米国雇用統計(Current Employment Statistics)とは、アメリカの雇用情勢を示した統計指標です。米国労働省労働統計局は毎月アメリカの雇用情勢を示す米国雇用統計を発表しており、このデータは投資判断の大切な指標のひとつになるなど、アメリカの景気の実体を表す最新の数値として世界の経済に影響を与えるため、米国内のみならず国際的に注目されています。 中でも最も注目される数字は、非農業部門雇用者数、失業率や平均時給などです。
非農業部門雇用者数とは、農業部門以外の産業で政府機関や民間企業に雇用されている雇用者数や増減をまとめたものです。雇用者数が増えれば消費も増加することから重要な指標とされています。失業率とは、米国内の失業者数を労働人口で割り算出した数字で、割合と増減をまとめています。また、米国雇用統計における平均時給とは、1時間当たりの平均賃金を表しています。
今回は米国の最新米国雇用統計の結果について詳しくご紹介します。
【非農業部門雇用者数】
2024年7月5日と7月19日に発表された米国労働統計局の報告によると、6月の非農業部門雇用者数は206,000人の増加が見られ、雇用が増加したのは政府、医療、社会補助、建設の部門でした。
2024年6月に非農業部門の雇用は8州で増加し、42州とコロンビア特別区ではほとんど変化がありませんでした。最大の雇用増加はノースカロライナ州(+23,100人)、マサチューセッツ州(+19,000人)、バージニア州(+15,000人)となっています。
年間を通じての非農業部門の雇用は27州で増加し、23州とコロンビア特別区ではほとんど変化がありませんでした。最大の雇用増加はテキサス州(+267,400人)、カリフォルニア州(+223,600人)、フロリダ州(+196,900人)で発生しています。最大の割合増加はサウスカロライナ州(+3.5%)、ミズーリ州(+3.2%)、ネバダ州(+3.1%)となっています。
6月の政府部門の雇用者数は70,000人増加し、これは過去12か月間の平均月間増加数49,000人を上回っており、地方政府(教育を除く)で34,000人、州政府で26,000人の雇用が増加しました。
医療分野では6月に49,000人の雇用が追加されましたが、これは過去12か月間の平均月間増加数64,000人を下回っています。外来医療サービスで22,000人、病院でも同じく22,000人の雇用増加が見られました。
6月の社会扶助部門の雇用者数は34,000人増加。これは過去12ヵ月間の社会扶助部門の雇用の月平均22,000人増加を大幅に上回っています。
建設業就業者数は27,000人増加でこちらも過去12ヵ月間の月平均20,000人増を上回りました。
小売業の雇用者数は、年初は増加傾向にありましたが、6月は9000人減で大きな変化はなしとなっており、家具、インテリア、電化製品、家電小売業は6,000人減となりましたが、ウェアハウス・クラブ、スーパーセンター、その他一般商品小売業は5,000人増加しています。
専門職・ビジネス・サービス部門の雇用者数は、6月も17,000人減とあまり変化がなく、1年を通してほとんど変化していません。
派遣労働者数は前月比49,000人減少し、2022年3月のピ ーク時から515,000人減少した。
専門的・科学的・技術的サービスの雇用者数は24,000人増加して、6月も引き続き増加傾向を示しました。
鉱業、採石業、石油・ガス採掘業、製造業、卸売業、運輸・運送業を含む他の主要産業では、雇用者数は前月とほとんど変わっていません。
【失業率】
失業率は4.1%で、失業者数は680万人となっており、6月にはほとんど変化がありませんでした。これらの数値は1年前と比べると高くなっており、1年前の失業率は3.6%、失業者数は600万人でした。
主要な労働者グループの中においては、6月は女性(3.7%)Asian(4.1%)の失業率が増しており、(3.8%)、ティーンエイジャー(12.1%)、White(3.5%)、Black(6.3%)、Hispanic(4.9%)の失業率の変化は僅かでした。
長期失業者(27週以上失業している人)の数は、6月に166,000人増加して150万人に達し、この数値は1年前の110万人から増加しています。長期失業者は、6月の全失業者の22.2%を占めています。
【労働力参加率とパートタイムの雇用者数】
16歳以上の就業者及び、現在積極的に求職活動をしている人口の割合を示す労働力参加率は6月は62.6%とほとんど変化がなく、就業者人口比率は60.1%のままでした。これらの指標は、年間を通じてほとんど変化が起こっていません。
6月のパートタイム雇用者数は420万人で、これらの人々はパートタイムで働く理由としては
労働時間の短縮や、フルタイムの仕事が見つからなかったことなどが挙げられています。
【週間収入中央値と平均時給】
2024年第2四半期におけるアメリカの1億1990万人のフルタイム賃金労働者の週間収入中央値は1143ドル(季節調整なし)でした。これは1年前と比べて3.9%の上昇であり、同期間中の米国消費者物価指数の3.2%の上昇と比べて高い数字です。
女性の週間収入中央値は1017ドルで、男性の週間収入中央値1253ドルの81.2%となっています。また女性と男性の収入比率は人種および民族によっても異っており、White Womenは男性の81.0%、Black Womenは92.5%、Asian Womenは83.1%、Hispanic Womenは86.3%の収入を得ていました。
主な人種および民族グループの中での週間収入中央値の比較においては、フルタイムで働くHispanicの週間収入中央値(903ドル)はBlack(941ドル)、White(1167ドル)、Asian(1500ドル)より低い値となっていました。同性別における比較では、Black Menの週間収入中央値は979ドルで、White Menの週間収入中央値1281ドルの76.4%に相当。Hispanic Menの収入中央値は963ドルで、White Menの75.2%に相当しています。女性間では差が小さく、Black Womenの週間収入中央値は906ドルで、White Womenの1037ドルの87.4%に相当。Hispanic Womenの週間収入中央値は831ドルで、White Womenの80.1%に相当します。Asian Men(1608ドル)およびAsian Women(1337ドル)の週間収入中央値は男女共にWhiteの週間収入中央値よりも高い値となっていました。
6月の民間非農業部門雇用者全体の平均時給は、前年同月比10セント(0.3%)増の35.00ドルとなり、過去12ヵ月の間に平均時給は3.9%上昇しました。
6月の民間生産・非管理職の平均時給は、前年同月比10セント(0.3%)増の30.05ドルとなっています。
【平均週労働時間】
民間非農業部門雇用者全体の平均週労働時間は3ヶ月連続で34.3時間で製造業の平均労働時間は40.2時間で横ばいとなり、平均残業時間は3時間となっています。民間非農業部門雇用者の生産・非管理職の平均週労働時間は、0.1時間減少し33.7時間となっています。
米国雇用統計の発表は速報ニュースになるほど重要度が高く、マーケットにも大きな影響を与えます。皆さんもぜひ米国雇用統計に敏感になってアメリカ経済の最新状況を把握しておきましょう。
参照
https://www.bls.gov/news.release/pdf/empsit.pdf