アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、数多くの日本人が活躍しています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いしています。今回はロサンゼルスで、キーエンス・コーポレーション・オブ・アメリカのナショナル・セールス・サポート・スペシャリストとして働く花野さんにお話を伺いました。
離婚を経て、41歳で一流企業に就職!
“第二の人生”をスタートできたのはアメリカならでは。
キーエンスの事業内容と、花野さんの業務について教えてください。
キーエンスは、総合メーカーとして、ファクトリー・オートメーション用センサをはじめ、計測器、光学顕微鏡などの開発・販売を行っています(www.keyence.com)。私は、2002年の4月にロサンゼルス営業所のリージョナル・セールス・サポートとして入社し、2005年からシカゴの営業所人事部に移り、主に新入社員の研修担当を務めていました。4年後、再びロサンゼルスに戻り、現在、ナショナル・セールス・サポート・スペシャリストとして働いています。
キーエンスには、人材派遣会社を介して就職したそうですね。
はい。友人が勤めていた人材派遣会社から応募したのがきっかけなんです。当時私は、日系のコンサルティング会社で働いており、海外研修プログラムを担当していたんです。ところが、2001年9月11日に起こったアメリカ同時多発テロ事件で、予定していたプログラムが全てキャンセルに!20以上の団体が一挙にキャンセルしたため、会社は存続の危機になり、社員も次々に解雇されるという非常事態になってしまいました。
私はかろうじて首はつながったものの、その後、社用クレジットカードや携帯電話は没収され、接待も中止など、それまでとは状況が一転。さらに給料が30%カットされることになり、さんざん悩んだ挙句、退職を決意。友人が勤める人材派遣会社に初めて登録したんです。ゆっくり仕事を探そうと思っていたところ、この友人から紹介されたのがキーエンス。友人曰く、すでに7人が却下されている超難関の会社だけど、面接の練習だと思って気軽に行ってみたらと。ところが、結果はまさかの採用(笑)。日本人を雇うつもりもなかったらしいと聞いて驚きました。
超難関企業に採用された理由はなんだと思いますか?
まったく期待せず、ダメ元で臨んだのが良かったのかも(笑)。これまでに、翻訳、経理、教師、接客など、幅広い分野で仕事をしてきたことも大きかったと思います。さまざまな仕事を通して「何に対しても疑問を持ち質問する」「改善案を常に考える」「効率化を図る」「クライアントに付加価値を与える」を学び、キーエンスではそれが全て生かされていると思いますね。
2015年に「Corporate Person of the Year」で表彰されました。
多分野で働いていらっしゃいますが、31歳まで実務経験がなかったと伺いました。
18歳のときに、カリフォルニア州のフレズノ州立大学に留学し、卒業後は帰国するつもりだったので、アメリカで働く気はまったくなかったんです(笑)。けれど、アメリカ人と結婚したため、そのままフレズノに永住することになり、その後2人の子どもに恵まれ、20代は家事と子育てであっという間に過ぎてしまいました。子どもが学校に行くようになり、お迎えに行くまでの4時間ほどの間、日系スーパーでレジ打ちの仕事をするようになったのは31歳のとき。それまで就労経験は一切なく、日本でもアルバイトすらしたことがなかったんです。その後、子どもたちの成長に合わせ、少しずつ仕事をするようになり、翻訳やフレズノ日本語補習校の教師などをしていました。自宅でも仕事ができるようにと起業し、
息子さんの結婚式で記念撮影。「娘(右)と息子とは、離婚を機に離れて暮らしていましたが、
その後ロサンゼルスで一緒に住むように。現在2人とも結婚し独立しています」。
高級化粧品ブランド“シャネル”の美容部員だったこともあるそうですね。
フレズノ市内のデパートにある化粧品売り場で、シャネルが「ナイトショート」という午後6~9時のシフトで働く美容部員を募集していたんですね。経済的に苦しかった時期で、制服があるという理由だけで応募しました(笑)。たった1名の募集に対し、応募者は50名以上。しかも、みなエスティーローダーやクリニークなど、高級化粧品ブランドでの経験者ばかり。最低限のメイクで、英語もたどたどしい私は、明らかにその場で浮いていました。面接者からは「美容の販売員経験はあるの?」「(メイクのために)人の顔に触れるの?」「メイクも大してできないのにどうするの?」など矢継ぎ早に質問されましたが、「私たちがあなたを雇用するメリットは何?」と聞かれても相手を納得させる答えを返すことはできませんでした。面接もいよいよ終わりという頃、「最後に何か言いたいことはある?」と聞かれたとき、この人とはもう一生会うことはないから、と思った瞬間、思わず口を突いて出たのが、カスタマーサービスへのクレーム。「シャネルの商品が好きだから、ここに3回来たことがあるけど、一度として満足したことはなかった。ディスプレイを見ているのに声を掛けられなかったこともあるし、頬紅を買ったときは、商品を袋に入れて渡すだけ。何のアドバイスも説明もなかったわ。態度も悪いし、こんな社員教育やカスタマーサービスで、この業界で本当に生き残れると思ってますか?」と気が付いたらまくしたてていました。よっぽどうっぷんがたまってたんでしょうか(笑)。ポカンと口を開けて私を見る相手に“Have a good day!”と言って、これですっきりしたとその場を去ったのですが…その日の内に、採用の電話がきました(笑)。しばらくの間、ナイトショートを務め、その後、デイタイム、フルタイムになり、最後は、カウンターマネージャーにまで上り詰めました。
シャネルの美容部員だった頃。「最初はほぼすっぴん。ここでメイクを覚えました(笑)」。
ロサンゼルスで働き始めたのはいつ頃ですか?
シャネルには2年半ほど勤めていましたが、
「ここ5年ほど、同志社大学商学部のアメリカ研修の一環として行われているセミナーに、ゲストスピーカーとして毎年登壇しています。約80名の学生を前に、アメリカで働く日本人をテーマにお話ししています」。
趣味や特技などはお持ちですか?それは仕事にどんな影響を与えていますか?
多趣味で困っています(笑)。一番好きなのはダンスで、これまでジャズ、フラメンコ、ベリーダンスなど、いろんなジャンルのダンスを習ってきました。でも、社交ダンスとか、パートナーがいるのは苦手なんですよね(笑)。私のモットーは“Work hard, Play harder”。でも、つい体を壊すまで仕事に集中してしまいがちなんです。趣味を持つことでOnとOffを切り替えるように心がけています。
2011年に、日本の着物文化を伝承しているNPO団体「なでしこ会(nadeshikokai.org)」の代表を務める着物の先生と出会ってからは、着物にどっぷりハマってしまいました。浴衣さえまともに着れなかったのに、今では訪問着はもちろんですが、振り袖の着付けもしたことがあります。ちなみに、50歳になった時、記念に振袖を着たんですよ。日本ではありえませんが、常識や形式にとらわれず、日本の文化を楽しむって大事だと思うんですよね。着物を好きになって良かったことは、母の着物を着られること。おしゃれな母は着物をたくさん持っているのですが、私がアメリカで暮らしているので、着物を譲っても着る機会がないわねと言っていたんです。でも今は、帰国する度に、スーツケースいっぱいに母の着物と帯を詰め込んでアメリカに持って帰るようになりました。それがまた素晴らしい着物ばかり。最初は高い着物は渋って譲ってくれなかったけれど、最近は、どれでもいいわよって(笑)。ようやく母に認めてもらったような気がしますね。着物の良さを母と語らえること、そして母から娘へと日本の美しい文化をつなぐことができて、本当に良かったと思っています。
50歳を記念して振袖姿に。「アメリカだからできたこと!年齢を気にせずに純粋に着物を楽しむことも大切だと思います」。
「母(右)からもらった着物です。写真は母が40代の頃でしょうか。同じ着物を親子で着れるって素敵ですよね」。
現在の仕事のやりがいや喜びを教えてください。
人間はどんな難しい状況や課題を与えられても、時間が経つにつれて慣れていくもの。そこで止まってしまうと成長はないと思うんです。私自身も、どんなことでも大抵2~3年でマンネリになって飽きてしまう性格ですが、キーエンスの仕事は、常に新しいチャレンジが与えられるので、とてもやりがいがあります。ただし、新しいことにチャレンジすることは決して簡単ではありません。例えば、新しいプロジェクトが立ち上がり、もしこのままの状態ではできないと思ったら、自分に今何が必要か、どうやって進めるか、どうしたら良くなるか、どう効率化を図るか、と苦心してやってみる。同じ会社に長く勤めていても、年齢を重ねても、好奇心を忘れずにいられるって、仕事をする上で、最上の喜びだと思います。
プライベートでは2016年に23歳年下の男性と再婚。通っている教会でプロポーズを受けた時の様子。
今後の課題や抱負などをお聞かせください。
勤続17年になりますが「自分には何ができるのか」を常に考えています。今、何が一番大変かと言うと、職場の同僚たちはみな20代なんです。でも私はもうすぐ60代。当然、仕事の仕方も考え方も全く違う。新卒で入社していれば勢いもあるし、私が苦労して覚えたことでもあっという間にものにしちゃうんですよね。これまではそんなこと考えたこともなかったけれど、これからはこのような状況で、どうやって自分のモチベーションを上げていくかが、私の最大の課題かな。本音を言えば、自分よりはるかに優秀な同僚たちにレベルを合わせて、私ももっと自分を磨かなくてはと焦っているけれど、本当は周囲と比べるのではなく「自分に何ができるか」を突き詰めることが大事だと思います。アメリカには定年がありませんから、仕事を通してもっと成長できるかどうかは、全て自分次第。自分が若い世代にどんな付加価値を与えることができるのかを追求していこうと思っています。
同僚たちとビーチでBBQ。「職場は20代ばかり!日々切磋琢磨しています(笑)」。
【取材協力・お問合せ】
花野あけみさん(Akemi Hanano)
National Sales Support Specialist at Strategic Business Development
Keyence Corporation of America
300 N. Continental Blvd., #500
El Segundo, CA 90245
Tel: 1-888-539-3623
www.keyence.com
【取材・文】
ライター
砂岡泉(Izumi Sunaoka)
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