このコーナーではアメリカのHR関連の情報やビザ等アメリカで働くために有益な最新情報を発信しています。今回はアメリカでの食事接待で覚えておきたい8つのポイントについてご紹介します。
【第43回】アメリカでの食事接待で覚えておきたい8つのこと
アメリカにおいても接待はクライアントとの関係性や交流を深めるために、大切な役割を果たしています。アメリカではスポーツ観戦、スポーツジムでのジム接待等変わり種の接待もありますが、基本的には食事にお招きするという食事接待がやはり主流です。せっかくの機会でマナーや常識をはずしたら逆効果になってしまいますので、慣習やマナーは憶えておきたいものですね。そこで今回は、アメリカでクライアント等と食事をする際に注意しておくべく点についてまとめてみました。
- 宗教上の食事の制約を理解しておきましょう
- 個人の習慣、病気、アレルギーなどによる食事の制限について
- 食の好みをできれば普段の会話から探っておきましょう
- 目的に合わせたレストラン選びをしましょう
- レストランでは欧米のマナーに従いましょう
- ドレスコードは事前に確認
- ワイン選びはスマートに
- 相手の時間を尊重し楽しい時間を過ごしましょう
1.宗教上の食事の制約を理解しておきましょう
アメリカでは様々な宗教を信仰している人達が暮らしています。それぞれの宗教で、禁じられている食品や飲み物があります。ただし、宗教上の制約が決められているにしても、個人個人の考えもありますので、詳細についてはご本人に確認するようにしてください。
まず、イスラム教には「ハラール(許される行為や物)」と「ハラーム(禁じられた行為や物)」という規範があり、食物に関しても「ハラールフード」と「ハラームフード」があります。「ハラームフード」はイスラム教で禁じられている食物のことを言います。
イスラム教で禁じられている代表的な食物は、豚肉、ハムなどの豚肉の加工品、豚のエキスの入ったスープなどです。イスラム教では、豚は雑食性で不衛生な環境で飼育されることもあるため、不浄な動物として禁じられています。ミート類でも鶏肉、牛肉、羊肉などはハラールですが、ハラールの飼料で飼育されていること、供養の儀式にのっとって処理されたものであることなどが条件とされています。また、魚、野菜、果物などは天然のものであることとされています。
また、イスラム教ではアルコールは一切飲むことが禁じられています。イスラム教の方をお招きする場合には「とりあえずビール」「ビールで乾杯!」などはもっての他ですね。アルコールではビール、ウィスキー、ワイン、日本酒などすべての飲用アルコールが禁止されています。また、気をつけなければいけないのが、原料にアルコールが添加されている調味料も禁じられています。みりんや酒類の入った醤油などの調味料で料理されたものも厳禁です。
インド系に多いヒンドゥー教徒は牛肉を食べません。ヒンドゥー教では牛を「聖なるもの」としているためです。肉そのものだけではなく、エキスや脂肪などが入っている食物も禁じられています。ブイヨン、ゼラチン、バター、ラードなど調理にも使えませんので注意しましょう。ヒンドゥー教ではベジタリアンの方が多いですが、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ等の匂いの強い野菜は基本的に食べないということも覚えておきましょう。また、ヒンドゥー教では出身カーストによって異なるルールをもっています。高いカースト出身者ほど、肉食を避け、卵や魚、アルコールを一切食べない人もいるので気をつけましょう。
アメリカでは、レストランの入口やスーパーでKocher(コーシャー)と書かれた看板を見かけることがあります。ユダヤ教でも食べてよい食物と食べてはいけない食物が定められています。ユダヤ教では豚肉、エビ、カキ、タコ、イカなどの甲殻類も食べません。牛肉などのお肉も血液の抜き方など規律に則った処理をされている食品のみを食べます。
2.個人の習慣、病気、アレルギーなどによる食事の制限について
アメリカでは宗教上の理由からではなく、動物達の命を守りたい。健康のためにという理由からベジタリアンになる方もたくさんいらっしゃいます。ベジタリアンとはご存じの通り菜食主義者です。牛乳を飲んだり卵を食べたりしますが、肉類と魚類は一切食べません。
またベジタリアンに加えて牛乳、乳製品、卵、ハチミツなどの動物性食品を一切食べないというビーガンの方もいます。ベジタリアンのレストランはよく見かけるようになりましたが、ビーガンのレストランはまだまだ数は少ないので、ビーガンの方とお食事をすることになった場合には、早めにお店のリサーチをする必要があるでしょう。さらにベジタリアン、ビーガンの他に肉類は一切食べず魚介類を食べるというぺスクタリアンの方もいらっしゃいます。
アメリカでは「グルテンフリー」と書かれた看板も店先でよくみかけるようになりました。小麦、大麦、ライ麦などに含まれているグルテンというたんぱく質に反応する自己免疫疾患をもっている方がいらっしゃるため、グルテンフリーの食品を提供するお店が増えています。
食物アレルギーのある方と一緒に食事をする場合には、最も注意をしなければいけません。アメリカに限りませんが、卵、牛乳、小麦、ピーナッツ、甲殻類、果物などにアレルギーのある方が大勢います。アレルギーの深刻さについては人それぞれですが、命にかかわるケースもありますので、注意が必要です。
また、アレルギーの他に糖尿病や腎臓病などで食事制限をしている方もいらっしゃいます。ご本人に聞きづらい場合には、秘書の方や同僚の方にさりげなく教えてもらうのも一手かと思います。
3.食の好みをできれば普段の会話から探っておきましょう
クライアント等と一緒に食事をする際、相手の方の好きなメニューであればさらに食事の場が盛り上がること間違いなしです。接待する際に、日系企業だからとお寿司などの日本食のメニューでおもてなしをしたいと考える方は多いかと思いますが、ナマの魚が苦手な方も大勢いらっしゃいます。新鮮な魚をご馳走したいと活け造りを外国人の方に提供したところ、残酷な虐待と立腹されてしまったという失敗談を聞いたこともありますので気をつけましょう。
4.目的に合わせたレストラン選びをしましょう
食の好みも大切ですが、目的に合わせたお店選びをすることも大切です。ビジネスのための会食なのか、親しい方との親交をより深めるための食事なのか、用途に合わせたお店を選ぶ必要があります。ビジネスが目的で取引先などをおもてなしする場合には、雰囲気やサービスのよいお店を選ぶ必要があるでしょう。騒がしいお店だと大切な話がよく聞こえないという失敗も招きますので気をつけたいものです。相手によっては個室を予約したほうがよい場合もあるでしょう。また、人数に限らずレストランは必ず予約をして出かけましょう。
5.レストランでは欧米のマナーに従いましょう
接待のメンバーに女性がいる場合には、レディーファーストを忘れないでください。お店のドアやエレベーターのドアは男性があけて、女性を先に中に入れます。テーブルでは男性が椅子を引き、女性を座らせるようにしましょう。
日本ではアルコールを相手の方のグラスにお酌するという習慣があります。相手の方のグラスが空にならない様、絶妙なタイミングでお酒をつぐことは“できる”ビジネスマン・ウーマンの基本中の基本です。一方アメリカでは、会社の飲み会でも接待でもお客様や上司のお酒をつぐことは一般的ではありません。アメリカでは、テーブルごとにウェイター・ウェイトレスがつきますので、アルコールを注ぐのも彼らの仕事となります。アメリカでは自分でアルコールをつぎたすか、お店の人にお任せしましょう。また、アメリカではお酒をつぐのは男性の仕事ですので、女性の方はお酒をつぐことはしないようにしましょう。
何かウェイターやウェイトレスさんに用事がある時は、アイコンタクトで知らせるか、テーブルの近くに来た時に「エクスキューズミー」と声をかけてください。決して遠くの方から大声で叫ぶのはやめましょう。マナー違反です。また、アメリカで生活している方は大丈夫かと思いますが、精算の際にはチップを忘れないようにしましょう。
アメリカでは21歳以上でないとアルコールの飲酒は禁止されています。レストランやバーでIDの提示を求められることも多いので、写真付のIDを忘れずにもっていくようにしましょう。
6.ドレスコードは事前に確認
アメリカのレストランでは、ドレスコードが決められているところがあります。ドレスコードとはレストランが定めた服装規定のことを言います。厳しいレストランでは入店を断られることもありますので、事前にウェブサイトなどで調べておくとよいでしょう。また、予約の際に電話で聞いてみるのもよいかと思います。
ドレスコードには、一般的にはカジュアル、ビジネスカジュアル、ブラックタイ等があります。カジュアルの場合、男性は襟付きのシャツにチノパンなどのパンツを指し、ショートパンツやスウェットパンツは避けましょう。女性の場合はワンピースやスカート、パンツなどを着用します。ビジネスカジュアルの場合には襟付きのドレスシャツにジャケットを着用してください。女性の場合はワンピースやスカート、パンツ等を着用します。ドレスコードにブラック・タイとなっている場合には、男性はタキシードを着用します。女性の場合はカクテルドレスやロングドレスを着用します。
7.ワイン選びはスマートに
食事にでかけた際に、ワインを選ぶというシチュエーションはよくあります。高級なレストランでは一冊の本くらいぶ厚い立派なワインリストが置いてある場合もあります。ワインの知識が豊富な人であれば別ですが、大抵の人はどのワインがよいか迷ってしまいます。そんな時に頼りになるのがワインのエキスパートのソムリエです。ワインで迷ったら、ソムリエにアドバイスを求めましょう。料理に合うワインを選んでくれるので安心です。
8.相手の時間を尊重し楽しい時間を過ごしましょう
アメリカでは昼食に接待やミーティングを行う「パワーランチ」や「ワーキングランチ」とういう言葉をよく耳にします。「ワーキングランチ」は主に政治家や企業の重役が昼食をとりながら仕事の話をする際に使われる言葉です。「パワーランチ」はアメリカのシリコンバレーの起業家たちが投資家をランチに招いて、プレゼンなどを行ったことから始まりました。現在ではもう少し広い意味で使われ、ランチを食べながら社内、社外の人たちとミーティングをする際に使われています。リラックスした雰囲気の中でより効果の高いミーティングを持つことができること。また、ランチミーティングは食事とミーティングを同時にこなすことで時間を節約することができるこということで人気があります。アメリカでは仕事とともに、家庭やプライベートの時間を大切にする人が多いため、ランチに接待を行うことは、相手の方にも喜ばれるケースが多々あります。相手の方の時間を尊重し、有意義で楽しい時間を過ごすことが一番大切ですね。
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