このコーナーではアメリカのHR関連の情報やビザ等アメリカで働くために有益な最新情報を発信しています。今回は2018年7月1日から施行されるニュージャージー州の均等賃金支払い法についてです。
【第42回】7月よりニュージャージー州で均等賃金支払い法が施行されます。
2018年4月24日、ニュージャージー(NJ)州のフィル・マーフィー知事は均等賃金支払い法(NJ Equal Pay Act)に署名をしました。この新しい法律は、ニュージャージー州で長年政界の要職を務め上げ今年1月にリタイヤされた Diane B. Allen元州上院議員の名前をとって、”Diane B. Allen Equal Pay Act” と正式に命名されました。本法は、2018年7月1日から施行が開始されます。
この法律は、連邦法で2009年に制定されたLilly Ledbetter Fair Pay Act のニュージャージー州バージョンであるという位置付けがなされています。連邦法には1963年に制定されたEqual Pay Act がもともとあるのですが、この法律が規定する均等賃金支払いは男女の性差に基づく賃金格差を禁止したものでしたが、その格差とはもっぱら採用時の賃金に関しての均等でありました。ところが、採用時に賃金の均等が守られていても、その後の昇給や昇格での男女間の賃金格差は野放しの状態が長い間続いていました。それを是正して制定されたのが、Lilly Ledbetter Fair Pay Actで、Lilly Ledbetter さんは、当時グッドイヤーアンドタイヤカンパニーのアラバマにある工場で長年働いていきた元従業員の方でした。
今回のニュージャージー州 Diane B. Allen Equal Pay Act では、男女間という括りだけにとどまらず、ニュージャージー州の差別禁止法であります、Law Against Discrimination(LAD) で差別やハラスメントからのプロテクションがかけられているProtected Class すべてのカテゴリーが本法の対象となっていて、賃金およびベネフィット上での格差を設けることが禁止されます。現在このLADで規定されているProtected Classは次のようなカテゴリーとなります。年齢(18歳から70歳まで)、出身国、心身障害、AID/HIV、ジェンダー、婚姻、妊娠、人種、肌の色、宗教、性的指向、性同一性障害、遺伝子試験情報、軍務経験、遺伝性異常血液細胞、盲導犬使用、失業などとなっています。しかも、採用時のみならず、採用後における格差も同様に禁止される法律となります。
ただし勤務年数、スキルレベル、学歴、職務上でのパフォーマンスなどは合法的な理由として格差を設けることが許されます。本法の時効は6年で、これは従来のLADで規定されていた2年の時効の3倍にも及ぶ設定となっています。その時効は、従業員が自分の賃金に格差があり、それは自分がProtected Class のカテゴリーに属していることが理由だということがわかった時点でカウントが始まるという、「ディスカバリー・ルール」の規定が本法には新たに採用されています。
あらゆる面で従来施行されてきた均等賃金支払い法と比べてみましても、本法はもっとも雇用主側に厳しい規定を課している法律ではないかと申し上げることができます。民主党選出のフィル・マーフィー知事はニュージャージー州をアメリカ国内の中でも雇用において最も先進的な州にすることを表明しておりますので、今後とも雇用主にとってはチャレンジとなる法律が矢継ぎ早やに出されていく可能性が排除できません。この新しいニュージャージー州でのDiane B. Allen Equal Pay Actの法律について詳細を含むセミナーの開催を予定しています。セミナーについて詳しくは下記、QUICK USA, Inc. までお問合せください。
【執筆】
酒井 謙吉
代表取締役
Pacific Dreams, Inc.
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