留学は人生の中で生涯忘れられない貴重な体験の一つになることでしょう。このコーナーでは、留学を通じて得た様々な体験や感想を日本人留学生の皆様に伺っています。留学での楽しい経験や困難だったこと、また海外生活で学んだことなどを写真を交えてお話を伺いご紹介しています。
San Jose State University (カリフォルニア州)
田口晴樹さん
卒業後は、社会で自分の力を思う存分活かしていきたいと思います。
San Jose State Universityの正面玄関
現在留学中の学校と専攻について教えてください。
現在、私はサンノゼ州立大学(San Jose State University)のシニアで、今年の12月に卒業する予定です。サンノゼ州立大学はCSU(California State University)のシステムに属した公立の学校です。創立は1857年、23キャンパスをもつCSUの中でも創設校にあたり、アメリカの西海岸エリアでは最古の公立高等教育機関です。現在の正確な数字はわかりませんが、生徒数約3万人規模の大きな大学です。生徒数は多いですが、日本からの留学生はとても少なく、これまでの約2年半の大学生活の中で、同じ授業をとったり、クラスメイトになったりして出会った日本人はわずか3人だけでした。キャンパスはサンノゼのダウンタウンにあり、通学はとても便利です。専攻はビジネスで、マーケティングとマネジメントにフォーカスしクラスをとっています。
サンノゼの街について教えてください。
サンノゼはカリフォルニアで一番古い街で、かつてはカリフォルニアのキャピタルだったこともあるそうです。サンノゼというとシリコンバレーの中心地というイメージが強いので、新しい街と思う方も多いかと思いますが実は歴史のある街なんです。サンノゼの街の誕生は、18世紀にヨーロッパから新世界に進出したスペイン人が北カリフォルニアの真ん中だったことからこの地に集落を築いたことがきっかけのようです。現在のサンノゼは半導体やコンピュータ関連の企業が多く集まった街というのは事実ですが、実はビジネスの起業の多い街という側面もあります。起業の多いこの街でビジネスについて多くのことを吸収したいと思ったことも、サンノゼに住んだ理由の一つでもあります。サンノゼは都会でありながら静かな環境もあり、家賃も他のアメリカの大都市と比べると比較的安く、生活しやすい街だと思います。また、バスやライトレールという路面電車などの公共交通機関も発達していて、とても生活するのに便利です。
留学を決めたきっかけはどのようなことだったのでしょうか?
当時、高校3年生になっても将来の進路についてはっきり決まっておらず、日本の大学に進学するかアメリカへ留学するかを決めかねていたんですね。ずっと日本の大学受験の勉強もしていました。母方の親戚がカリフォルニアに留学していたことを受け、母からアメリカへの留学を勧められてはいましたが、将来何をしたいかまったくわからず進路についてとても悩みました。留学を決めたのは、アメリカという日本とは180度違う世界に自分の身をおいてみることで、何かを見つけることができるのではないかという好奇心からでした。留学といってもあまり気負うこともなく、アメリカに行ったらきっと自分の考えも色々と変わるはずなので、絶対にこうしようとか、こうなろうというような確固たる思いを最初から決めず、できる限りニュートラルな気持ちで渡米しました。
高校卒業後、現在の大学に進学されたのでしょうか?
まず初めに、大学に入学するためのTOEFLの点数を上げるためにカリフォルニアにある英語の語学学校へ行きました。その後、ディアンザカレッジ(De Anza College)というコミュニティカレッジに進学。一般教養とコンピューターサイエンスを学びました。ディアンザカレッジでは4年制の大学にトランスファーした時に、自分が何を勉強したいかを見つける期間としてもとらえていましたので、プログラミング言語のCやjavaを始め、数学、物理、生物、化学、環境化学、フィルム、ヨガなど、卒業とトランスファーに必要な科目以外でも、幅広い分野でクラスをとりました。日々勉強を続けていく中で、エコノミーのクラスをとった時に、経済を通して世界を見るということがとても面白く感じられビジネスに興味をもつようになりました。ラボで実験をしたり、コンピューターのプログラミングをするクラスも楽しかったのですが、将来はテクノロジーやサイエンスを技術者として研究したり開発する立場より、開発された新しい技術を世の中に広めたり、世界で動かしていくような仕事の方が興味も高く、自分に向いているように思うようになり、大学での専攻をビジネスに決めました。
写真右端が田口さん。De Anza College時代のクラスメートと。
ビジネスに興味をもったきっかけについてもう少し教えてください。
世界中で大ヒットした「アングリーバード」というゲームのアプリがありますが、技術的にはそれほど難しいものではないんですね。内容も鳥を発射して豚を駆逐するというとても単純なゲームです。そんなシンプルなアプリなのにダウンロード数が世界規模で半端なくすごいんです。なぜ「アングリーバード」が、それほどまでに世界中でヒットしたんだろうと疑問に思うようになりました。色々考えていくうちに、それがビジネスなんだということがわかりました。技術面で支えていく仕事はとても大切でやりがいの高いものだと思いますが、その素晴らしい技術をどうやって世界の人に伝えていけばよいか。ビジネスとして広めていくにはどうしたらよいかということを考えることにとても興味をもつようになりました。
San Jose State Universityキャンパス内の
ブラックパワーサリュート
現在の大学ではどのような勉強をしていますか?
専攻にそってマネジメントやマーケティングのクラスを多くとっていますが、どのクラスも本当に面白く、とても勉強になります。例えば、インターナショナル・マーケティングというクラスでは紅茶で有名な「リプトン」のマーケティングについて学びました。世界中の人から支持を得ているブランドですが、国によってマーケティングを変えているそうです。同社では、日本人に対しては「限定」というキーワードで、期間限定のストアを展開したり、季節限定のフレーバーを提供したりしているそうです。対して、イギリスでは「100年間変わらないオリジナルテイスト」というような「伝統」というコミュニケーションがとても受けるそうです。文化や国民性を考慮したインターナショナル・マーケティングのクラスは、自分にとってとても新鮮で印象に残るクラスの一つです。
Dr. Martin Luther King, Jr. Library
大学構内の中で、お気に入りの場所を教えてください。
大学の図書館です。大学の図書館はサンノゼ市立の図書館でもあるので一般の人にも解放されています。8階建てで、ベイエリアでは一番大きな図書館です。蔵書も多いですが、6階以上は勉強する環境に特化していて、クワイエットエリアやサイレントエリアがあり勉強するには最適な場所です。ガラス張りのスタディルームと呼ばれる小部屋もたくさんあり、クラスメートとプロジェクトを進める時によく利用しています。また、学生の身分証明証があれば夜12時まで図書館で勉強することができます。期末試験の前などは24時間、学生は使用することが可能です。また、この図書館のビルの屋上からの眺めはとてもよくて、勉強の気分転換でよく訪れています。
図書館内
図書館の展望台
学業以外にアメリカ生活で楽しんでいることは?
休みの時などに友人と車ででかけるのがとても楽しみです。サンフランシスコまで車で1時間位ですので時々訪れています。ショッピングやレストランで食事を楽しんだりしています。少し観光地からはずれた所にサンフランシスコでしか売っていないクッキーのお店があるんですが、そこのクッキーはこれまで食べたクッキーの中で一番美味しくて、サンフランシスコに行くときには必ず訪れています。また、映画やドラマのロケ地として有名な「ツインピークス」からの眺めは壮大で、サンフランシスコを一望に見渡すことができて、好きな場所の一つです。また、サンノゼから北へ2時間ほど車を走らせるとワイナリーで有名なナパバレーがありますが、一面に葡萄畑が広がるとても美しい場所です。小さなワイナリーから大きなワイナリーまで、400軒くらいあります。ワインのテイスティングも楽しいですが、ワイナリーのスタッフがワインについて説明をしてくれるのを聞くのもとても楽しいです。また、サンノゼ大学では学生にボランティア活動をするよう積極的に勧めていて、学校には非営利団体などボランティアができる団体のリストがあります。私はSacred Heart Community Serviceという団体でボランティアをさせていただきました。仕事の内容は簡単なものでしたが、少しでも社会の役に立つことのできる貴重な経験をさせていただきました。
サンフランシスコの街並み
ナパバレーのワイナリー
学業以外で、留学を通じて学べたことは何でしょうか?
留学を通じて学問以外で学んだことはたくさんありますが、まず「決断力」と「生活力」が向上したことがあげられます。アメリカに来てから学校は4校、家の引越しは5回経験しています。家探し、運転免許証の取得、保険、学校の手続き、電話の契約など、生活や学校に関するあらゆることを何でも自分で行動して決めなければいけませんでした。外国人であることや慣習の違いなどでわからないことや戸惑うこともとても多かったですし、トラブルやスムーズにいかないこともたくさん経験しました。一度は引っ越し先の大家さんと連絡がとれなくなり、住む家がなくなり途方にくれたこともありました。友人のところに宿泊させてもらうことで事なきを得ましたが、目の前が真っ暗になりもう日本に帰ってしまおうかと思ったくらいです。でも、そうした逆境から学んだことはとても大きくて、生き抜く力と自信がついたように思います。高校生までの自分はとても狭い世界に生きていて、まったく世間というものを知らない状況でした。アメリカに来てから吸収したものはとても多く、人生観、世界観も日本にいた頃とは比べものにならないほど広く深く、また柔軟に考えられるようになりました。
将来はどのような仕事をしたいですか?
海外でも日本でも場所はどこでも構いませんが、国際的な取引に関われるような仕事をしていきたいと思っています。どのような業界でどのような職種の仕事をするか今は具体的にはわかりませんが、世界を視野にいれたビジネスができれば嬉しいです。約6年のアメリカでの留学で勉強したすべてのことを、仕事で活かしていきたいと思っています。特にビジネス、マネジメント、マーケティングの分野は一番集中して勉強してきたことなので、仕事の経験はありませんが、理論的なことやアイデアは豊富に蓄積できたと自信があります。学校は今年の末までありますが、卒業後は社会で自分の力を存分に発揮していきたいと思っています。
〔取材・文〕
QUICK USA, Inc.
菰田久美子
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