アメリカではさまざまな分野で、たくさんの方が活躍されています。このコーナーでは、アメリカで働いている方に「ハタラク」楽しさや難しさなど、お話をお伺いしています。今回はアートメイク・アーティストとして活躍していらっしゃる田中里沙さんにお話を伺いました。
ニューヨークで働く、アートメイク・アーティストの田中里沙さん
田中里沙さん
アートメイク・アーティスト
https://risatana.com/
鏡を見るのが楽しくなるようなアートメイクを提供していきたいです。
…田中さんのお仕事について教えてください。
私は現在、ニューヨークのマンハッタンでアートメイク・アーティストとしてアートメイクの施術を行っています。アートメイクは眉や唇など、特殊な機械を使用して皮膚に色のインクを細かく入れて、理想の形に整えていくタトゥ―の施術の一種です。パウダーブローという方式で眉を施術して、お化粧をしなくても顔立ちを際立たせたり、唇の色などコンプレックスの解消、傷で変形してしまった唇などの施術など様々な理由や目的で女性、男性を問わずご利用いただいています。
…パウダーブローというのはどういうものですか?
眉毛を描く技法はこれまではブレード(刃)を使って皮膚に傷をつけて一本一本眉毛を描いていくというマイクロブレーディングという技法が主流でした。その方式ですと傷の面積が大きくなってしまいます。そこで最近では、小さなドット状の傷をつけて色素を注入するパウダーブローという技法が主流になってきています。肌へのダメージが少なく、パウダーブローの仕上がりは、ふんわりとぼかしたような印象になるのが特徴です。
…アートメイクの施術は一回だけでよいでしょうか?
アートメイクはタトゥーと違って、2~3年ほどで薄くなってきます。薄くなってきたところで再度、形や色などを変更することが可能です。また通常、1回目の施術後2カ月くらい経ってから2回目の施術を行っています。人の体は異物を排除する機能が備わっていますので、初めてアートメイクをされた場合、色素は異物とみなされ体から排除される傾向があり、薄くなってしまいます。そこで、2回目の施術が必要となってきます。また、2回目の施術でデザインを微調整することも行っています。2回目の施術後は通常1~2年ほどもちます。
…田中さんのご経歴について簡単に教えてください。
小さい頃から美容に関心が高く、高校卒業後は美容専門学校へ進学しました。メイク科と美容科がある学校でメイク科に進学したいという気持ちが強かったのですが、美容師の免許を取得したほうが後々有利になると考え、美容科を選択しました。卒業後、ヘアメイク事務所に就職し、ヘアーメイクアーティストのアシスタントとして、結婚式、雑誌やテレビなどの広告のヘアーメイクの仕事をしました。その後、2008年にアメリカへ参りました。
…アメリカでもヘアメイクのお仕事に就かれたのでしょうか?
渡米して暫くはノースカロライナ州に住んでいたのですが、住んでいた所は田舎で、ヘアーメイクの仕事はなく、ヘアーカットを中心に美容師の仕事をしていました。ノースカロライナ州では日本の美容師の免許をトランスファーすることができますので、比較的スムーズに美容師として仕事に就くことができました。
…アートメイクをはじめたきっかけは?
インスタグラムを見ていた時にとても綺麗で素敵な唇の写真が目にとまりました。写真は、傷を負われて変形してしまった唇をアートメイクで施術された方のものでした。傷も目立たずとても綺麗な口紅を塗っているように見えました。その時に「私が本当にやりたいことはこれだ!」というインスピレーションが沸いてきました。同じ頃、主人の仕事の関係でニュージャージーに引っ越しがきまり、ニューヨークであればアートメイクの需要も高いと思い、アートメイク・アーティストを目指したいという気持ちが強くなりました。
…どのようにしたらアートメイク・アーティストになれますか?
日本ではアートメイクは医療行為となり、医師、看護師、准看護師の資格が必要となります。アメリカでは日本とは異なり、まずニューヨーク州でタトゥーライセンスを取得し、その後アートメイク・アーティストから講習を受け、パウダー・アイブロウとリップブラッシュの施術資格を取得しました。アーティストによってやり方やスタイルなどが異なりますので、自分の好きなアーティストを見つけることは重要なポイントだと思います。
…美容への興味や関心はいつ頃からあったのでしょうか?
メイクが好きで人にお化粧をしてあげるのも大好きでした。小さい頃から父の影響で絵を描くのがとても好きでした。父は風景や人物など絵を描くのがとても上手でしたが、私は手や足、目、眉、唇など人のパーツを描くのが大好きでした。パーツであれば、気軽に落書きのようにいつでも絵が描けるということと、目や唇など、顔のパーツに興味が高かったように思います。体の部分は人によって形が違ったり、お化粧などで色味を添えることで劇的に印象が変わることなどから、小さい頃から興味や関心が高かったのかもしれません。
…お仕事の楽しさや、やりがいについて教えてください。
「綺麗になりたい」「コンプレックスを解消したい」「傷を目立たなくしたい」など、アートメイクを希望される方の目的は様々です。施術をさせていただくことで、みなさまがハッピーになられたり、感激してくださったりするのを見た時にとても嬉しく思います。アートメイクはロシアやヨーロッパが進んでいて、上手なアーティストが多いですが、ニューヨークで仕事をしていると情報がたくさん入ってきて、多くのことを学ぶことができて楽しいです。アジア人としての特性を生かしつつ、アジア人とヨーロッパ人の好まれる中間のメイクを目指してこれからも勉強していきたいです。
…お仕事で大変なこと、難しいことはありますか?
常に新しい技法やプロダクトが開発されていますので、常に学び続けていかなければいけません。また、カラーも流行りなどがありますので、トレンドをキャッチしていなければ取り残されます。PMU(パーマネントメイクアップ)関連の記事はインターネット等で時間があれば、スマホなどで常に目を通すようにしています。
…今後の夢や抱負について教えてください。
自分の技術をさらに向上させていきたいと思っています。また、他の日本人のアートメイク・アーティストの方とコラボをしてみたいと思っています。また、まだまだ先のことになりますが。アートメイク・アーティストを目指される方々に対して、講習などを通じて、指導ができるようになれることも夢です。
…アメリカで夢を追いかけている方へのメッセージをお願いします。
みなさん色々な場所でがんばっていらっしゃるかと思いますが、何歳になってもやりたいことがあったら追求されるとよいかと思います。自分の興味や情熱に従って行動することで日々の生活が充実したものになり、人生が豊かになり、満足感が感じられると思います。
【取材協力・お問合せ】
田中里沙さん
アートメイク・アーティスト
https://risatana.com/
Email:risatanaka@risatana.com
Phone:980-251-4241
Instagram: @risa_nyc
【取材・文】
QUICK USA, Inc.
菰田久美子(Kumiko Komoda)
Email:komoda@919usa.com