留学は人生の中で生涯忘れられない貴重な体験の一つになることでしょう。このコーナーでは、留学を通じて得た様々な体験や感想を日本人留学生の皆様に伺っています。留学での楽しい経験や大変なこと、海外生活で学んだことなどを写真を交えてご紹介させていただいています。今回は昨年の12月にカンザス大学を卒業された宮地さんのお話しです。
【左から三人目が宮地さん。Statisticsの先生と(左から二人目)】
University of Kansas (カンザス州)
宮地達也さん
日本とアメリカの架け橋となれるような仕事をしていきたいです。
留学されていた学校について教えてください。
カンザスの州立大学、カンザス大学(University of Kansas)を12月に卒業しました。総合大学でキャンパスもとても広く、アジアからの留学生は比較的少ない大学です。全体の数%と聞いていますので、本当の意味で留学をするのに適した学校だと思います。
【学内のメインストリート】
スポーツもとても盛んな学校で、特に男子バスケットボールでは名門校として知られています。バスケットボールの生みの親であるDr. ジェームズ・ネイスミスが初代監督を務めたことでも有名です。
【バスケットゲームが行われるAllen Fieldhouse】
【バスケットボールの試合】
日本からすぐにカンザス大学に留学されたのでしょうか?
最初は、カンザス州のど真ん中にある、Central Christian College of McPherson Kansasという短大に留学し、その後カンザス大学にトランスファーしました。 最初は音楽を専攻していたのですが、自分の音楽レベルに不安を感じ、将来性のあるビジネスに専攻を変えました。ビジネスの成績が振るわなかったということもありますが、一般教養でとった経済学に興味を持ち、最終的に経済学部へ移り、経済学を専攻しました。
【経済学部があるビル】
ローレンスの街はどのようなところですか?
学園都市で、まさに学校でまわっているような街です。レストランやバーもありますが、基本的にはいなかですね。都会に比べると遊ぶ場所は少ないので、ないからこうしようと、クリエイティブに自分達で考えて遊んでいました。
例えば、森の中にあるトレイルを散歩したり、ネイティブ・アメリカンの居住地跡を見学に行ったり、日本ではあまりしたことがなかった卓球をしたり(笑)。でもそれはそれで、かえって楽しかったように思います。
【Lawrence近くのひまわり畑】
大学での勉強はいかがでしたか?
実は、音楽からビジネスに専攻を変えてから成績がとても下がってしまいました。特にアカウンティングとビジネスローには苦戦しました。成績が悪くなって行き詰ってしまったので、気持ちを入れ替えようと思い切って休学し一年ほど日本に帰りました。アルバイトをしながらアメリカでの大学卒業をあきらめたほうがよいかととても悩みました。
そんな時、カンザス大学の博士課程で学んでいた先輩から「ここで諦めたら何もなくなってしまうよ」と言われて、もう一度頑張ろうと思うようになりました。カンザスに戻ってからは、何をするにもやる気が出てきて、がむしゃらに勉強した結果、成績もどんどん上がっていきました。卒業間近にはGPAも上がり、2クラスは上位3人に入るくらいまでになれました。思い切って休みをとってよかったと思います。
【International Financeのレクチャー風景】
カンザス大学での学校生活はどのようなものでしたか?
州立大学なので生徒数は多いですが、生徒に対してとても熱心な教授が多いので、教授と生徒との距離がとても近く感じられました。授業内容の質問はもちろんのこと、国の経済発展とその国に住む人の体重の推移というような授業で習ったセオリーを応用して思いついたアイデアを質問に行くなど、気軽に教授を訪ねて行ける雰囲気がありました。何人かの教授は自分にとって、人生のアドバイザー、メンターともいえる存在となり就職活動やアメリカ生活の悩みなどについて卒業後もアドバイスをもらっています。
カンザス大学には日本人留学生の会はありますか?
日本人会があります。人数は少なく、現在は10名くらいです。大きなイベントとしては毎年3月に、キャンパスで「日本祭」を開催しています。ファッションショー、日本の歌の披露、お好み焼きやカレーなどを販売したりしています。自分はアメリカ人の友人と組んで、漫才を披露しました(笑)。
留学して通じて学んだことは?
がんばればチャンスを与えてもらえるということです。毎年「Naka-kon」という日本のサブカルチャーを紹介する8000人規模の会場でのコンベンションがあるのですが、ボランティアで参加して3年目に有名な日本人ゲストの方の通訳という大役を任せていただきました
1年目の時から通訳をさせて欲しかったのですが、経験不足ということで初めの年は会計やその他の雑務を担当し、イベント自体に慣れることから始まりました。初めてのことが多くミスを連発し、反省点が多い1年目でしたが、その失敗を踏まえつつ、アメリカ人の友人と話す際は英語のギャグをどううまく通訳するのかを考えながら2年目に備えていました。そして2年目にはゲストサポートの部署のマネージャーのアシスタントとしてお手伝いし、ようやく3年目にして通訳のお仕事を任されるようになりました。
【緑の多い校内】
オポチュニティーを得るのに必要なことは?
カンザスでは日本人が少ないので、日本の大学では経験できないレアなオポチュニティーを得ることがとても多くあります。それらのチャンスを得るにはネットワークづくりが大切だと思います。留学中は日本人とは関わりたくないという人も中にはいますが、チャンスはどこにあるのかわからないので、誰とでもネットワークをつくっていた方がチャンスも広がり、人間的面白さがでてくると思います。
SNSも使っていますが、SNSはあくまでもファーストステップだと思います。インパーソンで人とのつながりを深めていくことが大切かと思います。
大学構内の中で、お気に入りの場所を教えてください。
図書館です。アメリカの学生はみんなよく勉強します。図書館へ行くとたくさんの学生が黙々と、勉強をしています。そうした彼らの姿を見る度に刺激を受け、勉強する意欲がわいてきました。自分もとてもよく勉強をした図書館は、一番思い出深い場所です。
【通っていた学内の図書館】
印象に残ったクラスはありますか?
たくさんありますが、起業学のクラスで卒業間近に取り組んだグループ・プロジェクトが一番思い出深いです。日本食はヘルシーだが高価だから親しみがないという中西部に住む人々のイメージに着目し、私達のグループではキャンパス内で日本食のフードトラックを経営するビジネスモデルを発表しました。
始めはスプリントの本社ビルのあるオーバーランドパークというところで日本人社員をターゲットにした営業を企画していました。しかし、プロジェクトではターゲットとなる人々にアンケートを取らなければならず、現実的に社員にアンケートを取るのは難しく、スプリント本社ビルから大学内へとビジネスプランのロケーショーンを移すことになりました。結果的には、大学内で学生をターゲットにしたビジネスでも実際に利益を出すことができることを証明でき、教授から、お褒めの言葉ももらい、とても嬉しかったです。
学業以外で、留学を通じて学んだことは何でしょうか?
アメリカに留学してから、自分の視野が大きく広がったように思います。人口のほとんどを日本人が占めている日本では海外から来た人の性格や印象を、ステレオタイプで決めつけているように感じる時があります。民族、宗教、習慣、人種などあらゆる面で多様性を求められるアメリカ社会で生活してきた自分としては〇〇人だからということで個人を判断するのではなく、その人個人を見てその人の性格を判断するように心がけています。
将来はどのような仕事をしたいですか?
セールスの仕事で日本とアメリカの架橋になりたいです。元々他人と話をすることが好きだということもありますし、学生生活でも多くの人と交流を深めました。しかしビジネスの上では自分のコミュニケーションスキルはまだまだだと思っています。そのスキルを向上させるためにもセールスの仕事をしてみたいです。
さらにSNSがより便利になり、コンピューターの性能が上がっても、現状の社会では最終的に物事の判断を下すのは人です。そしてその判断基準は人と人との関わりにより構築されていくものだと思います。アメリカ、日本両国の製品や技術を通じて今まで互いに交流のなかった分野においてアメリカと日本の架け橋となれるような仕事がしてみたいです。
〔取材・文〕
QUICK USA, Inc.
菰田久美子
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