このコーナーではアメリカの人事関連の情報や、ビザ等アメリカで働くために有益な最新情報を発信しています。今回は、Pacific Dreams, Inc.の酒井氏による「2020年 日系企業にとってのHRベストプラクティス」をお届けします。是非、参考になさってください。
【アメリカ人事・労務関連】
2020年 日系企業にとってのHRベストプラクティス
新しい年の初めに今年1年にわたるベストプラクティスについて考えてみるのは悪くないことだと思います。いろいろな方面でそれぞれのベストプラクティスがあるものかと推測されますが、私はアメリカで日系企業のHR(Human Resources)をご指南させていただいている立場の人間として、表題にある今年2020年における日系企業のHRベストプラクティスについて今回書いてみたいと存じます。
日系企業の置かれている現場はアメリカ国内の中にあるものと考えますので、まずはアメリカという異文化の土俵の中でも十分通用し、さらに外部一般の評価からしてみても一目置かれるHRのプラクティスとは日系企業からするといったいどんな方向性のものになるのでしょうか。今までHRに関するトレーニングやセミナーを日系企業で働く幹部社員や管理職の方々、そして社内HR担当者の多くに提供してきた経験から、やはり日本式の仕事のやり方を押し付けない、さりとて日本のやり方のよいところは踏襲する、そして日本以外のやり方には常にオープンマインドで取り組んでいくという姿勢にあるのではないかと考えるようになりました。
日系企業で働く多くのアメリカ人従業員向けに行う異文化セミナーの中で、彼ら彼女らが異口同音に日本人の上司や同僚に対して必ず口にする言葉は、「礼儀正しさ」「勤勉」「チームワーク」のほぼこの3つに集約されます。これらはすべて日本人の持つ美徳とするものですが、だからといってアメリカ人にそのまま押し付けてよいものでもなく、彼らにも十分付いて来てもらえるように丁寧に指導していくことが重要であり、また自然なやり方であるかと察します。特にこれら3つの中で、「礼儀正しさ」、英語では ”Civility” と申しますが、最近アメリカでは現政権トップを反面教師として、このCivility の大切さが職場環境の中でもよりいっそう強調され、支持されるようになりました。Civility の反対語は ”Incivility”(無礼、無作法)で、Incivility が常態化しているような職場ではセクハラやパワハラも横行していることが知られています。
さらにIncivility である職場では、48%の人が仕事にかける労力を意図的に減らす、47%の人が仕事にかける時間を意図的に減らす、そして38%の人が仕事の質を意図的に下げるという調査結果がジョージタウン大学のクリスティーン・ポラス(Christine Porath)教授の著書(”Think Civility”)の中で語られています。まずは職場から礼節の欠ける無礼な行為を排除していくことが何よりも会社の業績を伸ばす上でも、そしてハラスメントのない健全な職場作りにおいても最優先すべき施策であることがお分かりかと思います。この施策の遂行を推進していくことこそがまさに今年のHRベストプラクティスの最初の提言となります。
もうひとつ考えたいのがオープンマインドとしてアメリカのよいやり方を日系企業の中でも自発的にそして積極的に取り入れていくという努力方針です。日本とアメリカでは、国の成り立ちや歴史も大きく異なりますし、法律体系にも根本的な違いが横たわっています。現実的には、そこに日本の尺度を持ってきたり、概念的な違い、とりわけ性別や性的指向、宗教や年齢の違いなどについて、日本ではあまり深く考えなくてもよいような場面であっても、アメリカではそれがひとつ間違えると法律違反として訴訟にまでつながるリスクが存在することに十分な注意を喚起する必要があります。特に採用面接で行う質問内容などについては事前にチェックを行い、法律上問題がないかどうかを確認する慎重さがあってよいと考えています。
最後にですが、現在の政権がアメリカで今後とも続く限り、連邦上での雇用に関する法令提出などの動きは緩慢で優先順位としては決して高くないものだと申し上げることができます。しかしながら州単位としては話は違い、連邦とは大きな差がそこにあります。多くの大都市を抱え全米で人口のもっとも多いカリフォルニア州はもともと民主党の強い革新的な州です。その州が先頭となって、今後とも斬新でユニークな雇用に関する州の法令が頭角を現すであろうことがほぼ確実に目されるわけです。それらの法令はいずれ他州でも議会で採決されていくでしょうから、カリフォルニア州に会社オフィスが無くとも他山の石として、いまから社内のポリシーの見直しや追加、従業員ハンドブックのレビューなどを小まめに行っていくことが肝要であり、変わらぬベストプラクティスであることを申し上げたいと存じます。
Ken Sakai
President & CEO
Pacific Dreams, Inc.
kenfsakai@pacificdreams.org
【執筆者ご紹介】
酒井謙吉氏(Ken Sakai)
President & CEO
Email :kenfsakai@pacificdreams.org
※記事に関するお問合せは上記までお願いいたします。
【酒井謙吉氏プロフィール】
信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。
【HRマネジメントセミナーのご案内】
2020年1月28日、29日、30日にニューヨークのマンハッタンにあります Tenri Cultural Institute(43-A West 13th St. New York, NY 10011)にて、日系企業向けHRマネジメントセミナーを開催します。ぜひともご参加ください。セミナーの詳細、お申込みにつきましては、「2020年1月、ニューヨークにおいてHRマネジメントセミナーが開催されます」をご覧ください。
1月28日(火)
12:30 PM – 3:30 PM
<日系企業の人材経営にとって欠かすことのできない>
従業員への人事評価と目標管理の取り組み
1月29日(水)
[午前の部] 10:00 AM – 12:00 PM
<NY州とNY市が定める法令に基づいた>
社内セクハラ防止トレーニングセミナー
[午後の部] 12:30 PM – 3:30 PM
<最新の法律にキャッチアップするための>
2020年雇用法と移民法アップデート
1月30日(木)
12:30 PM – 3:30 PM
<専属HRマネジャーのいない日系企業向け>
スモールオフィスにおけるHRソリューション
◎場所:Tenri Cultural Institute
43 A West 13th, New York, NY 10011 (Between 5th and 6th Avenue)
◎定員:先着15名様
◎対象者:企業経営者、上級管理職、人事担当マネジャー、総務マネジャー、営業マネジャー
◎受講料:午前のセミナー お一人様 $100 / 午後のセミナーお一人様 $150
※セミナーのお問合せ、お申込みは下記までご連絡ください。
QUICK USA, Inc.
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
●クイックUSAでは人事・労務関連のご相談にも応じております。
クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、
人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
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Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
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