留学は人生の中で生涯忘れられない貴重な体験の一つになることでしょう。このコーナーでは、留学を通じて得た様々な経験や感想を日本人留学生の方に伺うコーナーです。留学中の楽しかったこと、辛かったこと、海外生活で学んだことなどを写真を交えてご紹介しています。
DEPAUW UNIVERSITY (インディアナ州)
北嶋友香さん
【第7回】
北嶋友香さん
留学されている大学:
DEPAUW UNIVERSITY (インディアナ州)
空間や時間の演出ができるような仕事をしていきたいです。
(学校のシンボル、East College)
北嶋さんが留学していらっしゃる学校について教えてください。
インディアナ州の州都、インディアナポリスから車で1時間くらいの町、グリーンキャッスルにあるデポー大学に留学して今年で3年目になりました。専攻は平和学、副専攻はビジネス・アドミニストレーション学です。4年間かけて様々なトピックのゼミに入り、卒業時には60〜100ページ程度の卒論を完成させる、Honor Scholar Programにも所属しています。平和学とは、ひとことでまとめると、「この世界が平和であるためには、誰が何をすれば良いのだろう」ということを研究する学問です。そのため、戦争の諸原因や平和の概念、定義に加え、飢餓、難民、差別、環境問題などの大規模なコンフリクト、そして、組織やチームの平和、対人関係の構築などのコミュニティーレベルのコンフリクトなども勉強します。そういう学問ですから、デポー大学での平和学専攻は、インターディシプリナリーという扱いです。これは、自分で2つの研究分野を設定し、その分野に沿って、大学内にある他の様々な専攻(アカデミックデパートメント)がオファーしているコースの中から8つのクラスを履修する形になっています。もちろん、平和学入門、紛争分析、ゼミといった必修クラスはありますが、選択の自由度は高く、同じ専攻内でも研究分野や履修コースがみんなそれぞれ異なっていておもしろいですね。わたしの専攻は東アジアと文化対立ですが、自由度が高いシステムのおかげで、これまでに多種多様なコースを履修してきました。リベラルアーツで学ぶ醍醐味ともいえる、点と点を繋げる学び、というのを日々感じています。
大学の周辺は、学園都市ということもあり、治安がとても良く、またコミュニティーもとてもあたたかいです。デポーの生徒数は全体で約2400人。その約1割がインターナショナルスチューデントです。デポー大学はリベラルアーツカレッジと音楽大学の両方がある私立大学です。リベラルアーツカレッジとしては全米で常に上位50位くらいにランキングされており、音楽大学は全米トップクラスの教育を提供しています。最近は、音楽とビジネスを結びつける教育にも力をいれており、世界的プロチェリスト、ヨーヨー・マを始めとした、プロを招いた講義も行っています。学内外で学生やプロによるコンサートも盛んに行われていて、学生は全て無料で演奏を聴くことができます。わたしは、小さい頃にピアノを始め、中高ではトランペットやフレンチホルンなど金管楽器を演奏していたので、大好きな音楽に日常的に親しめる環境もとても気に入っていますね。
どのようにして、現在の大学を選びましたか?
わたしは、生まれも育ちも大阪で、高校2年生まではずっと東京の某大学進学を目指して準備をしていました。交換留学は考えていたものの、4年間も海外の大学に行くという選択肢は自分の中にありませんでしたね。学部留学について知ったきっかけは、高校2年生の時に出会って仲良くなった、アメリカ留学を目前に控えた2つ年上のお友だちです。その彼から、留学志望者や経験者などのネットワークが広がり、たくさんの人から留学に関するお話を聞くうちに、日本の大学に対して自分が持っていた違和感のようなものがすーっと解消された気がしました。それくらい、彼らの話すアメリカの大学での生活は、きらきらしていてとっても魅力的だったんですね。
その彼らの話す「憧れのアメリカ大学生活」を「自分ごと」に落とし込めるようになったのは、やっぱり中高6年間通った、私立・関西学院千里国際中等部・高等部(SIS)での環境と教育の影響が大きかったです。この学校は関西学院大阪インターナショナルスクール(OIS)と同じ敷地内にあり「Two Schools Together」をモットーとした教育をしています。そのため、OISとイベントやクラブ活動を共に行うのはもちろんのこと、授業を一緒に受けることもできました。SISでは、一般教養に加え、バラエティーに富んだユニークな授業は全て、24人以下の少人数制、無学年制でオファーされていて、生徒は毎学期自分で履修の時間割を作ります。少人数ですからディスカッションベースの授業も多く、課題はとても大変でしたが、生徒ひとりひとりの個性を引き出すクラスばかりでした。学校全体の人数も少ないので、先生やスタッフさんを含めた全員が家族のような環境でした。世代を超えて母校愛が強い学校でもあります。そういう環境に6年間いたので、大学も引き続き、あたたかいコミュニティーに身を置きたいと考えていました。また、OISでIB Historyの授業を履修したのですが、この授業は完全に英語のディスカッションベースのクラスで、これまでで一番自分の論理力と英語力を試されるクラスでしたね。ネイティブスピーカーの中に混ざって英語を始めてまだ数年のわたしが授業を受けるわけなので、当然、毎回の授業でも宿題をするときも、悔しい思いばかりしましたが、同時に、学校に行くのがさらに毎日楽しみになる授業でした。
以前から薄々感じていたことだったのですが、このクラスをきっかけに、英語「を」学ぶ、から、英語「で」学ぶ、ということの重要性が自分のなかで一層強くなり、英語で授業を受けられる環境を真剣に探し始めました。日本の大学も検討はしたのですが、自由度の高さや集まる学生のバックグラウンド、ライフスタイルなどをいろいろ考慮して、アメリカの小規模なリベラルアーツ大学に最終的にターゲットを絞ってリサーチしました。高校のカウンセラーに相談したり、自分で色々な大学のウェブサイトを見たり、と、様々な学校について入念に調べました。その結果、当時、将来進みたいと思っていた方向性のジャーナリズムと音楽で有名なこと、専攻の自由度が非常に高いこと、学校のスタッフの方々の対応がとても親切でこういう人達のサポートがあったら4年間がんばれると感じたことなどから、合格した大学の中から奨学金など含め総合的に考えたうえでデポー大学に進学を決めました。
(East College Lawn.よく晴れた日はここで勉強することも。)
学校生活について教えてください。
とにかくあたたかいコミュニティーに支えられているなぁと実感する日々です。デポー大学は学生数が少なく、教授と学生の比率が1:10なため、アカデミックなことはもちろんのこと、生活面や精神面などあらゆる面で教授は学生のことをちゃんとケアしてくれます。オフィスアワーにはただ質問しに行くだけでなく、さらに深いディスカッションを1時間も2時間もしたり、一緒にコーヒーを飲みながら何気ないことをお話ししたりしますね。お家に招いてもらったり、旅行に連れて行ってもらったりしたこともあります。デポー大学は留学生のサポートがとても手厚いことでも有名で、スタッフも家族のように接してくれます。たとえば、英語面なら、ライティング、スピーキングのチューターがいますし、クラスも別で開講されています。
留学生オフィス(International Student Service Office)と多文化共生オフィス(Multicultural Office)という2つのオフィスでは、ビザや学生生活の悩み、将来のことなど、何でも相談することができます。また、これらのオフィスでは様々なプログラムが用意されており、留学生およびアメリカ人の生徒達を色々な角度からサポートしています。例えば、アンバサダーというプログラムでは、8名の1年生の留学生に対して一人の上級生がメンターとなり1年間サポートしています。また、グローバルパートナーというプログラムではアメリカ人上級生が留学生とパートナーを組み、 サポートしてくれます。また、ホストファミリーを紹介してくれるプログラムなどもあります。わたしもホストファミリーには随分お世話になっていて、これまで、初めてのサンクスギビングを一緒にお祝いしたり、農場体験をさせてもらったり、みんなで各国のお料理をつくったりしてきました。今はウィスコンシンに引っ越してしまったのですが、それでも定期的に会いにきてくれます。デポー大学は自分が求めさえすれば、たくさんの人が様々な形で支援してくれる学校です。
大学構内の中で、お気に入りの場所を教えてください。
キャンパスは、どこをとってもほんとうにきれいなので、どこもお気に入りです。わたしはソロリティーに所属しているのですが、そのお家のリビングルームやキッチンでのんびりまったりするのが好きです。特に、毎食ごはんをつくってくれるシェフがいるのですが、彼女とハウスマザー(お家の管理をしてくれるお母さんのような存在の人)とスタッフさんたちとで、 シェフがつくってくれたごはんやお菓子をつまみながらお話しする時間がとっても好きですね。
(ソロリティーハウスのリビングルーム)
車で10分くらいの場所に学校が所有しているネイチャーパークもお気に入りです。敷地内には、メディテーションセンターやカンファレンスセンターがあります。メディテーションセンターでは、定期的にヨガや瞑想のレッスンが行われています。また秋は紅葉がとっても綺麗なので、お天気が良いときはハイキングをすることもあります。カンファレンスセンターのラウンジはとても心地が良い上に、あまり学生が行かない場所なので静かですし、コーヒーや紅茶、クッキーなどが常備されているので、「今日はしっかり勉強しないといけない!」というときに利用しています。
(ネイチャーパークではこんな素敵な夕焼けが見れることも多々。)
授業以外ではどのようなことをしていますか?
1年生の時には日本語学科のお手伝いをしました。また、大学のコンサートバンドにもトランペット奏者として参加しました。コンサートバンドでは2〜3週間に1回コンサートを行い、年度末にはCD製作もし、そのCDはAmazonやiTunesで購入できるようになっています。一生のうちにCD製作に関われることなんてきっとそうそう無いことなので、貴重な経験になりました。その傍ら、たくさんのミーティングやイベントに参加して、自分の興味を広げました。
2年生の1年間、文化交流をメインの活動としている学生団体、International Student Associationの幹部を務め、たくさんのイベントを開催しました。また、それと同時にいくつかのお仕事もいただきました。代表的なものは、アドミッションオフィスでの留学生のリクルートのお仕事、そして、キャリアセンターでのアドバイザーとしてのお仕事です。アドミッションオフィスでのお仕事では、留学を考えている世界中の高校生からの様々な質問に、毎日メールや電話で答えています。わたし自身、3年前、大学に出願しているときにメンターのような存在がほしかったので、留学を目指している高校生の力になれてとても嬉しいです。また、実際に高校生がキャンパスに訪れたときの対応も担当します。デポーのインターナショナルアドミッションオフィスでは、訪れる高校生ひとりひとりに合わせたスケジュールを組んでいます。たとえば国際関係に興味がある高校生だったらその分野の教授とお話しする時間をスケジュールしたり、授業を受けてもらったり。スポーツに興味がある高校生ならチームの練習に参加できるように手配したり。もちろん大学卒業後の進路について話したいという高校生は、キャリアセンターのプロフェッショナルスタッフとの面談をスケジュールします。そういう情報の提供やスケジュール調整もお仕事のうちのひとつです。
キャリアセンターでは、レジュメやカバーレター、パーソナルステートメントの添削をしたり、留学の相談にのったりします。また、センターが提供するプログラムや情報を紹介するプレゼンテーションも担当します。今年からは、アドバイザーチームがイベントを企画するようになりました。先月2つのイベントを行い、来学期のイベントももう既にいくつか企画段階に入っています。それと同時に、アンバサダーのような役割も担うようになりました。なので、大学に卒業生や著名人が来るときは、学生、そしてキャリアセンター代表として挨拶をし、ミーティングを行ったり一緒にお食事をしたりします。
3年生になってから、インターナショナルスチューデントアンバサダープログラムのアンバサダーになりました。このインターナショナルアンバサダーは、新しく入ってきた留学生たちのメンターとなり、彼らを、夏休みの段階からオリエンテーション期間を経て、さらに最初の1学期間サポートします。2年前にわたしが1年生だったときに先輩たちがくれた優しさを、今度はわたしが今の新入生に返しています。また、アンバサダーとして、デポーの留学生の生活には大きな責任を感じているので、インターナショナルスチューデントアドバイザリーボードという、留学生に対して必要な大学からのサポートを話し合う委員会にも参加しています。
(アンバサダープログラムの1年生たちと。)
また、1年生の2学期目に、Alpha Chi Omegaというナショナルソロリティーにも加入しました。これは、グリークと呼ばれる、北米に特殊な社交団体です。100を超えるメンバーとともに、慈善活動をしたり、イベントを開催したりしています。また、Order of Omegaという、様々なグリークに所属している学生のうちの上位3%が選ばれる、コミュニティーサービスを活動の軸とした、選抜生の団体にも最近加入しました。この団体を通して、老人ホームを訪問したり、献血を広めたり、他にも様々なコミュニティーサービスを行っています。これらインターンシップやボランティアの活動は週10時間~15時間ほどです。勉強との両立が大変になることもありますが、他の人の夢を応援したり、笑顔にふれたり、成長をサポートしていったりすることがほんとうに大好きなので、毎日の原動力です。来年は卒論などますます忙しくなりそうですが、これからも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
学外では、アメリカの長い夏休みを利用してインターンシップを経験しました。今年は、ハワイ大学のCurriculum Research & Development Groupでオフィススタッフ、そしてTAのお仕事をいただきました。このグループは生徒や教師のためのカリキュラムを開発するグループで、わたしは主に、カリキュラムリサーチのために行っている小中高生のためのサマープログラムのお手伝いと、マーケティングリサーチを担当しました。また、平和学という専攻も活かし、子どもたちの喧嘩の仲裁もしました。学校で勉強したことがお仕事でも活きるんだ、ということを肌で実感できて、ほんとうに良い経験になりました。
(Order of Omegaの加入式にて、Alpha Chi Omegaのメンバーと。)
留学してから自分が変わったなと思うことはありますか?
お友だちや家族から「すごくまるくなったね」と言われるようになりました(笑)。振り返ってみれば、日本にいたときは、なんでも白黒をはっきりつけたい性格で、何事に対してもクリティカルでしたね。留学してみて、バックグラウンドが全く違う人たちと生活を共にしたり、苦労や挫折を経験したりして、やっと変なプライドがなくなったというか、物事に対する見方や考え方が変わってきました。中高時代も、文化という面でのバックグラウンドが違う人は多かったのですが、経済面で大きな差を感じたことはありませんでした。デポーでは、ほんとうにお金に困っている子と、お金が有り余っている子の差がとても大きくて、恵まれた環境で育ってきたわたしは考えさせられることがたくさんあります。また、人種やジェンダー、セクシュアリティなどに関するディスカッションも盛んで、この2年半、いろいろな授業、そして普段の会話を通して、様々な角度から問題について学んできました。そういった経験を通して、「自分の当たり前は誰かの当たり前じゃない」ということに気づきましたし、自分が世界を見るための「レンズ」が増えました。だから、自分の発言ひとつひとつにきちんと意味を持たせて、その発言に対しての責任をちゃんと負うようになりました。いつ、どのタイミングで、誰に対して、何を発言するのが正しいのか、ということをちゃんと考えるようになったんですね。
もうひとつの変化は、何事もパーソナルにとりすぎなくなったということです。「留学生」や「アジア人」というだけで 少し距離をおくような人も残念ながらいるんですが、自分が精一杯相手に対して優しくしてもまだ嫌な感じの人は適度な距離を保って放っておけばいいんだなと思えるようになりましたね。周りからどう見られているのかを気にするよりも、自分がどういう人間になりたいのかというしっかりとした理想像を持ってそれに向かって努力することのほうが何倍も大事なんだということに、こういう経験から気づきました。理想の自分になるためには、自分のことを大切にしなくちゃいけないということにも気づきました。他の人が楽しそうにしているのを見ているのが好きなので、今まではあまりにも周りを優先しすぎてしまっていたんです。でも、周りがしあわせでいるためには、まず自分が自分の毎日に満足して、自分の今の状態に感謝し、しあわせを感じられないといけないと思うようになりましたね。こういう変化は、新しい環境や経験がなければ生まれなかったと思います。
苦労や挫折とは実際どのような経験をされたのでしょうか?
中高時代は絶えずお仕事や委員会を任されましたし、成績も良くて、いわゆる優等生でした。日本では、「評価されない」という経験をしたことがなかったんです。それが、アメリカに来てみると、中高で何をしたかなんていうのはまったく関係ない世界でした。肩書きも何もなく、すべてまっさらな状態で、ひとりの人間としてまたゼロから始めないといけなかったんです。それどころか、英語の壁もまだ少しあったので、ゼロというよりはマイナスでしたね。留学当初は授業についていくのにとにかく必死で、毎日10時間以上、ときには15時間ほど図書館にこもってずーっと勉強していました。アメリカで育った学生たちとの会話には語学面、そして話の内容で全くついていくことができず、毎回悔しくて寮に帰ってはこっそり何度も復習しました。それまでの人生では、いくらわからないことがあっても、少しの努力で簡単に克服することができたんです。だから、こんなにも何かにつまずいてどうすることもできない、という経験をしたことが今までなかったんです。それに加えて、デポーではたくさんの課外活動やお仕事をすることを良しとする文化が濃いので、わたしも何かしたいと思ったものの、いろいろな人に顔を覚えてもらったり、信頼関係をゼロから構築していったりするのは膨大な努力と時間が必要だったので、何度も何度も苦い思いをして劣等感に苛まれました。でもこういう苦労や挫折をしたからこそ、どこを改善して何を強みとして伸ばせばディスアドバンテージもあるなかで自分の価値を上げられるのかということをしっかり考えました。誰も自分のことを知らない世界で、ある意味、どういう風に「位置取り」をすれば良いのかということを学んだんです。そうやって自分と向き合って自分自身について真剣に考えたプロセスと時間は、自分にとってとっても必要でした。
(初めてキャンパスに着いた日からずーっとお世話になっているふたつ上の先輩と。)
留学してよかったなと思うことは何ですか?
自分に自信がもてるようになったことですね。人が自分をどう評価をするのではなく、自分が何をしたいのか、自分の理想像はどんな人なのか、ということが考えの軸になりました。周りの人とモノにももっと感謝できるようにもなりました。アメリカにひとりで暮らすということは、全く新しい環境、システムのなかで、身の回りのことを全部自分でやらないといけないということです。どれだけひどい風邪をひいても自分で看病しつつ、勉強やお仕事などこなさなければいけないことを淡々とするしかないんですね。そういうこともあって今まで以上に親や周りで支えてくれる人たち、そして与えられた環境のありがたみに気づき、感謝するようになりました。そういう感謝の気持ちをきちんと言葉にして伝えるようにもなりましたし、逆に文句や言い訳が少なくなりましたね。
もうひとつ、日本ではいわゆるマジョリティーなわけなので、ソーシャルアイデンティティーについてきちんと考えたことはなかったのですが、アメリカに来て社会でのマイノリティーになってみて、アイデンティティーに関連した社会問題についてや自分のアイデンティティーについてよく考えるようになりました。なので、日本にいたときは社会にうまくフィットしていないなと感じていたのに、こちらでは 「日本人代表」のような扱いを受けるので、自分のなかでのアイデンティティークラッシュも起きました。「自分は何なのか?」「自分は誰なのか?」を強く意識するようになりました。マイノリティとして人種差別を感じたことはありませんが、アメリカの法律の上で外国人である私達には、ここで暮らしていくには様々な制約があります。そうした制約の中で、自分の価値をどれだけアピールしていけるか。いい意味で自分をよく見せるためにはどうしたらよいか。少しずつですが、わかってきたように思います。
卒業後はどのような仕事をしたいですか?
焦りは感じてはいるのですが、まだ将来の仕事について具体的には決めていません。決まっていることとしては、アメリカで働きたいということと、周りの人が楽しく、快適に、自分らしくいられる環境をつくっていけるような仕事ができたらと思っています。空間や時間を演出するお仕事をしたいんですね。これは、ただ単にインテリアなどの「もの」にこだわるだけではなく、心地よい時間、わくわくするような時間を、ものも人も雰囲気も全部ひっくるめて、毎日に彩りを添えられるようにこだわっていきたい、ということです。その夢を叶えるために、ひとつ心に決めていることは、どのような仕事であっても、どのようなポジションにいても、そのときの自分がもっているリソースやパワーをすべて使って、快適な労働環境を提供することです。わたしは、たくさんあるソーシャルグループの中でも特に、「女性」と「留学生」がもっと楽に過ごせるシステムを構築し、維持したいと思っているので、自分が働くなかでそういったシステムを少しずつつくっていけたら、と思っています。そして、ゆくゆくはマネージャーとして大きなチームを動かしつつ、全体のシステムを見直していきたいですね。
また、中学生のときからの夢ですが、いつかノンプロフィットのカフェを運営したいです。カフェ自体は、そこに来ると誰もがほっとするような、でもインスピレーションも受けられるような、そんなあたたかい場所にしようと思っています。また、高校生時代に、なかなか安価でゆっくり本を読んだり勉強したりできるカフェが周りになかったので、主に学生や若い社会人が利用しやすいように工夫もしたいですね。そして、欲張りなようですが、カフェでのお仕事は金銭的に恵まれない人々に積極的にやってもらったり、経営は見込みのある学生に担当してもらったり、人々がお互いから学び合える、そして、ネガティブなサイクルから抜け出せる仕組みを、カフェ運営を通してやっていきたいと思っています。
(文〕
北嶋友香 DEPAUW UNIVERSITY
ブログ「ときめきを追いかけて」 https://yukakitajima.hatenablog.com/
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