知らないと会社が滅びる!?ミレニアル世代の考え方~今後の企業マネジメント変革のヒント

知らないと会社が滅びる!?ミレニアル世代の考え方~今後の企業マネジメント変革のヒント

 

 

 

米国では2015年についにミレニアル世代がベイビーブーマーより働く人口が多くなりました。ミレニアル世代は、その人口の多さから社会の形を変える存在になるだろうと言われています。この世代は従来とは異なる価値観を有し、仕事や人生、そのほか様々な物事に対して上の世代とは異なる考え方や、行動様式を持っています。

 

今後、企業にとっても、会社内で圧倒的に影響力の増す、この世代について理解を深め、彼らと良い関係を築いていくことは、事業を円滑に進め、さらなる発展を持続させるためにも絶対に欠かせない要素だと言えるでしょう。今回は企業がミレニアル世代と良い関係を築くために、この世代の特徴や考え方や価値観、そして今後の企業マネジメントの変革にヒントとなる考え方をご紹介していきたいと思います。

  1. ミレニアル世代とは
  2. ミレニアル世代の特徴
  3. ミレニアル世代に人気のある企業や職業
  4. ミレニアル世代の理想とする働き方
  5. ミレニアル世代と共に歩む企業のマネジメント変革のヒント

 


 

1.ミレニアル世代とは

 

ミレニアル世代は米国で広く用いられている世代別の定義によると、1981~1996 年までに生まれた人達で、2019 年時点で 23歳~38歳の方々になります。1997 年以降に生まれた人々はポストミレニアル世代、もしくはジェネレーションZと呼ばれており、ミレニアル世代とポストミレニアル世代の価値観には類似点が多数みられます。

 

米大手金融会社の調査によると米国のミレニアル世代の人口は9200万人で、この数は今まで世代の中で圧倒的な数を誇ってきたベイビーブーマーの人口7700万人をはるかに超えています。

 


 

2.ミレニアル世代の特徴

 

ミレニアル世代の1番大きな特徴は、デジタルネイティブだということです。「デジタルネイティブ」という言葉は米国の教育分野の作家、マーク・プレンスキー氏によって発案されたもので、生まれた時から、もしくは物心がつく頃から、スマートフォンやパソコン、インターネットに慣れ親しんで育ってきた人々を指します。

 

ミレニアル世代はこのデジタルネイティブの最初の世代で、このことが彼らの価値観や労働観、コミュニケーション方法を従来の世代とは大きく異ならせているといっても過言ではありません。彼らは現実の世界とインターネットの世界を対立するものとして区別せず、情報は基本的には無料だと考えています。またインターネットにおけるフラットな関係に慣れているので、相手の年齢や地位、所属などにこだわらず、かつ従来の常識や価値観にとらわれないという特徴があります。

 

驚くべきことに大手ソフトウェア会社の統計によると、SNSや動画、ネットサーフィンを日々楽しむミレニアル世代の集中力の持続時間は12秒で、その後の世代のジェネレーションZにおいては、たったの8秒なのだそうです。こうした変化を受けて、米国のペプシは今までの常識を打ち破る5秒間のCM制作を行っています。

 

また米大手コンサルティング会社の調査によると、不確実な時代を生きるミレニアル世代は、政治家、ビジネスリーダーや伝統的なメディア・ジャーナリストへの信頼度が従来の世代と異なり決して高くないという結果になっています。

 

帰属意識が低く、国によって程度の差はありますが、米大手コンサルティング会社の調査によればミレニアル世代の約50%は現在の勤務先で働き続ける期間を「2年以内」と考えていて、今後1つの企業に長く勤務したいと考える人材は主流ではなくなることが予想されています。さらに同じ調査では、2年以内に離職を考える理由のトップは「報酬の不満」で、その他は「昇進機会が不十分」や、「成長や学習の機会がない」などが上位を占め、ミレニアル世代が職場において自己成長につながる「経験」を希望していることがうかがえます。

 

この「経験」を重視する考え方は従来の価値観とは異なる価値観への変化にもつながっており、ミレニアル世代は今までの世代が人生において重要だと考えていた「自宅の購入」や「家庭や子供を持つ」といったことより、人生の目標において「世界を旅行する」や「社会に好影響を与える」といった「経験」に重きをおいている事は注目に値します。

 

今回、この文章を書くにあたって20代半ばのミレニアル世代の男性に価値観や働き方の意識についてインタビューを行ったところ、彼もこの点については激しく同意し、むしろお金や仕事の成功はそこまで考えてないイメージだと語っていました。

 

米大手コンサルティング会社の調査が示すように、ミレニアル世代はこのように「経験」重視の価値観を持っているからか、国によって興味の差はありますが、従来の世代の雇用形態とは異なる、フリーランスとして自分の能力を生かして単発の仕事を請け負う「ギグ」形式の仕事にも意欲的で、世界のミレニアル世代のうち、なんと半数以上がフルタイムの仕事の代わりに、もしくは副業として「ギグ」形式の仕事に参加している、または参加を検討すると答えています。

 

そして、彼らはこうした「ギグ」形式の仕事は「仕事と家庭の両立がフルタイムの仕事よりも可能」と考えているという結果となっています。ミレニアル世代のワークとライフバランスの考え方を示唆する興味深い内容だと言えます。

 

米大手金融会社のミレニアル世代についての記事によると、ミレニアル世代は「所有」に貪欲ではなく、将来的には持ち家を購入することを考慮に入れつつも、現実的には実家に住んだり賃貸が主流で、車も所有するよりはレンタカーを利用したり、Uberなど世界で急速に拡大中のライドシェアを利用する傾向がみられるそうです。

 

また個人差はありますが、食事に関しては、自炊をあまりせず外食やテイクアウトを好む傾向が見られます。そしてジャンクフードは好まず、健康的なレストランや食べ物に人気があるようです

 

またミレニアル世代はブランド志向も強くなく、最新の流行を取り入れながらも低価格におさえたファッションであるファストファッションを好む傾向が顕著です。そしてショッピングをする前には、デジタルネイティブの強みを生かし、ネットで入念に商品の調査やレビューを行い購入を行います。

 

そして今までの世代の購入スタイルと異なる点として、商品購入の際に、エコであるとかフェアトレードであるなど、その会社が社会によい影響を与えているかを考慮する傾向も見られます。

 

こうしたミレニアル世代の意識の変化の背景には、米大手新聞社の調査によると、この世代の収入が前の世代より20%も減少していることが大きく関係しているようです。そして収入が減少している一方で、健康や社会的貢献に関する意識が高いため、その両方の条件を一致させることができる商品を購入し、生活に取り入れる傾向が見られます。

 


3.ミレニアル世代に人気のある企業や職業

 

米大手ニュース専門局の調査によると、こうしたアメリカのミレニアル世代に人気のある企業には、アマゾン、IBM、オラクル、グーグル、Appleなど、デジタルネイティブの世代らしく圧倒的にグローバルなIT企業が人気をしめ、マイクロソフト、フェイスブック、ペイパルなどの名前が後に続きます。

 

IT系以外では人材紹介会社のロバート・ハーフや世界最大の会計事務所であるデロイトの名前が見られます。業種に関係なくこれらの会社全てに共通する点は、米国においてシックス・フィギュアと呼ばれる1千万円以上の給与を従業員に支払うことが可能なところです。

 

大手コンサルティング会社の調査によると、上記の企業の他にJPモルガンチェースやゴールドマンサックス、ディズニーやナイキ、ネットフリックスなどの企業が上位にあがっており、最先端の技術を駆使しつつ、変革を恐れず新しい事業や分野を切り開いている姿勢を持つ企業がミレニアル世代にとって魅力的なことがうかがえます。

 

続いてミレニアル世代に一番人気のある職種を見ていきましょう。こちらも、米大手ニュース専門局の調査によるとソフトウェア・エンジニア、データ・アナリスト、データ・サイエンティスト、ビジネス・アナリストなど、やはりデジタルネイティブの世代らしく、圧倒的にコンピューター関係の職種に人気があります。

そのほかには、プロダクト・マネージャー、ファイナンシャル・アナリスト、グラフィックデザイナー、ソフトウェア・ディベロッパー、プロジェクト・マネージャーなどがあげられており、コンピューター関連以外ではクリエイティブな仕事に人気があることがうかがえます。

 


 

4. ミレニアル世代の理想とする働き方

 

こうしたミレニアル世代の理想とする働き方は、米大手コンサルティング会社の調査によると、「仕事と人生のバランス」を最も重要視し、その後に「保証と安定」、「貢献・やりがい」を感じることとなっており、出世を人生や仕事における1番の成功とする今までの世代との違いが顕著にあらわれています。

 

会社で出世のはしごを登っていくことに人生の価値を置かないミレニアル世代は、より自由な働き方を希望し、企業に対してフレックス制や在宅勤務など労働時間や環境に柔軟さを求めます。

 

またミレニアル世代は会社での服装もカジュアルを好むため、服装の規定のないグーグルやフェイスブックなどの企業は、その点でもミレニアル世代にとって魅力的な企業となっています。近年、米国ではこうした風潮を受けて、米国大手銀行のJPモルガンチェースや金融大手のゴールドマンサックスも、ミレニアム世代の優秀な働き手を確保するために服装規定を従来のスーツからビジネスカジュアルに変更しました。

 

今後、この風潮は米国企業においてますます広まることが予想されており、スーツが規定となっている企業は時代遅れになってしまうかもしれません。

 

今回インタビューを行ったミレニアル世代の男性はこの点に関して、ミレニアル世代にとっては「合理的」であるかどうかが大切で、従来大事にされてきた「文化」や「伝統」などにはあまり重きをおかず、意味を見出せないものも多くあるとコメントしていました。彼らにとってスーツやネクタイは合理的でない選択肢の一つなのかもしれません。

 

興味深く感じられたのは、彼が営業をする際に、先輩に「メールより電話」、「電話より会ったほうがいい」と言われ、最初は全部メールの方が手間がなくて良いのではないかと思っていたそうですが、実際に会って話してみると情報量の桁があまりにも違うことがわかり、先輩の言っていることが合理的で正しいと納得できたとコメントしたところです。一見、不合理に思えることでも、実際に行動してみることで新たな発見があったことは彼にとって大きな収穫だったようです。従来の方法でも、合理性や意味のあるものについては、ミレニアル世代も納得し賛成が得られるのかもしれません。

 

そしてもう一つミレニアル世代は自分がやることに明確な意味を求める傾向があるので、会社の方針と自分の働き方に関する考え方が合わなければ、その会社で我慢せずに辞めて、別の会社を探す人が多いだろうとコメントしていました。

 


 

5.ミレニアル世代と共に歩む企業のマネジメント変革のヒント

こうしたミレニアル世代と共に歩んでいくために、今後、多くの企業は優秀なミレニアル世代を確保するために従来の会社のマネジメントを変革することが必須となってくるでしょう。

 

米国の大手求人情報サイトによると給与以外の点でミレニアル世代が魅力を感じる企業の共通点としては、「キャリアアップの機会」、「柔軟な勤務体制」、「企業の社会的貢献」、「ヘルスケアや家族に関する福利厚生の充実」、「学生ローンの返済支援」などがあげられています。

 

こうしたミレニアル世代が魅力的だと考える条件を考慮にいれて企業のマネジメント方法を柔軟に変革していくことが、今後、優秀なミレニアル世代の人材の確保をするために大切なポイントとなることが予想されます。

 

またこうした条件だけではなく、最近話題の「ティール組織」や、「インクルージョン」「ダイバーシティ」のコンセプトなどの企業のマネジメントにおける全体的な変革もミレニアル世代を惹きつける重要な要素です。ぜひこの機会に「ティール組織」や「ダイバーシティ」と「インクルージョン」のコンセプトについて考えを深めておきましょう。

 

 

1)「ティール組織」とは

 

「ティール組織」とはフレデリック・ラルー氏によって書かれた著書の邦訳のタイトルですが、新しい組織モデルを提唱する本として多くの人から注目を集めています。この本において従来の組織とは異なる新しい組織の特徴として、ティール組織があげられています。

 

本の中でティール組織と呼ばれる組織は共通点として、①自主経営(セルフ・マネジメント)②全体性(ホールネス)③存在目的(エボリューショナリー・パーパス)という3つの特徴のどれか、もしくは全てを備えています。

 

① 自主経営(セルフ・マネジメント)はひとりひとりが上司の指示によって行動するのではなく自分の判断で行動し、成果をあげていく方法を示しています。これを企業内で実現するには社員への権限移譲が必須となりますが、このような裁量が適切に行使されるように、あるティール組織では何かを決定する際に「専門家」および「その決定が影響する人」の両方からアドバイスをもらう条件を課すことで、誰もが適切な意思決定を行えるようにしています。

 

②全体性(ホールネス)は、従来のように会社で仕事における役割を果たすだけで、その他の自分の能力や個性にふたをせず、もっと個人のありのまま(全体性)を尊重して受け入れようという考え方です。今、仕事で使われていない個人が持っている特殊な技能や才能が押し殺されているのは組織にとって大きな損失です。この考え方の根底には今まで企業において排除されがちだった感情や直感的なもの、個人の深い内側にある自我をありのままに受け入れてもらえる場所の方が、人は本来の力を存分に発揮しやすくなるという考え方があります。つまり、オフィスに入るときに、ことさら武装しないで済む安心な状態が「ホールネス」なのです。

 

③存在目的(エボリューショナリー・パーパス)は企業がなぜ存在し、将来的にどのような方向に向かうのかを絶えず追求し続ける姿勢を指します。このような姿勢を持つことで従来の企業にとって目標になりがちである、利益や売り上げなどの数値の達成のみにとらわれるのではなく、企業にとって社会における真の存在意義を達成することにより、ポジティブな社会的インパクトを強め、結果として成功に結びつくという考え方です。

 

上記3つの特徴は、従来の企業の形態と大きく異なります。また注目すべきはこのような形の組織は、ミレニアル世代の求める働き方を受け入れやすい組織でもあるところです。企業のマネジメントの変革をする際に、こうしたティール組織の考え方や特徴を少なからず取り入れることは、ミレニアル世代にとって魅力的な要素になることは間違いありません。

 

 

2)「ダイバーシティ」と「インクルージョン」

 

もう1つ、今後の企業のマネジメント変革を語る際に、忘れてはならないコンセプトは「ダイバーシティ」と「インクルージョン」です。近年よく聞かれるこの「ダイバーシティ」と「インクルージョン」は直訳すると「多様性」と「包括性」になります。

 

この2つは企業のマネジメントにおいて語られる際にセットで利用されることが多く、企業における人材に「ダイバーシティ」(多様性)を「インクルージョン」(包括)することが、今後の企業の持続的成長の原動力になると考えられています。

 

具体的に「ダイバーシティ」と「インクルージョン」が達成されている企業とは、性別、年齢、人種、国籍、宗教、民族、社会的地位、性的指向・性自認、障がいの有無、価値観、働き方などの多様性を受け入れ、かつ、その多様性を持った人々が個性と能力を発揮して、気持ちよく生き生きと働ける環境である企業のことです。

 

従来の企業のように「ダイバーシティ」や「インクルージョン」に重きを置かない企業は、特定のカテゴリーの人々にしか働きやすい環境でしかなく、今後ますますどのような局面でも多様化するグローバルな社会においては取り残されることが予想されます。

 

またミレニアル世代は、デジタルネイティブ世代なので、幼い頃からSNSやインターネットを通して以前の世代より、多様な人々や様々な考え方にふれる機会が多く、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」の感覚を自然と身につけています。彼らが魅力的な企業の理由の上位に、社会的貢献をしている企業をあげるのも、この感覚が自然に身についているためだといえます。

 

また、企業にとっても、幅広い世代や、文化のバックグラウンドの異なる従業員、LGBTや障がいのある方を雇用し、社内で発言機会を増やしたり、プロジェクトを任せることにより、今まででは思いもつかなかった革新的な発想やアイデアが出され、新しいサービスや製品を社会に提供する機会を増大させるとも言えます。

 

さらに「ダイバーシティ」や「インクルージョン」が推進されている企業は、ミレニアル世代だけではなく、多様性があるために従来の企業では自分の能力を十分に発揮できない、より多くの優秀な人材にとって魅力的な企業になると言えます。

 

「ダイバーシティ」や「インクルージョン」のコンセプトは先に述べた「ティール組織」との類似性も認められます。これらの考え方は未来的な企業のマネジメントの方向性を示していると言えるでしょう。

 

今回はミレニアル世代の特徴や彼らの理想とする働き方をご説明しながら、今後、企業がミレニアル世代と良い関係を築くために知っておくべきことや、企業マネジメント変革のためにヒントとなる考え方をご紹介しましたが、いかがでしたか?今後、企業においても圧倒的に影響力を増すこの世代の価値観や考え方を理解し、良い関係を作ることにより、将来的な企業の発展にぜひ役立てましょう。

 


 

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