アメリカではさまざまな分野で、たくさんの日本人の方が活躍されています。このコーナーでは、アメリカで働いている日本人の方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いしています。今回はパフォーマー、モデル、そしてオンラインパーソナルトレーナとして活躍していらっしゃるNatsumi Miyazaki Paughさんにお話を伺いました。
ニュージャージーで働く、パフォーマー、モデル、Natsumi Miyazaki Paughさん
Natsumi Miyazaki Paughさん
Performer、Model
https://natsumi-paugh.studio.site/1
自分なりのパフォーマンスアートを追求していきたいです。
…Natsumiさんの現在のお仕事について教えてください。
日本ではシンクロナイズドスイミング(現:アーティスティックスイミング)の日本代表を務めさせていただきました。その後渡米し、現在はニュージャージー州のアトランティックシティで公演されている「Spiegelworld」による「The HOOK」にアクロバティック・ポール・ダンサーとして出演しています。
ショーの仕事と並行して、ミュージックビデオやCMにパフォーマーやモデルとして出演しています。最近の代表的な仕事としては、「Lizzo – About damn time」「Fears of Tears – River of mercy」などのミュージックビデオや「Visit California」「GFore」などがあります。また、ヨガ、フィットネス、ワークアウト・ストレッチ、英会話をご指導させていただくオンラインパーソナルトレーナーとしても活動しています。
…「Spiegelworld」について教えてください。
「Spiegelworld」は2006年に誕生したコメディ劇団で、現在はラスベガスで「Absinthe」「OPM」「Atomic Saloon Show」の3つのショーを上演しています。そして、アトランティックシティでは私も出演している「The HOOK」を興行しています。
…「The HOOK」について教えてください。
「Spiegelworld 」による2023年の7月に始まった新しい作品で、18歳以上の方にご覧いただける、世界のトップレベルのパフォーマーによるコメディとアクロバットのショーです。ニュージャージー州のアトランティックシティにあるシーザーズ・アトランティックシティ・ホテル&カジノ内の劇場で公演されています。
…Natsumiさんはどのような役割で出演されていますか?
私はファーストクラスの乗客という役で、アクロバティック・ポール・ダンスを担当させていただいていますが、ショーの開幕をかざるオープニングアクトという大切な役割を任されています。ショーが始まるという期待や高揚感でワクワクされているお客様の期待をさらに超えられるよう、そして魅了できるようにと思いながら演技をさせていただいています。
…お客様の反応はいかがですか?
オープニングという大事な役目ですので、スタートから観客の方を惹きつける演技で最高に盛り上げたいという気持ちで毎回舞台に上がらせていただいています。お客様の歓声や驚きの叫び声、大きな拍手を受けるたびに、舞台の上からもみなさんに喜んでいただいていることが感じられます。パフォーマンスが終わると、毎回スタンディングオベーションで喝采をいただいていて、それがとても嬉しいです。また、チップが飛んでくることもあって、今までに経験したことのない驚きも感じています。(笑)
…アクロバティック・ポール・ダンスとはどういうものですか?
しっかり固定された垂直の棒を使い、音楽に合わせながら体の柔軟性と筋力でアクロバティックな技を披露します。ポール・ダンスというと、以前は官能的なダンスのイメージが強かったかと思いますが、近年ではスポーツとしての認知が高まっています。今回のショーでは、エキゾチック・ポール・ダンスとポール・フィットネスをミックスした今までにないものをつくりたいという要望にお応えした作品となっています。
…「The HOOK」について他に特徴はありますか?
舞台が観客席にとても近い場所に設置されていますので、世界トップレベルのパフォーマーによる最高の演技を、間近に、迫力満点でご鑑賞いただけます。また、シアターはイタリアンレストランとバーが隣接されていますので、劇場のお席でカクテルなどの飲み物を楽しみながらショーを鑑賞していただくこともできます。さらに、レストランやバーでもエンターテイメントがありますので、その場で一流のパフォーマンスをご覧いただきながらお食事やドリンクを楽しんでいただけます。
…ご経歴を伺いたいのですが、シンクロナイズドスイミングはいつ頃始めましたか?
通常はみなさん5歳、6歳の頃からスタートするのですが、私は12歳の時に始めました。14歳の時に全国大会で優勝し、15歳の時に日本代表に選出されました。そして、2014年のFINAシンクロナイズドスイミングワールドカップ、アジアオリンピックで銀メダルを獲得しました。
…水泳を始めたきっかけは何だったのでしょうか?
赤ちゃんの頃は体が弱くて、股関節がはずれやすいと両親がお医者様から注意を受けたことから、体への負荷が少なく、腰の周りの筋肉をつけることのできる水泳を2歳の頃から始めました。
…渡米されたきっかけは?
2015年にシンクロナイズドスイミングの競技を引退したのですが、その時に当時ラスベガスで公演されていた「Le Rêve the dream」でシンクロナイズドスイミングのパフォーマーとして出演していた先輩がその噂を聞き、オーディションを受けてみないかと誘ってくれました。大学も卒業を控え、日本での就職先も決まっていたのですが、ラスベガスへ旅行をしたついでにオーディションを受けてみたところ、幸運にもその場で契約のオファーをいただきました。
…入団されていかがでしたか?
2016年に渡米したのですが、それまでアメリカで暮らしたいとか、働いてみたいとか全く考えたことなどありませんでしたので、当時は全くと言っていいほど英語はできず、コミュニケーションに苦労しました。少しオーバーな言い方かもしれませんが、「死ぬか生きるか」という気持ちで、とにかく「やるしかない」と思って必死にがんばりました。
…周りの方とはいかがでしたか?
頼りにしていた先輩はお辞めになり、アジア人は私一人という環境だったのですが、世界中からプロの方が集まっている集団でしたので、みなさんに助けていただいて、パフォーマーとして、新しい世界でよいスタートをきることができました。その時の経験から、みんなが互いにサポートし合うべきだと感じ、今でもその思いを大切にしています。
…その後アトランティックシティにいらしたのでしょうか?
「Le Rêve the dream」は2020年に幕を閉じました。それまで通算で5年間働きました。その後、ラスベガスで「Cirque du Soleil O」、「Particle ink Speed of Dark」と「APÉRO show」を作成そして出演、その他多くのショーに出演してきました。そして、2023年に「Spiegelworld」に参加し、現在のショーに出演しています。
…印象に残っている仕事とその理由を教えてください。
どの仕事も印象深く、順位をつけるのは難しいですが、しいてあげるとしたら「Le Rêve the dream」と現在の「The HOOK」です。「Le Rêve the dream」はアメリカに来るきっかけとなったショーで、アスリートからパフォーマーとして切り替わった初めての仕事でしたのでとても思い出深いです。
「The HOOK」Spiegelworld は多くのパフォーマーが憧れるエンターテイメント会社です。そのような大きな団体に参加することができ、とても誇りに思っています。COVID-19が世界中にまん延して、多くのショーがクローズになるなどエンターテイメント業界にも大きな影響がありました。そのような不安定な時期に、私はポールダンスやエアリアルダンスの練習をしていました。「The HOOK」はそうした思いと練習の成果で得た仕事なので、自分にとって大きな節目となっています。
…仕事の喜び、やりがいについて教えてください。
この仕事は体が資本となりますので、パフォーマー人生はとても短いです。若い頃にアスリートからパフォーマーにキャリアをチェンジすることできて、また今の年齢でパフォーマーとして舞台で演技できることが最高の喜びです。また、シンクロナイズドスイミングをしている後輩から相談を受けることがよくあるのですが、後輩達にもシンクロ以外の門戸を開いてあげることができて嬉しいです。
渡米してから、SNSなどを通じてたくさんの方から、「Natsumiさんのようになりたい」「体型に憧れます」とほめていただくことが多いのですが、そうした皆様からの激励が大きなやりがいにもなっています。
…パフォーマーとしてのやりがいはいかがですか?
お客様に喜んでいただくことはもちろんですが、ステージの仕事は、舞台に立ったことのある人でなければ実感することのできない、とても“スペシャル”なものがあると思います。ライブは毎回違う観客の方々と一体になって、作品をつくりあげていくということが、人生をかけている感があり、最高に幸せを感じられます。
…撮影のモデルのお仕事はいかがですか?
撮影は、同じシーンを何回も何回も撮り直しをします。でき上がった映像をみて、あの時のあのシーンがこんな風に使われるんだと何回も見直しをしています。一つの作品のつくり方が舞台とモデルの仕事ではそれぞれ違いがありますので、自分なりのパフォーマンスアートを追求していきたいと思っています。
…仕事で大変なことはなんでしょうか?
体の管理です。ショーでは同じ筋肉や側面しか使わないので、体を整えるために、そしてけがをしないためのトレーニングを欠かさず行っています。人間の体はたくさんの色々な筋肉でできていますが、小さな小さな筋肉までも、パフォーマンスに必要な筋肉を意識しながらコンディショニングを毎日行っています。また、体を極度に曲げたりねじったりする身体表現であるコントーションを柔軟のためにも続けています。
…今後の夢や抱負について教えてください。
トレーニングを続けて自分自身をさらに磨いて、「憧れられる存在」「目標とされる人」であり続けたいと思っています。また、いくつになっても努力次第で、新しい世界へ挑戦できることをみなさんにも少しでもお伝えできればと思います。
…アメリカで仕事を探されている方へメッセージをお願いします。
夢はかなえるためにあるもので、そのためには努力をしなければいけないと思います。また夢の実現のためにはお金や時間をカットしてはいけないと思います。私自身も他の人が遊びに行っている時も出かけず、トレーニングの時間に費やしました。どの世界も決して甘くはないと思いますので、努力、お金、時間をかけて、ご自身の夢を是非かなえてください。
…ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
【取材協力・お問合せ】
Natsumi Miyazaki Paughさん
Performer、Model
https://natsumi-paugh.studio.site/1
Email:n7t1m4@icloud.com
Instagram:@natsumipaughmiyazaki
「Spiegelworld The HOOK」
https://spiegelworld.com/shows/the-hook/
【取材・文】
QUICK USA, Inc.
菰田久美子(Kumiko Komoda)
Email:quick@919usa.com