【2024年最新】アメリカ最新給与トレンドをまとめてご紹介!

世界一の経済大国の座を守り続けているアメリカ。世界各国の経済状況をしめす指標となるGDPランキングでは2位の18,536ビリオンドルの中国に大きく差をつけて28,783ビリオンドルで1位です。そんな経済大国アメリカでは近年、物価高やインフレに伴い、年収や最低賃金が上昇傾向にあります。

また世界最大のHR組織のSHRMの記事によるとアメリカ国民が就職の際に必要だと考える最低平均賃金は、過去1年間で大幅に上昇し、2023年には73,391ドルのオファーがなければ新しい仕事を受けられないと答えた人が多数でしたが2024年の3月の時点でその金額は81,822ドルに跳ね上がっています。

今回はアメリカの平均年収や最低賃金について、また給与の高い職業と低い職業ランキングやアメリカでの給与における問題点やそれを解決するための法律についてなど、最新のアメリカ給与トレンドをまとめてご紹介します!

参照
https://www.forbesindia.com/article/explainers/top-10-largest-economies-in-the-world/86159/1
https://www.shrm.org/topics-tools/news/benefits-compensation/reservation-wage-jumps-record-high-employer-implications

 

全体的に給与が上昇傾向のアメリカ

コロナ禍を経てアメリカの給与増加率は2022年にはインフレや人手不足の影響もあり、コロナ禍前の平均3%から大きく上昇して4.1%に達し、2023年には平均4.4%の給与増加が記録されました。これにより2023年11月の時点では労働者のおよそ10人のうち6人が、インフレ調整後の年間賃金を前年より増加させています。これらの平均給与の伸びは、1980年以降の5回の大きな景気後退からの回復において、失業率の急速な回復と同時に堅調な実質賃金の伸びを示した唯一の景気回復であることが注目されています。2024年も勢いは減少しつつも売り手市場は続き、給与に関してもインフレの影響も受けてペースは鈍化しながらも引き続き上昇すると予想されています。

参照
https://www.shrm.org/topics-tools/news/benefits-compensation/salary-increase-budgets-hit-two-decade-high
https://www.americanprogress.org/article/workers-paychecks-are-growing-more-quickly-than-prices/

 

連邦と州の最低賃金について

米国内では全体的な給与上昇と共に最低賃金も引き上げられています。米国では連邦政府のほか、各州やその州内の主な市、郡などが独自に最低賃金を設定していますが、全米50州のうち22州が2024年1月1日に最低賃金を引き上げました。

2024年の現在、連邦最低賃金は時給7.25ドルですが、ニューヨークやカリフォルニアなどの大都市では連邦よりも高い最低賃金が適用されており、ニューヨーク市の最低賃金は16ドルで、2025年と2026年には、それぞれさらに50セントずつ引き上げられる予定となっています。カリフォルニアの最低賃金も16ドルですが、新しい法の制定により2024年4月1日からマクドナルドなど主要ファーストフード店での最低賃金は時給20ドルに引き上げられました。これはファーストフード店の最低賃金としては全米でも最高水準になっています。

参照
https://www.dol.gov/agencies/whd/minimum-wage/state#:~:text=Employers%20subject%20to%20the%20Fair,wage%20of%20%247.25%20per%20hour
https://apnews.com/article/california-fast-food-minimum-wage-a04c2e559b09cbcd26dd5702e0755a83

 

アメリカ州別平均年収と所得分布

2023年のアメリカ労働統計局のデータによるとアメリカ全米の平均年収は59,428ドルで、平均時給は28. 34ドルとなっています。平均年収は州によって大きく異なり、州によっては平均年収に数万ドルもの開きが見られることもあります。平均年収のトップ3とワースト3は下記のようになっています。

平均年収が最も高い州
マサチューセッツ州:86,840ドル
カリフォルニア州:84,448ドル
ニューヨーク州:84,292ドル

アメリカの平均年収トップ3はマサチューセッツ州、カリフォルニア州、ニューヨーク州となっており、これらの州の平均年収の高さは、それぞれの州の経済力を反映しているだけでなく、キャリアの成長と機会を提供する場所として求職者にとって魅力的な州となっています。

平均年収が最も低い州
ミシシッピ州:48,048ドル
アーカンソー州:53,716ドル
サウスダコタ州:53,820ドル

一方、全米での平均年収ワースト3はミシシッピ州、アーカンソー州、サウスダコタ州となっています。これら3つの州は平均年収が最も低くなっていますが、生活費も全体的に低いため、給与が低くても生活しやすくなっています。

参照
https://www.usatoday.com/money/blueprint/business/hr-payroll/average-salary-us/#source

 

アメリカ給与の高い職業と低い職業ランキング

給与に影響を与える要因としては学歴と経験が主要な要因となっており、学士号取得者は、高卒者よりも年間平均3万ドル給与がアップする傾向にあり、10年以上の業界経験を持つ経験者は、経験の浅い人よりも平均で年間2万ドル多い収入を得る傾向があり、ベテランのプロフェッショナルが重宝されていることがうかがえます。

個人投資家向け大手投資メディア、モトリーフールの記事「米国で最も給料の高い仕事と低い仕事10選」によるとアメリカでの高収入のランキング上位に挙がっている職種のほとんどが、専門性が高く、多くの職種で資格や免許が必要です。

アメリカ高収入ランキング

  • 最高経営責任者:213,020ドル
  • 看護麻酔医:202,470ドル
  • 小児科医(一般) 198,420
  • 航空パイロット/コパイロット/フライトエンジニア:198,190ドル
  • 歯科医(専門医): 179,400ドル
  • 歯科医(一般): 167,160ドル
  • コンピューター・情報システムマネージャー:162,930ドル
  • 建築・エンジニアリングマネージャー:158,970ドル
  • 足病医:158,380ドル
  • 自然科学マネージャー:156,110ドル

最高経営責任者がトップで、リストの半分は医療分野が占めていますが、ITや建築、自然科学分野などのマネージャー、航空会社のパイロットやフライト・エンジニアもランキングに入っています。

一方、低収入ランキングでは専門的な訓練をあまり必要としない、あるいは全く必要としないエントリーレベルの仕事が多くをしめています。

アメリカ低収入ランキング

  • シャンプー係:25,160ドル
  • ファーストフード調理師:25,490ドル
  • ホストとホステス(レストラン/ラウンジ/コーヒーショップ) $26,000
  • ファーストフード・カウンター従業員:26,060ドル
  • アミューズメント・レクリエーション係:26,110ドル
  • 案内係、ロビー係、チケット係:26,390ドル
  • レジ係:26,770ドル
  • ライフガード、スキーパトロールなどレクリエーション保護サービス従事者:27,320ドル
  • 皿洗い:27,350ドル
  • 保育士:27,860ドル

アメリカ全体では、労働者の約25%が年収10万ドル以上である一方、約22%は年収2万5000ドル以下となっています。

参照
https://www.fool.com/the-ascent/personal-finance/articles/these-are-the-10-highest-and-lowest-paying-jobs-in-the-us/

 

急激に上昇中の新卒者の給与

全体的な給与や最低賃金の上昇をうけ、アメリカでは新卒者の給与も急激に上昇しており、ニューヨーク市に拠点を置く消費者金融サービス企業、バンクレートのデータによると、2024年の米国における学士号レベルの平均初任給の予測は68,516ドルとなっています。特に理系分野の新卒者の給与は高額になる傾向があり、2024年度の工学専攻の新卒者の予想給与は76,736ドル、コンピュータ・サイエンス専攻の新卒者は74,778ドルです。また人文科学専攻の新卒者の給与も急激に上昇しており、2023年は52,938ドルでしたが、2024年には28.9%アップの68,227ドルに跳ね上がることが予想されています。

米国労働統計局のデータによると、学士号取得者の平均収入は、高卒者よりも50%多く、専門職学位取得者の収入は、学士号取得者より約39%多くなるという結果が出ています。

下記は米国労働統計局の学歴ごとの平均年収のデータです。

博士号取得者 $109,668
専門職学位 $114,712
修士号  $90,324
学士号 $77,636
準学士号   $55,016
短大卒、学位なし $51,584
高卒 $46,748
高卒未満 $36,816

出典: U.S. Bureau of Labor Statistics

参照
https://www.bankrate.com/loans/student-loans/average-college-graduate-salary/#average

 

米国の年齢別平均給与

米国労働統計局のデータによるとアメリカ人の収入は、20歳から24歳と25歳から34歳の間で大幅に上昇し、45歳から54歳でピークに達しています。また、16歳から19歳の若年層は、高年齢層より平均49.92%収入が低い傾向にあります。

下記は米国労働統計局の年齢別の平均給与、平均時給のデータです。

年齢 年間の平均給与 平均時給
16歳から19歳 $31,772 $15.28
20歳から24歳   $38,324 $18.43 
25歳から34歳   $52,936 $25.45
35歳から44歳   $63,596 $30.58
45歳から54歳   $64,428 $30.98
55歳から64歳 $63,336 $30.45
65歳以上 $54,184 $26.05

出典: U.S. Bureau of Labor Statistics

参照
https://www.forbes.com/advisor/business/average-salary-by-age/

 

コロナ過をへて対面勤務の給与があがっている

またBBCによるとコロナ禍においてリモートワークが大幅に導入されたのち、オフィス勤務よりリモートワークを好む従業員が増加したため、最近アメリカではオフィス勤務の給与が急上昇しています。2024年1月の時点で、従業員の約29%はリモートワークをしていますが、完全リモートの平均年収の75,327ドルやハイブリッド勤務の平均年収の59,992ドルに比べて、フルタイムオフィス勤務の平均年収は82,037ドルと大きく増加しています。

この現象の大きな理由としてリモートワークを好む従業員が増えれば増えるほど雇用主は従業員にオフィス勤務をしてもらうため、従業員が過去数年間に享受してきた柔軟性の喪失を補う魅力的な条件を提示する必要があることが指摘されています。この結果、アメリカ大手ニュース専門放送局CNBCによると2023年までに米国で完全リモートから完全オフィス勤務に切り替えた人の給与は29.2%増となっており、逆にフルタイムのオフィス勤務から完全リモートワークに切り替えた人は給与が減少しています。ですが、ニュース配信メディア、ビジネスインサイダーはリモートワークを望む人の多数はリモートワークのためなら給与が減少してもかまわないと考えているという調査結果が出ています。

参照
https://www.bbc.com/worklife/article/20240322-us-salaries-higher-in-office-jobs
https://www.cnbc.com/2024/03/27/remote-workers-get-up-to-30percent-pay-increase-for-switching-to-in-office-jobs-says-new-research.html
https://www.businessinsider.com/remote-work-from-home-worth-pay-cut-less-time-off-2024-3

 

アメリカにおける給与の男女格差、人種・民族格差問題

賃金上昇を続けているアメリカですが給与に関する問題が全くないわけではありません。アメリカ全体で注目されている大きな問題として男女間の賃金格差や人種間の賃金格差があげられます。米調査機関ピュー研究所の調査によると2022年に米国の女性は、男性の賃金1ドルに対して平均で約82セントしか得ていません。1982年には男性の賃金1ドルに対する女性の賃金は65セントだったので、それに比べると82セントは増加していますが、2002年の80セントという調査結果からは20年もの時間がたっているのにほとんど変わっていません。

また、連邦労働省の調査結果によると白人の平均年収に比べて黒人やラテン系、アジア系やネイティブアメリカンの平均年収は総じて低くなっています。また性別や人種・民族などの属性により仕事における機会や昇進が妨げられていることも、賃金格差につながっていると指摘されています。

こうした状況を改善するためにバイデン政権は2022年3月15日に人種間はもちろん、男女間の賃金格差の是正を目指し、同一労働同一賃金を促進するための一連の措置を発表し、性別や人種、民族に基づく賃金格差の設定に関して労働省の監視を強化しています。

参照
https://www.pewresearch.org/social-trends/2023/03/01/the-enduring-grip-of-the-gender-pay-gap/#:~:text=The%20gender%20pay%20gap%20%E2%80%93%20the,every%20dollar%20earned%20by%20men
https://www.dol.gov/agencies/ofccp/about/data/earnings/race-and-ethnicity
https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2022/03/15/fact-sheet-biden-harris-administration-announces-commitments-to-advance-pay-equity-and-support-womens-economic-security/

 

アメリカ各地で広がる賃金格差是正のための法制化

賃金格差を是正するための動きは連邦政府だけではなくアメリカ各地に広がりつつあり、2021年12月にニューヨーク市議会は、女性やマイノリティの賃金が同一の仕事をする男性と比較して低いことを是正するため、求人などを募集する際の情報に、その役職の最低額と最高額の給与範囲の記載を義務づける法律を可決しました。

カリフォルニア州でも従業員数15名以上の雇用主を対象に2023年1月1日より賃金透明化法が施行され、求人広告に給与レンジの掲載が義務付けられました。また、同様の法はコロラド州、コネチカット州、ワシントン州、ハワイ州、イリノイ州、メリーランド州、ネバダ州、ロードアイランド州、ニュージャージー州、オハイオ州でも施行されており、現在法制化を検討中の州も多数に上り、今後こうした動きはアメリカ全土へ広まっていくことが予想され、不当な賃金格差の是正につながることが期待されています。

雇用主はこのような給与開示法や給与透明性法を施行している州でリモート勤務の従業員を雇用している場合、適用対象となる可能性があるため注意が必要となっています。

アメリカのこうした法制化の動きについてさらに知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
【アメリカの人事部】 全米で広がる「Pay Disclosure Requirement」法

今回は最新のアメリカ給与トレンドをまとめてご紹介させていただきました。求職活動をする際にこうしたトレンドに敏感になっておくことは重要なポイントの1つです。ぜひ今回の記事を活用してアメリカの最新給与トレンドを知り、ご自身の就職・転職活動に役立ててみてください!


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