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このコーナーではアメリカのHR関連のお話や、ビザ等アメリカで働くために有益な最新情報を提供しています。今回は、11月23日に速報でお知らせしました2016年12月1日から予定されていました法律の改定「新米国残業代支払いルール変更」の差し止めの判決の件ですが、HRコンサルタントの酒井謙吉氏より、詳しい情報をご提供頂きましたのでご紹介させて頂きます。

 

 

【第29回】連邦裁判所による「新残業代支払いルール差し止め」判決について

 


 

先週木曜日から始まる感謝祭の連休前11月22日(火)に連邦地方裁判所のひとつでありますテキサス地裁のマザント裁判長がこの12月1日からいよいよ施行することが決まっていた、FLSA(Fair Labor Standards Act of 1938; 連邦公正労働基準法)改定によるエクゼンプト最低サラリー変更(別称「新残業代支払いルール」)の差し止め判決(Injunction Order)を米国労働省(USDOL: Department of Labor)に対して下しました。この差し止め判決によって、12月1日からエクゼンプト従業員(残業代支払いについて免除を受けているサラリー従業員)に対する現行の週給$455、年収$23,660 の最低サラリーを週給$913、年収$47,476に変更する改定法の施行が急きょ中止されることになりました。

 

 

本改定は、今年5月18日に労働省から最終改定法案として発布されたもので、2004年以来12年ぶりの最低サラリー改定ということで、2倍以上の最低サラリーになるはずの法改定でありました。ところが、21の州と全米商工会議所(National Chamber of Commerce)を始めとする50を超える業界団体が労働省を相手取って訴訟を起こしていました。これら訴訟はすべて似通った訴訟であったため、テキサス州の地裁が労働省に対するすべての訴訟を統括するという形で10月より審理過程に入りました。

 

 

その結果として11月22日にテキサス地裁の裁判長から出されたのがこの差し止め判決であった次第です。では、この差し止め判決は永遠に有効なものとなるのでしょうか。判決文では、差し止めはPreliminary Injunction だということですので、一時的な差し止め命令であることがわかります。ご存知のとおり、来年1月20日になると共和党の新政権が発足しますので、おそらく、新政権がこの一時的差し止め命令後の新規法案を別途議会を通じて審議することになるのではないかと憶測することができます。(ただし、現段階ではあくまでもこれは憶測です。)

 

 

今回のテキサス地裁の判決文を読んでみますと、労働省のエクゼンプト最低サラリー変更は、金額が倍以上になることに対してあまりにも省内だけでの独断的決定で、本来議会を通じた審議を有するものという裁判所の判断が働いたことがわかります。この判断は至極妥当なものではないかと私にも感じられるのですが、それにしても裁判所の判断があまりにも法施行ぎりぎりの段階で出されたことに対して戸惑いを感じざるを得ないわけです。すでに多くの企業や団体では12月1日の法改正の施行を前にして、社内でのエクゼンプト従業員のサラリー調整を行ったり、エクゼンプト従業員のステータスを変更して、ノン・エクゼンプト(残業代支払いをしなければならない従業員)のステータスに分類しなおしたりしていたわけです。これらの措置をすでに行った企業はどうしたらよいのでしょうか。

 

 

ここで法改定はひとまずはなくなりましたから、改定法案に従う必要は確かになくなりました。ですので、サラリーの調整を元に戻すことも可能ですし、ノン・エクゼンプトから再度エクゼンプトのステータスに戻すことも考えられるわけではありますが、すでにそのような調整や変更を実施に移した企業は、その実施を止めていまさら元に戻すというようなことは現実的な方策ではないと申し上げられます。つまり、そんなことをしたら従業員のモチベーションを下げるだけで、社内の士気は地に落ちてしまうことが予想されます。さらにステータスの再変更では社内を混乱に招き入れ、場合によっては訴訟沙汰にさえなりうるリスクが発生するかもしれません。社内でまだ法改定に対する給与調整やステータス変更を何も発表していない企業だけは現状のままで何も手を打つ必要はなくなりました。

 

 

今後の動きについては、ひょっとしたら新政権発足前にさらに新しい何らかの裁判所判断が再度発表になる可能性も否定できなくもありません。次期大統領の就任といい、今回の連邦地裁判決といい、アメリカ国内の雇用環境をめぐるは法律や規制は今後とも激動の幕開けを予感させられます。当面、まったく目が離せられない状況です。とにかく、新しい動きが今後出てくるのであれば、弊社で皆様にできるだけ早くにそれら動きを何らかの対策とともにお伝えしたいと思います。ただし、法律とは別で、皆様の従業員に対する対策につきましてはそれぞれの状況に応じて千差万別の対応となりますので、個別に弊社までお早めにご相談いただけましたら、皆様の状況に合わせた個別の解決策を先手を打ってご提供させていただくことができます。今後のことに対して、悩みや迷いがございましたら、とにかくご相談をこの私、Pacific Dreams, Inc. の酒井までいただけましたら幸甚です。

 

 

November 28, 2016

Pacific Dreams, Inc.
President & CEO
酒井謙吉
www.pacificdreams.org
Phone: 503-783-1390

Pacific Dreams, Inc.は、迅速で精度の高い技術翻訳サービスを手頃な価格で提供することを目的に、オレゴン州のポートランドにて酒井謙吉氏とアイリーン酒井氏によって 1992年に設立されました。現在は翻訳サービスに加え、全米50州にある日系企業に対して人事・労務コンサルティングおよびHRサポートサービスを提供しています。

 

 


UNITED STATES DEPARTMENT OF LABOR

https://www.dol.gov/featured/overtime

 


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