アメリカで特定の犯罪歴を封印し社会復帰を促進する「クリーン・スレート法」(白紙に戻す法)が広がっています

現在アメリカ国内では、過去に有罪判決を受けた個人の犯罪履歴の抹消手続きを合理化し、生活再建と社会復帰への道を開くことを目的とし、雇用や住居、教育の機会を促進させるためのクリーン・スレート法(白紙に戻す法)を導入する州が増えつつあります。

クリーン・スレート法は2018年にペンシルベニア州で最初に可決されました。その後、カリフォルニア州、コロラド州、コネチカット州、デラウェア州、ミシガン州、ミネソタ州、ニュージャージー州、オクラホマ州、ユタ州、バージニア州、ニューヨーク州など12州で成立しています。

クリーン・スレート法はこれまで労働団体や権利擁護団体などが推進してきましたが、ベライゾンやJPモルガン・チェース、マイクロソフトのような大企業も人手不足解消につながり、競争力を強化できる方法だと後押ししてきました。

クリーン・スレート推進団体である、クリーン・スレート・イニシアチブによると米国では3人に1人、およそ7000万人から1億人が飲酒運転や薬物保持など軽犯罪を含む、何らかの前科を持っており、また米国の子供の半数近くの親は、少なくとも片方の親に犯罪歴があり、そうした親の犯罪歴が子供たちの認知発達や学業成績、さらには成人後の雇用結果にも悪影響を及ぼしていると述べています。

現在アメリカの大多数の州では、特定の種類の犯罪記録の抹消または封印を申請することが可能になっていますが、それらの申請の手続きは非常に複雑で高額な弁護士費用や裁判費用が必要となります。また、過去に有罪判決を受けた個人の中には、犯罪記録の抹消や封印ができることを知らない人も大勢存在しており申請制度が十分に機能していません。これに対し、クリーン・スレート法では、有罪判決を受けた個人が刑期を終え、一定期間犯罪に巻き込まれなければ自動的に記録が抹消されるため、過去に有罪判決を受けた多数の個人の雇用や住居、教育の機会に対しセカンドチャンスを与えてくれます。

 

ニューヨークのクリーン・スレート法
ニューヨークでは2023年11月16日、キャシー・ホウクル州知事がクリーン・スレート法に署名しました。ニューヨーク州のクリーン・スレート法では軽犯罪は判決から3年、特定の重罪の場合は釈放から8年後に犯罪歴が封印されます。これにより薬物事犯を含む220万人ほどの犯罪記録が封印される見込みとなっています。クリーン・スレート法は性犯罪者や殺人など終身刑が課される可能性のあるA級の重罪には適用されません。

またこれらの犯罪履歴は封印されますが、抹消されるわけではなく、裁判所や検察官、弁護人、そして法執行機関は特定の条件下であれば封印された有罪判決を調べることが可能です。また病院や教育や介護などの子供や高齢者に関係する仕事を行なう雇用主や警察など銃許可機関も犯罪歴の閲覧は可能となっています。

法律は、署名日から1年後の2024年11月16日に施行されます。

ホウクル州知事はクリーン・スレート法に関して「犯罪を減らすのための最良の手段は高収入の仕事です。だからこそ、社会に対する負債を返済し、何年も再犯なしで過ごせば、(犯罪記録を)白紙に戻すことを私は支持します」と述べ、またクリーン・スレート法は「現在ニューヨーク州に不足している45万件の雇用に役立ち、企業の成長や拡大、さらなる繁栄に貢献します」とも述べました。

クリーン・スレート法が雇用主に与える影響
このように全米各地でクリーン・スレート法が広がるにあたって雇用主はいったいどのような影響を受けるのでしょうか?
クリーン・スレート法は雇用プロセスにおける身元調査に多大な影響を与えることが予想されます。クリーン・スレート法が制定された地域では、雇用の際の身元調査によって、封印された前科が明らかになることはありません。また封印された前科について雇用主に質問された応募者は、合法的に前科がなかったものとして答えることができるようになります。

このようにクリーン・スレート法は過去に有罪判決を受けた個人の社会復帰を促進させるだけではなく、雇用主に対しても封印された前科記録に基づく差別的行為を防止し、雇用プロセスにおいて更なる公正な評価が求められるため、すでに現在多くの州で適用されている、雇用主が応募者に封印された前科について質問したり、封印された前科に基づいて応募者に対して不利な措置を取ったりすることを防止するBan the Box(バン・ザ・ボックス)法の雇用主の遵守を強化するものともいえます。

雇用主の中には、クリーン・スレート法によるこれまでの身元調査への変更により、職場の安全性を維持することが難しくなるのではないかと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、クリーン・スレートの推進団体である、クリーン・スレート・イニシアティブの最高経営責任者(CEO)であるシーナ・ミード氏は、「クリーン・スレート法には研究に基づいた待機期間が活用されているため、クリーン・スレート法の恩恵を受けた従業員が犯罪を犯す可能性は、一般大衆と比べても高くなく、雇用主は心配をする必要はありません」と述べています。

雇用主は、クリーン・スレート法が実施されるにあたって、こうした変化や状況を踏まえ、法律の遵守と一貫性を保つために、雇用弁護士と共に現在の雇用プロセスを見直すことが強く奨励されます。

 

参照リンク
https://www.shrm.org/topics-tools/employment-law-compliance/clean-slate-laws-are-spreading
https://www.forbes.com/sites/alonzomartinez/2023/11/16/new-yorks-clean-slate-act-signed-into-law-what-employers-need-to-know/?sh=3e43bcb957bb
https://www.cleanslateinitiative.org/
https://www.cleanslateny.org/
https://www.governor.ny.gov/news/governor-hochul-expands-economic-opportunity-new-yorkers-protects-public-safety-signing-clean

 

 

【監修】
Philosophy LLC
President
MBA, SHRM-SCP
山口 憲和   (Norikazu Yamaguchi)
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