アメリカで働く人にインタビュー!第17回【料理研究家 たま・バッチャーさん】

ハタラク人にインタビュー!

 

アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、数多くの日本人が活躍しています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをインタビューしご紹介しています。今回はニューヨークで料理研究家として活躍していらっしゃるたまさんにお話を伺いました。

 

 

ニューヨークで働く、料理研究家 

たま・バッチャーさん

 

たまさん

 

Tama Boettcher

Tama’s Kitchen

https://www.facebook.com/TamasKitchen

 

 

生きた食材を楽しんで、心と身体がラクになる生活を!

 


たまさんの現在のお仕事について教えてください。

料理研究家としてローカルの食材を取り入れたイベントを開催しています。イベントは「レイキとお食事を組み合わせたイベント」「大地の恵料理教室」「ファーマーズマーケットツアー」など、心と身体の健康を意識した内容で企画し開催させていただいています。また、依頼があればお料理のケータリングも承っています。

 

 

 

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これまでどのようなお仕事をされてきたのでしょうか?

これまでずっとシェフとして働いてきました。日本で4軒のイタリアンレストランで勤務した後、ニューヨークでフレンチレストランの「ブーレー」とイタリアンレストランの「デル・ポスト」でシェフとして仕事をしてきました。現在のようなフリーランスとしての活動は2009年からとなります。

 

 

 

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シェフになろうと思われたのはいつ頃ですか?

高校生の時にテニスをしていたんですが、とにかくお腹が空いて仕方がなかったので、冷蔵庫にあったもので自分で料理をつくったりしていました。その頃からお料理に興味を持ち始めました。そして、人気のスパゲティ屋さんの料理の本を買ってきて真似してつくったりしているうちに「スパゲティ屋さんをやりたい!」と思うようになりました。高校を卒業した後、調理師の専門学校に入学しシェフになるための勉強をしました。

 

 

 

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調理師の専門学校を卒業した後はどうされたのですか?

卒業後はイタリアレストランに就職しました。当時はイタリアンとフレンチのレストランが流行っていましたので、就職先のチョイスは比較的たくさんありました。働き始めてからは色々と、とても大変だったかと思うのですが無我夢中でとにかく必死に仕事をしていました。中でも一番大変だったのはみんなについていかなくちゃという気持ちで、精神的に大きなプレッシャーを感じていました。

 

 

プレッシャーとは具体的にどのようなことでしょうか?

お店によっては違う考え方のところもありますが、少し大きめのレストランで調理するということは、オーナーシェフの味をみんなで力を合わせて確実に再現するということなんです。経験の浅い自分が失敗してみんなに迷惑をかけてはいけないと、骨を折りましたし、ストレスも感じていました。シェフの仕事は体力勝負のところもあるのですが、幸い私は体力をもち合わせていたので、なんとか乗り切ることができました。

 

 

ニューヨークへいらしたきっかけは何でしょうか?

4軒目のイタリアンレストランで働いていた時にシェフと折り合いが合わず悩んでいたんですね。そんな時店の先輩と話をしていたら、その先輩からニューヨークへ行くことを奨められました。その方はニューヨークのカフェで働いていた経験があって「たまちゃんはニューヨークがあっていると思うよ」と言われたんです。イタリア料理のシェフだったらイタリアでしょうって思いますよね。でも、それからニューヨークでシェフとして働くということが頭の片隅にあって、ニューヨークのフュージョン料理の記事を本屋さんで見かけたりするうちに、真剣にニューヨークへ行くことを考え始めました。

 

 

ニューヨークですぐにシェフになられたのでしょうか?

ニューヨークに来た当初は地下鉄の乗り方もわからず、右も左もわからなかったので、一カ月くらいリサーチしたりしていました。そうしているうちにお金がだんだんなくなってきてしまって。すっごく焦りました(笑)。とにかく何とかしなくちゃと、日本を出発する前に知り合いからニューヨークに住んでいる方の電話番号をいくつかもらっていたので、とにかく連絡してみようと思いました。その内の一人は友人の従妹の方で、こちらでジャーナリストとして活躍していらっしゃる方をご紹介してくださることになりました。

 

 

ジャーナリストの方に会いに行かれたのですね。

はい。その方にニューヨークでお仕事を探していることや、これまでシェフをしていたことなどをお話しました。その後、まずは食事に行こうということで紹介者の方達と一緒に食事に誘ってくださいました。行き先は現在は休業中ですが「ブーレー」というトライベッカにある有名なフレンチレストランでした。

 

 

「ブーレー」でのお食事はいかがでしたか?

その方は「ブーレー」のオーナーのデービッド・ブーレーさんをよくご存じだったので、お食事をしている時に、ブーレーさんがテーブルにご挨拶にいらっしゃいました。レストランに連れて行ってくださった方からは私のことをまだよく知らないので、今回はブーレーさんには紹介しないよと釘をさされていたんですが、ブーレーさんに私のことを紹介してくださり、仕事を探していることやシェフをしていたことなどをお話ししてくださいました。

 

 

ブーレーさんご自身ですか、すごいですね!

日本で調理師の専門学校で勉強したことなどをお話ししたところ、ブーレーさんはちょうど2カ月前に日本にいらしていたということで、話が盛り上がりました。そして、よかったら面接にいらっしゃいと言ってくださいました。

 

 

面接はいかがでしたか?

その頃は英語がまったくしゃべれなかったので、とても心配でした。緊張して面接に行くと、なんとキッチンに日本人の方がいらしてその方が通訳をしてくださったんです。そしてとんとん拍子に、ペーストリーの下準備をするキッチンで働かせいただけることになりました。一年後にはキッチンで仕事をさせていただくようになり、2~3年かけて全ステーションをまわらせていただきました。

 

 

「デル・ポスト」に転職されたいきさつは?

確か私のお誕生日祝いだったかと思うんですが、「デル・ポスト」へ食事に行ったんですね。私は料理研究家のリディア・バスティアニッチさんのテレビの料理番組が好きなのですが、ちょうどリディアさんが「デル・ポスト」にいらしていたんです。その時に彼女はマリオ・バターリさんなどと共に「デル・ポスト」の共同経営者の一人だったということがわかって、「ここで働きたい!」って思いました。「ブーレー」で一緒に働いていた友人が「デル・ポスト」でキャプテンとして働いていたので、なんとか面接にこぎつけるようお願いしたんです。

 

 

そして面接していただけたのですね。

はい。面接の機会を設けてもらいました。そして、実際に「デル・ポスト」のキッチンで一日働いてみるという機会をもらいました。

 

 

実際にキッチンで働いてみていかがでしたか?

キッチンでは、シェフから魚をさばいてみてと言われました。日本では何でもできないといけなかったので魚も肉もさばき方を知っていました。こちらでは魚をさばく人、お肉をさばく人など、役割が決まっているので全部できる人はなかなかいません。シェフの目の前で魚をさばいたところ、その場でOKをもらいました。シェフの仕事は、実際にキッチンで働いてみないとわからないことが多いので、体験としてキッチンで働いてみることは、雇用主にとっても雇われる側にとってもとてもよいシステムだと思います。

 

 

「デル・ポスト」で働いてみていかがでしたか?

「デル・ポスト」は料理、サービスすべての面で一流のレストランですが、働く環境のシステムも整っていましたし、授業員に対する気配りのあるレストランでした。またこのレストランは、ニューヨークで初めてグリーン・レストランとして認定されたお店で、冷蔵庫の節電、エアータオルの使用、コンポスト、揚げ物の油の再利用など地球環境に配慮したシステムを全ステーションで取り入れていました。使用済みの揚げ油を燃料に変えるシステムを取り入れていたんですが、実際にオーナーはその燃料で車を走らせていたんですよ。

 

 

授業員への気配りというのはどういうことでしょうか?

「デル・ポスト」では、常時40人~50人の従業員が一緒に働いていますが、まかないを食べる時にはテーブルを出して、みんなで一緒に食事をしていました。立ってまかないを食べるお店もある中で、みんなでテーブルで食事をするというのは珍しいんです。他の従業員と話をしながら座って食事をすることでコミュニケーションがとれたり、気持ちの切り替えもできました。

 

 

「デル・ポスト」ではどのような仕事をされていたのでしょうか?

「デル・ポスト」でも色々なことを経験させていただきました。ファーマーズマーケットへの野菜の買い出しにも行かせていただいていたんですがとても興味深い素晴らしい経験となりました。買い物リストはあったのですが、その日にマーケットに行って目にとまった野菜を購入して、サラダに加えたりして楽しかったです。「デル・ポスト」ではスーシェフ/ソーシエまで担当させていただきました。

 

 

食材に注目されるようになったきっかけはどのようなことだったのでしょうか?

子どもは3人おりますが、長男は今年で14歳になります。その長男が小さな頃は、とても繊細な子でしたので何か体質等で良い改善策はないかと模索しているうちに、食べ物を変えてみようと思い立ったんです。そして、食材を全部オーガニックにして、ビーガンやベジタリアンの食事法を取り入れてみたりもするようになりました。食材について深く考えることができるようになったのは息子のおかげ。彼からのギフトだと思っています。

 

 

順調に仕事をされてきたようですが、何か秘訣はありますか?

秘訣というか、自分が本当にやりたいと思うことを必死のやろうとしていると自然とサポートが集まってくるものだと思います。ヨガのインストラクターのコースをとりたいと考えていた時に、父が結婚祝いをまだしていないからとコース費用に相当するお祝い金をくれてびっくりしました。ニューヨークで仕事を見つけたいと思っている時にもたくさんの方に助けていただきました。

 

 

本当にやりたいこと見つけて行動することが大切なんですね。

お金がもらえることが仕事と思っている人がいますが、お金がもらえなくても子育てが大好きな人にとっては子育ても仕事だと思うんです。私は仕事とはやりたいことを形にするだけで仕事と言えると思うんです。お金をもらったり、何かに貢献していなければ仕事ではないと思うと前に進めない気がします。自分は本当は何をしたいのか考えると、それが生きがいになりますし、自然と考える方向への流れになってくると思います。夢を実現する過程で必ずサポートも集まってくると思います。本心でないことをすると心と体にひずみが生まれ、爆弾を抱えてしまうこととなり、体調を悪くしたり、身体を壊してしまうことになるのでそれだけは避けたいことですね。

 

 

 

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ファーマーズマーケットツアーについて教えてください。

ファーマーズマーケットを始めたのは、知り合いから「ファーマーズマーケットでの買い物の仕方がわからないので教えて」と聞かれたことがきっかけでした。ファーマーズマーケットには生きた食材があふれています。ツアーでは実際にお店にご案内し、食材の選び方や買った食材の調理方法などをご説明しています。身体が喜ぶ本物の野菜を一人でも多くの人に知っていただき、身体に取り入れてもらえるきっかけづくりとなればとても嬉しいです。

 

 

 

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ファーマーズマーケットの野菜はどう違うのですか?

「激安ですが農薬たっぷりの野菜と太陽をたくさん浴びて人間の手で大切に育てられた土の味のする野菜とどちらを食べたいと思いますか?」。答は簡単ですよね。私は農家に実際に出かけて行ったり、農家の方のインスタグラムをフォローしています。インスタグラムでは畑の状況や野菜の成長の様子を確認することができます。写真からだけでも育てている方の情熱が伝わってくるので、早く食べたいなぁって思ってしまいます。(笑)

 

 

 

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ローカルの食材にこだわっている理由は何でしょうか?

毎日、身体に取り入れる食材が未来の自分の身体をつくっていきます。毎回の生きた食材をとる食事がとても意味のあるものなんです。また、ローカルの農家の野菜等を買うことは、小さなビジネスを応援するということにもなります。大きな金額ではありませんが、未来の子ども達に残してあげたいなと思えることに、投資していきたいと思っています。

 

 

 

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日々の選択が大切なんですね。

毎日のちょっとした違いにフォーカスして生きていくことで、気分よく過ごせるようになると思うのです。食材でも衣類でも、何でも本物を選べば自分の意識が高まります。意識が高まると毎日の生活が変わります。生活が変わると周りに集まってくる人が変わります。波動とも言いますが。自分の思想が変わると引き寄せてくるものも変わってきます。いい思想でいれば、毎日気持ちよく過ごすことができるのです。

 

 

 

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これからやってみたいこと、抱負などありましたら聞かせてください。

今年は一番下の子が学校にあがるので、日中に時間ができるようになります。ニューヨーク以外の州や海外にももっと出かけていきたいと思っています。土地が違うと、育つものも食べ方も違うので、その土地の食材を使って調理をしていきたいです。また、そこに住んでいる方々とたくさん出会って話しを聞いてみたいと思っています。

 

 


 

【取材協力・お問合せ】

Tama Boettcher
E-mail: tamaskitchen.nyc@gmail.com
Blog:  https://ameblo.jp/tama-house/entry-12322809507.html
Facebook Page: Tama’s Kitchen NYC

Instagram: https://www.instagram.com/tamaskitchen/?hl=ja

※次回のイベントを見逃さないためにも、是非たまさんのFacebookに登録してくださいね。

 

 


 

【取材・文】
QUICK USA, Inc.
Kumiko Komoda
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
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