査で行われ、会社で指定した検査機関(ラボ)に応募者が直接行ってもらって、そこで検査を受けてもらいます。検査結果は翌日には出ます。検査費用は比較的安価で検査結果も精度が高く信頼できるのですが、中には尿検査中に中和剤を尿に混ぜて検査を改ざんする受験者もいて、最近ではコストはまだ高いのですが、唾液によるテストも普及するようになりました。
また、会社のドラッグテストポリシーの規定に従って、就業後における抜き打ち検査も行うことができます。娯楽用マリファナの解禁にともなって、職場における事故とそれによる労災申請は間違いなく増えるであろうと思われます。またマリファナ使用に関する職場での訴訟もおそらく今後増えることが予想されます。
日本とはまったく異なるアメリカでの大麻に対する考え方に戸惑っていらっしゃる方は多いかと思います。弊社でもハンドブックやポリシーの見直しなどのご相談も増えてきました。この際、しっかりと社内の規定について見直し、点検をされてみてはいかがでしょうか。
【執筆】
酒井謙吉氏(Ken Sakai)
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
Email :kenfsakai@pacificdreams.org
【酒井謙吉氏プロフィール】
信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。
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