先日の記事でもご紹介させていただきましたが、カリフォルニア州でもセクシャルハラスメント(セクハラ)防止に向けた企業に対する法律に動きがありました。今回はPacific Dreams, Inc.の人事労務コンサルタントの酒井さんよりさらに詳しく解説させていただきます。
2018年9月30日にカリフォルニア州のジェリー・ブラウン州知事により、職場でのセクハラ防止に関する新しい州の法案に署名がなされ、新法施行の運びとなりました。この新しい州法はSB 1343 という法案番号が付けられており、今後カリフォルニア州にある従業員数5名以上の企業は、2020年1月1日までに非管理職の従業員には1時間、スーパーバイザー以上の管理職には2時間のセクハラ防止トレーニングを社内で提供しなければならないという義務が課せられることになります。
従業員数5名というのは、(もし社内で働く)派遣社員や季節従業員の方がいるのであればそれらの方の数も含むということで、必ずしも正社員あるいはフルタイムまたはパートタイムの従業員数に限定されないということです。また企業に新しく採用された従業員の場合、最初の就業日から数えて6ヵ月以内にトレーニングを行わなければならないとなっています。さらに派遣社員および季節従業員には、就労後30日以内、あるいは100時間のいずれか早い方でのトレーニング実施の義務が課せられます。2020年1月1日までにトレーニングを受けた後は、2年に1回の割合でその後はトレーニングを提供し続けるという義務になります。
2005年にスタートしたカリフォルニア州の州法でありますAB 1825 では、従業員数50名以上の企業で働くスーパーバイザー以上の管理職が2年に1回、最低2時間のセクハラ防止トレーニングを受けねばならないということでしたが、これが従業員数5名というスモールビジネスにおいても、またそこで働く全従業員にも義務化されることとなり、ニューヨーク州と並んでカリフォルニア州での雇用主の負担はますます大きいものになるということがいえます。(ちなみにニューヨーク州では従業員数に関係なく州内にあるすべての企業で働く全従業員がトレーニングの対象)
セクハラ防止トレーニングを社内で行ったからといって、社内で今後セクハラが完全に根絶できることを暗に保証しているわけではないのですが、もしも万一社内で不幸にもセクハラが起こってしまった場合、このような法令に従ってトレーニングを企業が提供していなかったというようなことがわかれば、企業に科せられるペナルティや懲罰的賠償金はさらに高額なものになるということが今までの判例等の中から明らかになっています。そして何よりもトレーニングを行うことによって、潜在的なセクハラの芽を摘み取り、セクハラ発生の抑止力と防波堤とになることができるわけです。それは企業を訴訟などから守り、リスクを軽減させる手立てであり、従業員にとっては健全で働き甲斐のある職場構築の道筋であると申し上げることができます。
【著者】
Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
kenfsakai@pacificdreams.org
www.pacificdreams.org
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