このコーナーではアメリカのHR関連のお話や、ビザ等アメリカで働くために有益な最新情報を提供しています。外国人がアメリカで働くためには就労ビザが必要となります。今回はH-1Bビザについて必ず押さえておきたい7つのポイントについてまとめてみました。
【第16回】H-1Bビザについて、これだけは押さえておきたい7つのポイント
【監修】
SW Law Group, P.C.
New York Office
オフィスマネージャー
吉窪智洋
108 West 39th Street, Suite 800, New York, NY, 10018
www.swlgpc.com
Tel:212-459-3800
SW Law Group, P.C.は、ニューヨークのマンハッタンに1994年に設立以来(設立当初はシンデル法律事務所)、移民法の専門弁護士事務所として1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY, CA, 日本を拠点にリーガルサービスを提供している。
1.H-1Bとはどのようなビザか、知ることからはじめましょう
非移民として一時的にアメリカで就労する場合には必ず就労ビザが必要となります。就労ビザには労働の内容によっていくつか種類があります。中でも、H-1Bビザは管理職以上でなければいけないというようなポジションの規定もなく、新卒者でも取得することが可能なため申請者の多い就労ビザです。
H-1Bビザは、企業が専門職の外国人労働者を雇用することのできる非移民ビザです。専門職というのは、専門分野で専門知識を必要とする職を指します。例えば、医者、金融アナリスト、会計士、薬剤師、ITのプログラマーなどの専門技術者を指します。
このH-1Bビザを取得する資格を得るには、アメリカの雇用主と外国人労働者の両方が、USCISの定める要件を満たしている必要があります。H-1Bビザの期間は、最初に最大3年間発行され、その後更に最大3年間の更新が可能となりますので、延長も含めると合計6年間のアメリカ勤務が可能となります。
2.労働者がH-1Bビザを申請するための要件とは
H-1Bビザは、先ほども述べましたように、企業が専門的知識もしくは特殊技能を有する外国人労働者を雇用することのできる非移民ビザのため、職務内容が専門的なもの(Specialty Occupation)でなければなりません。通常、その専門的能力は学位と専攻によって判断されます。
4年制以上の学位をもっているか、またはその専門分野での経験実績が学士号に相当することが必要です。また専攻学科(Major)や職務経験がH-1Bビザの職種と関連があることが必要です。例えば、会計の職務に就く場合、会計の科目を多く履修し会計の学位をもっている方の方がH-1Bビザ申請の可能性が高まります。逆に、専攻分野の範囲が広く、履修科目が多岐にわたる場合には専門性に欠けるとUSCISが判断するケースが増えています。
短大の場合には、最低6年間の職務内容と一致した職務経験が追加で必要となります。高卒または大学での専攻が違う場合には、専門分野で、相応の年数の実務経験が必要となります。雇用が特殊技能職としてみなされるか、あるいは申請者が適格であるかどうかはUSCISが判断します。
3.H-1Bビザの申請プロセスを押さえておきましょう
通常スポンサーといいますが、H-1Bビザを申請するには必ず雇用主が必要となります。H-1Bビザの申請はまず将来の雇用主(企業など)が労働局にLCA(Labor Condition Application)を承認してもらうことから始まります。雇用主は、労働局よりLCAの承認が得られたら非移民労働者請願用紙(I-129)に、会社の内容説明や申請者が就く職務内容の説明などが書かれたサポートレターなど必要な書類を添付して、USCISにファイルします。このI-129が承認されるとUSCISからNotice of Approvalが発行されます。その後、在外アメリカ大使館、領事館にてH-1Bビザの申請を行います。
H-1Bビザの申請には、申請書(DS-160フォーム)、有効なパスポートと過去10年間に発行されたパスポートのコピー、証明写真、申請者の成績証明書や卒業証明書、資格が必要な職種の場合は資格証明書などの他、雇用主の事業内容などを説明する資料(英文の会社案内等)や給与を十分に払えるかを示す書類なども必要となります。
申請に必要な書類は、申請者の状況等により異なってきますので、移民弁護士など専門家に相談しながら進めていかれるとよいでしょう。また、申請には申請費用がかかります。H-1Bビザにかかる費用につきましては、ビザにかかる費用の記事をご参照ください。ただし、申請費用は今後値上げされることも予想されますので常に最新の情報を入手してください。
4.H-1Bビザの発給数には制限があります
H-1Bビザは、年間発給数に制限のあるビザで、一会計年度に割り当てられる一般枠H-1Bビザの数は65,000件です。ただし、そのうち6,800件は貿易協定によりチリとシンガポールの国籍者に優先的に割り当てられるため、その他の国籍の人に割り当てられる数は実質58,200件となります。一般枠とは別に、米国の大学の修士号以上の取得者枠として20,000件のH-1Bビザがあります。
移民局の会計年度は10月1日に始まりますが、10月より遡って6カ月前(4月1日)に申請の受付が開始され、申請受付数が上限を超えた場合には、受け付けられた申請の中から無作為の抽選によって審査する申請書を選びます。抽選によって選ばれなかった申請は申請費用とともに申請者へ返却されます。なお、この抽選は、まず20,000件の修士号枠に対して実施され、次にその修士号枠の抽選に漏れた申請書と一般枠の申請書の中から65,000の枠に対して抽選が行われます。
ここ数年、H-1Bビザの申請数は増加傾向にあり、抽選が実施されています。ただし、景気が悪くなれば企業は雇用を控えたりしますので、状況によっては申請数は減少し、申請受け付け開始から最初の5営業日に年間上限数に到達しない可能性もあります。アメリカの移民弁護士は、移民局等から事前にH-1Bビザ申請状況の予測の情報を得ていますので、前もって移民弁護士に尋ねられるとよいかと思います。
5.H-1Bでの就業の条件
H-1Bビザは前にも書きましたように、まず最大3年間発行され、その後最大3年間の更新が可能となります。この延長も含めると合計6年間、アメリカでの滞在が可能となります。勤務に関しては、H-1Bビザをサポートしてくれた雇用主以外では就労することはできません。
H-1Bビザのステータスで、アメリカで転職する場合には新たなH-1Bビザのスポンサーを見つけ、新しいスポンサーのもとH-1Bビザを申請するか、他の就労ビザを申請することになります。仮にH-1Bビザをサポートしてもらっている雇用主より解雇された場合には、すみやかに新たなH-1Bビザのスポンサーをみつけなければいけません。転職のタイミングによってはアメリカ国内に滞在したまま転職が完了しない場合もありますので、詳しくは専門家に相談することをお勧めします。
6.H-1Bビザの他のビザについても考えてみましょう
アメリカで就労することのできる非移民ビザはH-1Bビザの他にも多数あります。外交官や政府職員等のためのAビザ、通商条約に基づいた貿易や投資家のためのEビザ、外国報道関係者のためのIビザ、芸術、スポーツの分野で卓越した能力を持つ方のためのOビザなどです。アメリカで働くために何のビザが一番適しているかは、一度移民法の弁護士に相談されてみるとよいかと思います。
7.アメリカで働きたいと思ったら、ビザの問題をクリアにさせましょう
アメリカで働きたいと思ったら、就労ビザは必ずクリアしなければいけないハードルの一つです。残念ながら、このハードルは決して低いものではありません。ただし、ビザを根本的に理解すれば必ず道は開けるかと思います。
ビザは自分自身の問題です。全て他人任せにせず、まずは自身でビザについて調べてみることをお勧めします。また、アメリカでの就職活動を開始したら、並行してご自身がH-1Bビザの要件を満たしているかどうかを事前に確認するとよいでしょう。有料になるケースも多いですが、移民弁護士などビザの専門家によるビザのカウンセリングを受けてみるのもよいかと思います。また、米国に留学中の方で、卒業後もそのままアメリカで就職したいと考えている場合には、将来の仕事を視野に入れながら専攻や履修科目を決めていくのもよいかもしれません。
アメリカの就労ビザは、種類や提出書類も多く手続きは複雑です。また、法律もよくかわります。そうしたことから、申請の手続きには大抵の場合、移民弁護士などに手続きの代行を依頼します。信頼のおける、移民法に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。また、ビザに関するセミナーなども開催されていますので、是非参加してみましょう。
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