アメリカではさまざまな分野で、たくさんの日本人の方が活躍されています。このコーナーでは、アメリカで働いている日本人の方々に“ハタラク”楽しさや難しさなど、お話をお伺いしています。前回はニューヨークでアートメイク・アーティストとして活躍していらっしゃる田中里沙さんをご紹介させていただきましたが、今回はジョージア州アトランタのジョージア日本商工会でOffice Managerとしての勤務、並行して作曲家・トランペット奏者としても活躍していらっしゃる新井雄一(Yuichi Arai)さんにお話を伺いました。
ジョージアで働く、ジョージア日本商工会 Office Manager/
作曲家・トランペット奏者、新井雄一(Yuichi Arai)さん
新井雄一(Yuichi Arai)さん
ジョージア日本商工会
Office Manager
https://jccg.org/
自分が大切にしているものを軸として保ち続けたいです。
…新井さんのお仕事について教えてください。
私は現在、ジョージア州のアトランタにあるジョージア日本商工会にて、オフィスマネージャーとして勤務しています。また作曲家、ジャズトランペット奏者としても活動を行っています。
…ジョージア日本商工会について教えてください。
ジョージア日本商工会は、ジョージアに所在する日系企業、またジョージアに住んでいる個人により組織された非営利団体です。設立は1982年で、会員相互の親睦、福利向上、地域社会との親睦や融和を目的として幅広く活動しています。会員子弟のための日本語補習校への財政援助をはじめとし、講演、セミナー、ゴルフコンペ、ソフトボール大会、ボーリング大会、ジャパン・フェスト、新年会など、さまざまな活動を独自に、あるいは総領事館や日米協会と協力して活発に行っています。
…オフィスマネージャーとしてどのような業務をされていらっしゃいますか?
現在、ジョージア日本商工会のフルタイムのスタッフは私を含めて2名です。私は会計、総務など組織を円滑に運営するための業務全般から、役員会の開催、セミナーやイベントなどの運営の実務を担当しています。イベントの企画や内容などは役員会で決定されますが、会場の手配、スポーツイベントのルール決定、食事や飲み物の手配など、参加者の方々が安全で楽しい時間を過ごしていただけるよう、包括的な実務を遂行しております。
…これまでどのようなセミナーを開催されてきましたか?
会員の方を講師にお迎えし、交流、知識の向上を目的として専門的なテーマで講演していただいています。これまでに「移転価格について」、「人事戦略」、「DX」についてなど、幅広い分野でセミナーが開催されました。
…トランペット奏者としての活動について教えてください。
最近はブルワリーやワイナリーで演奏したり、パーティーや結婚式などで演奏したりすることが多くなっています。今年は音楽を始めてからちょうど30年。トランペットを始めてからは20年という節目を迎えました。
…音楽を始められたきっかけは?
10歳の時に父が大阪の小学生と中学生で編成された金管楽器バンドのチラシをもってきてくれて、やってみてはどうかと勧めてくれました。そして、バンドに参加しコルネットという楽器を初めて演奏しました。その後、高校生の時に吹奏楽部でフレンチホルンを担当し、大学生からトランペットを始めました。
…音大や専門学校へ行かれたのでしょうか?
いいえ、小さい頃から音楽を聴くのは好きでしたが、音楽の専門教育を受けたことはありません。トランペットは大学の時に著名なプレイヤーから1年ほど習いましたが、その期間を除けば独学で覚えました。
…大学卒業後はどのような進路に進まれたのでしょうか?
大学時代にトランペットにはまってしまい、演奏が楽しくて楽しくて仕方なくて、いつかアメリカでプロとして演奏活動をすることが夢でした。卒業後もミュージシャンを続けていきたいと思っていましたので、就職活動は全くしませんでした。ところが、唇に炎症を起こしてしまいトランペットが吹けなくなってしまいました。トランペットが全く吹けない期間が1年くらい続き、生活費も稼がなければいけませんでしたので、求人広告のコピーライターとして就職し、2年ほど勤務しました。
…コピーライターの仕事はいかがでしたか?
私は小さい頃から本を読むのも大好きで、中学生の頃は長編小説を書くなど、将来は作家になりたいと思っていました。書くことは苦ではありませんし大好きでしたので、コピーライティングの仕事も楽しい経験でした。ただし、小説と違って、コピーは短い文章で人の心を動かさなければいけませんので、「産みの苦しみ」も幾度となく経験しました。(笑)
…退職されてどうされましたか?
大阪市立大学の大学院へ進学しました。専攻は創造都市研究で、過疎化が進んでいる地方自治体などに対して、創造性を活かして問題解決などを行う研究を行っていました。会社員として勤務していた時も大学院へ進学してもトランペットの演奏の仕事は続けていましたが、さらにフリーランスでカメラマン、フリーライター、DTPオペレーターの仕事など複数の仕事をかけもちしていました。
…大学院卒業後はどうされましたか?
トランペットの演奏とフリーランスの仕事で生活が成り立てばよかったのですが、そのうち貯金がつきてしまい、再度就職活動をして英語教科書の出版社に編集者として再就職をしました。7年勤務しましたが、英語教科書だけでなくページ数の多い分厚い参考書の編集も担当していましたので、かなりの激務も経験しました。
…アメリカへいらしたきっかけは?
入籍直後に妻がジョージア州アトランタへ異動となり、遠距離生活をすることになってしまいました。時差など生活リズムがまったく違いますので、コミュニケーションもとりにくくなってしまい、自分もアトランタへ移住することを決めました。
…これまでずっとトランペットを続けられた要因は何でしょうか?
大学時代に始めたトランぺットですが、会社勤めをしても大学院へ進学してもずっと続けてきました。私は根っからの負けず嫌いで、できないことがあると悔しくて、できるようになるまで諦められません。(笑)また、自分になかなか納得することができない質で、もっと理想の吹き方に近づきたい、もっと内容の良い演奏をしたいという気持ちが常にあるため、長く続いているのだと思います。
…理想の吹き方というのはどういうことでしょうか?
おしゃべりをしている時に口に力は入っていないかと思います。演奏も同じで、力を入れていてはトランペットを長く演奏することはできません。余計な力を入れずリラックスして、より脱力して軽く吹けるなれるようになりたいと思っています。
…近年注目されるようになったダブルワークを実践されていらっしゃいますね。
意識してダブルワークをしようと思ってそうしたわけではなく、気がついたら自然とこういうスタイルになっていたというのが正直な感想です。気がつけば大学生の頃からこのスタイルですね。(笑)私の場合、何があっても音楽を自分の生活の軸にしていたいと思っていますので、いくら環境が変わったとしても、これだけは絶対にブレない軸なんです。
…新井さんにとって音楽とは?
ライフワークだと思います。一生かけて、内容の良い演奏ができるようになることを追及していきたいと思っています。でも矛盾しているのですが、恐らく一生かけても納得がいく演奏ができるようになるとは思えません。(笑)
…仕事のやりがい、喜びを教えてください。
どのような場面でも、相手の方に喜んでいただけた時に喜びを感じます。商工会の仕事では日本から来られている駐在員の方や、ジョージアに住んでいる日本人の方のお役に立つことで喜んでいただけたら大変嬉しく思います。トランペットの演奏でも同じで、たくさんの方に楽しんでいただければ本望です。
…今後の夢や抱負について教えてください。
先ほども言いましたが、今年は節目の年となります。直近の計画としては、今年記念のCDアルバムを作る予定です。エンジニアやデザイナーの方々とすでに打ち合わせをしたりして、着々と進めています。長期的にはトランペットで才能のある方々が早々と到達された高見に20年後、30年後でもよいので達することができればと思っています。そのためにも一層練習を続けようと思っています。
…アメリカで夢を追いかけている方へのメッセージをお願いします。
私の場合、生活の軸に音楽があります。どんなに仕事が忙しくてもその軸はブレないようにしてきました。自分が大切にしているものを軸として保ち続けていれば、結果は自然とついてくると思います。応援しています!
【取材協力・お問合せ】
新井雄一さん
ジョージア日本商工会
Office Manager
https://jccg.org/
Facebook: https://www.facebook.com/YuichiArai1024/
Instagram: https://www.instagram.com/yuichiarai1024/
【取材・文】
QUICK USA, Inc.
菰田久美子(Kumiko Komoda)
Email:komoda@919usa.com