留学は人生の中で生涯忘れられない貴重な体験の一つになることでしょう。このコーナーでは、留学を通じて得た様々な経験や感想を日本人留学生の方に伺っています。留学中の楽しかったこと、辛かったこと、海外生活で学んだことなどを写真を交えてご紹介しています。
The University of Illinois at Urbana-Champaign (イリノイ州)
林 瞳さん
将来は、日本の素晴らしさを、仕事を通じて世界の人に紹介していきたいです。
林さんが留学していらっしゃる学校について教えてください。
私は現在イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の一年生です。この大学は州立大学で、シカゴから車で約2時間離れたアーバナ市とシャンペーン市にまたがる広大な敷地にキャンパスはあります。建物数は647棟、学部生は約33000人、大学院生は約10000人という大規模な学校です。専攻は教育学で、ビジネスを副専攻としています。組織での人材育成や人材教育に関心が高く、経済やビジネスも並行してしっかり学びたいと思いこのような専攻にしました。教育に興味をもったのは、高校生の時のアルバイトがきっかけでした。アルバイトではありましたが、しっかりした人がしっかりした会社をつくっていくのだと仕事を通じて強く感じました。ビジネスの世界でも「人」が重要で、そのためにも人生のあらゆる場面で「人の教育」がとても大切だと思っています。
アメリカに留学されたきっかけを教えてください。
日本では中高一貫の学校に通っていて、その学校では中学三年生から高校一年生にかけて生徒全員がニュージーランドへ留学します。ニュージーランドへの留学は、自分にとっては少し違和感があり、同じ英語圏へ留学をするならアメリカへ行こうと考え、高校一年生からアメリカに留学しています。英語はもともと好きでしたが、先生の勧めでスピーチコンテストに参加したことがきっかけでさらに好きになりました。私が留学していた高校は、ニューヨークのトロイという街にあるエマ・ウィラード高校 です。はじめて写真を見た時にとても綺麗な学校で一目で気に入ってしまいました。この学校はボーディングスクールで約300人の少人数制で、全寮制の学校でしたので生活面も安心でした。最初、渡米して2カ月くらいは緊張のせいで、思うように英語が出てこなくて心配しましたが、その後すぐに慣れてきてたくさんお友達もできました。卒業した今でも連絡を取り合って仲良くしています。高校のあるトロイという町は、ニューヨークの州都のオルバニーの近くなんですが、冬はとても雪の多いところです。渡米してからホームシックにはならなかったのですが、冬に雪が降った時にあまりにも深く積もりすぎて、膝まであるブーツの上から雪が入ってきてしまったんですね。冷たくて、心細くて、その時ばかりは何でこんな所まで来てしまったんだろうと、本気で日本に帰ろうかと思いました(笑)。でも今は、がんばって続けてきてよかったと思っています。
アメリカの大学はどのようにして選ばれたのでしょうか?
英語をさらに上達させたいという考え以外にも、自分の限界にチャンレンジしてみたいとも考えたからです。日本で生活していた時は家族や友達がいる素晴らしい環境のなかで、あまり自分のリミットが試されるような事がなく、毎日が平凡すぎて自分がグンと成長するような出来事がないように感じてしまったからです。学生である身、勉強に集中することはもちろん最優先です。そのためには身を引き締めて学業に専念する事は当たり前です。しかし、勉強だけできても仕方がありません。一人の人間としてより総合的に素敵な人になるためには学力だけでなく人間力も築く必要があります。そのためには早いうちに色んな困難に直面して、それに対応する力をつける必要がある事に気づいたのです。そのためにはアメリカに一人でいて、最も刺激を受けることのできる環境に身をおくという決心をしました。
アメリカの高校から大学へ進学するにはSATというテストを受けなければいけません。このシステムを知ったのは高校3年生の後半でしたので、完全にスタートで出遅れてしまいました。普段の勉強や宿題、クラブやアクティビティなど毎日フルで忙しい日々を送っていたのでSATの勉強はかなり大変でした。眠る時間を削って勉強するしかなかったですね。SATはスタンダードなテストなので、勉強をすればよいスコアがとれます。アメリカ人や他の国からの留学生は、このシステムをよく知っているので早くからものすごく勉強しているんですね。だから、高いスコアを獲得する人が多くて、なぜ早く気がつかなかったのだろうとすっごく後悔しました。イリノイ大学を選んだ理由は、よりたくさんのバックグラウンドを持った人たちと一緒に学べ、生活できるチャンスが得られる、規模の大きな学校へ行きたかったから。大規模な学校に行くほど色んな人や物事に接する事があると思い、そのその他には現実的だけど、イリノイ大学は州立大学のため学費が低めなこと、図書館の書籍数、教育学部があることなどから決めました。
大学生活はいかがですか?
とても充実した毎日をおくっています。学校がとにかく大きいので、毎日色々な人との出会いがあり、新しい友達もたくさんできて嬉しいです。また、大学生になって自分の意思が尊重される自由さもとても心地よく感じています。どういうことかと言うと、当たり前のことかもしれませんが、高校生の時は学校で決められたクラスをみんな同じに受けなければいけませんが、大学では自分である程度自由にクラスを決めることができます。必修科目ですらちゃんとした理由があれば学校と相談の上、変更することができます。アドバイザーは適切なアドバイスをくれますが、決定するのはすべて自分です。一人の人間としてきちんと対応してくださるスタッフにはいつも感謝しています。今は一年生なので、経済学、統計学、心理学等の一般教養のクラスを多くとっています。とても印象に残ったクラスはドキュメンタリーを分析するというクラスです。実際のドキュメンタリーを観て、登場人物やディレクター等、人を分析したり、内容を分析したりするというクラスです。政治的な背景や人の心理など様々な角度から分析するアプローチを学べてとても楽しかったです。また、専攻の教育学の分野では生徒にどのようにアプローチしたらよいかというような教育学のベーシックやエデュケーショナル・ジャスティス等のクラスをとっています。
大学生活で何か大変なことはありますか?
大変なこととはちょっと違うかもしれませんが、周りにはとても優秀な人が多いので、プレッシャーを感じることが時々あります。大手の企業のインターンに受かった人や何かを成し遂げている人の話を聞くと、何もできていない自分に対して少し焦りを感じます。また、将来の仕事についてもまだまだ先のことと思いつつ、気になります。キャンパスではキャリアフェアやキャリアフォーラムなどが開催されているんですが、一度会場に行ってみたことがあります。スマートに名刺交換をしていたり、企業の方達に自分のことを上手にアピールしていたり、みんな本当にすごいと思いました(笑)。自分のアピールポイントは何なのか?将来どういうことがしたいのか?これからは少しずつ考えていきたいと思います。
大学構内の中で、お気に入りの場所を教えてください。
好きな場所は二つあります。一つ目は「アイク」という所です。比較的新しい建物で、中には勉強部屋、ダイニングホール、図書館、ピアノなどの楽器などが練習できる部屋等がある建物です。勉強部屋はグループでプロジェクトなどに取り組む時に便利な大きな机のあるタイプの部屋と個室の勉強部屋があります。「アイク」は24時間生徒に解放されているので試験前などは友達と何時間もこもって勉強したり、食事をしたり、好きなピアノの練習をしています。二つ目はエンジニアのための図書館です。とても広く、みなもくもくと集中して勉強している空気感が好きです。寮から少し離れているのですがしっかり勉強したい時によく利用しています。
授業以外ではどのようなことをしていますか?
大学にはたくさんのサークルがありますが、私はアジア系アメリカ人のサークルに所属しています。国籍は関係なく、アフリカなどアジア以外で育った人や、インターナショナルスクールに通っていた人や、アメリカに小さい頃に移住してきた人など様々なバックグラウンドの人達が集まっているサークルです。ボランティア活動、スポーツイベント、ネットワークづくりなどが主な活動です。毎日のように何かしらイベントがありますが強制的ではなく、参加できる人が参加できる時間に参加するという、自由な雰囲気のあるサークルで、みんな優しくてよい人ばかりなのでとても気に入っています。またソロリティに興味があるので、積極的に参加していければと思っています。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校でもグリークシステムは盛んで、生徒の約25パーセントがフラタニティかソロリティに参加しています。また日本での活動としては、留学フェローシップというNPO団体が開催しているサマーキャンプのお手伝いをさせていただいています。留学フェローシップは、2014年高校3年生の時にサマーキャンプに参加したのがきっかけで知りました。たった3日間のキャンプでしたが、これまでの人生観ががらりと変わるくらい、本当に素晴らしい刺激と助けを先輩の方々から受けることができました。その時に先輩達から助けてもらったことを今度は自分が後輩達に恩送りしたいと思うようになり、昨年はメンターとして運営側スタッフとして参加させていただきました。高校生と実際に触れあい、エッセイのお手伝いや相談を受ける中で、自分とも向き合うこととなり、自分自身も成長させていただく良い機会となりました。まだまだ未熟ですが、これからも自分ができることは何でもお手伝いさせていただければと思っています。
留学を通じて学業以外で学んだことは何ですか?
「恐れることは何もない」と思えるようになったことです。やってみなければ結果はわからないので、悩んでいないで何でもとにかくやってみようと思えるようになりました。また、私は高校生の時からアメリカやカナダ等に留学している、同じ学年の日本人コミュニティに参加しています。距離もあり実際に会えない人も多いので、インターネットを通じてわからないことを教えてもらったり、愚痴を聞いてもらったり、精神面でとても助けてもらっています。大学の進学の時にも先輩達に学校の特徴や専攻のことでアドバイスをたくさんもらいました。このコミュニティではキャンプに行ったり、食事会等、実際に会って親睦を深める活動もしています。海外で暮らしたことのある人であれば理解していただけると思いますが、単に言葉の問題だけではなく、日本では経験したことのない困難な問題や出来事に遭遇することが多々あります。そんな時に誰かに相談したり、アドバイスをもらえるということは、とても大きな支えになります。コミュニティの仲間は、一緒に困難を乗り越えている絆で繋がっているように思え、私にとってはかけがえのない存在です。コミュニティを通じて、人の大切さやありがたさを学ばせていただいています。
卒業後はどのような仕事に就きたいですか?
将来の仕事についてはまだ少し先のことなので具体的には決めていません。ただ、一つ思っていることは日本の良さを世界の人達にもう少し正確に理解していただけるよう、どんな場面でも伝える努力をしていければと思っています。こちらに来る前は、日本のことはよく知られていると思っていたのですが、海外で暮らしてみて、色々な人とお話をしてみると、意外とよく知られていないということがわかりました。また、知っていても断片的な情報だったり、古い情報がアップデートされていないということに気がつくようになりました。例えば、アメリカ人の方と立ち話になった時に忍者のことを聞かれたことがあって、とてもびっくりしました。その方は日本にはまだ忍者がいると思っていらっしゃったんですね(笑)。日本の文化、経済、ビジネス、テクノロジー等日本の素晴らしさを、学校を卒業した後は仕事を通じて世界の人に紹介していければと思っています。
〔取材・文〕
QUICK USA, Inc.
菰田久美子
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