アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、多くの日本人が様々な分野で活躍されています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いし、ご紹介しています。今回はクイックUSAのスキルアップセミナーの講師も務めてくださっている釘宮さんにお話を伺いました。
日本の「おもてなし」という素晴らしい文化を
世界中にお伝えしていきたいと思っています。
釘宮さんの現在のお仕事について教えてください。
日本人のお客様とお取り引きのある日系企業様からの依頼を受け、全米で新入社員や管理職の方向けに研修を提供させて頂いております。社員教育の一貫である研修は企業様にとってビジネスの向上に直接役立つものですので、常にベストを尽くして研修にあたらせて頂いております。研修内容は、企業様によってそれぞれ目的やご希望が違いますので、まずはお話を伺い最適なカリキュラムをカスタマイズで作成させて頂いています。例えば、新人研修では電話の受け方やメールの書き方など基本的ですが、社会人として必ず知っておかなければいけない大切なビジネスマナーをお教えしています。また、管理職や中間管理職の方に対しては、コーチングのメソッドを取り入れながらマネジメント研修を行っています。さらに、クイックUSAさんとは共催で社会人や留学生の方に対して「人間関係を良くするコミュニケーション」や「ビジネスで使う正しい敬語と話し方」などのセミナーを開催させて頂いております。
これまでどのようなお仕事をされてこられましたか?
全日空の国内線、国際線で客室乗務員として7年間勤務した後、地元の大分で専業主婦・子育てをしておりました。その後、主人の転勤で福岡に行くことになり、丁度子育てが一段落ついた時でしたので仕事復帰を考えるようになりました。そんな折、福岡に住んでいた後輩から専門学校の話を聞き、ご縁があって講師として勤務するようになりました。私が教えていたのはエアラインコースと秘書コースで、複数の学校で非常勤講師を務めました。3年ほど働いた頃、主人が再度転勤することになり大分へ戻りました。福岡の学校で培った経験や知識を活かせる仕事を大分で探しましたが、大分には残念ながら航空業界専門の学校がありませんでした。ないのなら自分で学校を作ってしまおうと考え、場所探し、備品の調達、広告・宣伝等々一人で準備して、大分エアビジネス学院を1998年に設立しました。お蔭様で学校経営は順調で、大きく成長し、たくさんの接客のプロを輩出することができました。卒業生の就職率も99%ということで世間から注目を集め、大学や高校、行政機関から非常勤講師やセミナーの講師として数多く招かれました。その後、2012年に渡米することとなり、2014年に米国で会社を立ち上げセミナーや研修を中心に活動の輪を広げております。
お仕事のやりがいや喜びについて教えてください。
人のお役に立てている、貢献させて頂いていると実感できる時にとても大きな喜びを感じます。これまで何万人という方に対して、講師という立場でお話しさせて頂いて参りましたが、仕事を通じて学んだことは、講師は自分が持っている知識を提供するだけではいけないということです。聴いてくださっている方々の体感時間を良いものにしなければいけません。体感時間が良いものであればあるほど、体感価格も上がってきますので満足度が向上します。聴いてくださった方々が講義内容をご自分の知識として吸収してくださり、皆様にとって今後役に立つような事をお持ち帰り頂かなければプロとして失格だと思っています。講義の後で、聴講してくだったお客様や学生さんから笑顔で有難い言葉を頂戴する度に、とても大きなやりがいを感じています。
日々どのように心がけてお仕事にあたられていますか?
研修でもよくお話しさせて頂いているのですが、ビジネスマナーで一番大切なのは「身だしなみ」です。第一印象を良いものに決定づける一番大きな要素もこの「身だしなみ」です。私にとって「身だしなみ」は自分を正すためのものであると同時に、相手を敬うことでもあります。私は客室乗務員として制服を着用しておりましたが、制服を着て頭の先から足元まで「身だしなみ」を整えた時が、私にとってはオフからオンに切り替わる瞬間でした。プロとしての責任感にスイッチが入る瞬間とも言えるかと思います。その後、講師と職業が変わっても常に「身だしなみ」を整えることを大切にして参りました。服装、髪型、お化粧、靴やアクセサリーなど、講師としてふさわしい身だしなみを常に整えて仕事に臨むよう心がけています。
就職活動で大事なことは何でしょうか?
昨年、私の母校である早稲田大学から約500人の学生さんがニューヨークに来られた時、キャリア懇談会が企画されました。そこでスピーカーとして参加し、EQの大切さについてお話しさせて頂きました。みなさん難しい入試を突破された優秀な方ですので、IQが高いことは証明されています。最近では、ビジネスで成功するためにはIQが高いだけではだめだと言われておりまして、心の知能指数と言われるEQを高めることの重要性が叫ばれています。私自身も数多くの生徒さんを指導してきて感じることはEQの大切さです。EQは「明るい」「意欲的」「やる気」という積極的で前向きな感情です。ビジネスに優れた人は、高いモチベーションや相手の気持ちを理解し行動できる能力を持っています。こうした人間的な魅力がEQです。就職活動では多くの競争相手が存在します。「ワンオブゼムはなく、オンリーワンになること」。「君でなければいけない」と相手に思わせること。あなたらしさを消してはいけないということだと思います。
釘宮さんにとって仕事とは何でしょうか?
自分が生きていることを実感できる「生きがい」だと思います。私は研修や講義を通じて、自分が持っている知識を一人でも多くの方にお伝えすることができた時に大きな生きがいを感じています。特に正しい日本語と敬語の使い方につきましては、次の世代の日本人に絶対に継承していかなければいけない事と思っております。そして、次の時代を担っていく若い人達に継承していくことは私たち大人の使命、義務だと思っています。これからも私は、微力かもしれませんが日本語という美しい日本の文化を、一人でも多くの方に引き継いでいければと思っております。
今後の夢や抱負についてお聞かせください。
日本には「おもてなし」という素晴らしい文化があります。この「おもてなし」を世界中に発信していきたいと思っています。私は「おもてなし」は「愛」だと思います。「おもてなし」はお客様に対する行為だけではなく、その対象は家族であったり、同僚であったり、隣人であると思っています。お互いにお互いを認め合い、アクセプトすることができればこの世から戦争もなくなるのではないかと思います。最近では少しずつ日本人以外の方に日本語や日本式ビジネスマナーをお教えする機会が増えてきました。ニューヨークのサラローレンス大学ではゲストスピーカーとして日本語を勉強している学生さんに日本語をお教えしました。また、NPO法人天理学術文化会館では日本文化に興味があったり日本語を勉強しているアメリカ人の方に対して日本式ビジネスマナーをお教えしました。今後は、日本人以外の方に対しても日本語やマナーについての研修を開催し「おもてなし」の心を少しでも多くの方にお伝えできるよう精進して参りたいと思っております。
〔取材・文〕
QUICK USA, Inc.
菰田久美子