【アメリカの人事部】コロナウイルスに関するQ&A

 

 

 

 

 

コロナウイルスに関するQ&A

 

今回は弊社のクライアントである全米にまたがる日系企業様から実際にお送りいただきましたコロナウイルスに関する雇用上でのご質問をQ&A形式としてまとめてみましたので、皆様にもシェアさせていただきたいと存じます。

 

Q1  体調が思わしくないような従業員が会社に来ていた場合、上司はその従業員の健康状態を尋ねる質問をすることは問題にならないだろうか?

 

→ 単に従業員の兆候(Symptoms)を尋ねるだけであれば、問題にはなりません。たとえば、「熱っぽくないか?」とか、「喉が痛くないかとか? 」です。逆に病名を出して、その病気の罹患を疑うような質問をするのは法律(ADA:  Americans with Disabilities Act; アメリカ人障害者法)で許されていません。

 

 

Q2  コロナウイルスに感染した従業員が呼吸困難になって病院に入院して検疫隔離となった場合、そのことを他の従業員にも伝えてよいであろうか?

 

→ このような場合では、感染がわかった段階で、職場で他に濃厚接触者がいたかどうかを医療検査機関で問われることになり、発覚した社内の濃厚接触者がいれば、同じく14日間の自宅での検疫隔離の措置を受けることになります。そのため、該当する従業員には会社として伝えなければならない義務を担います。

 

 

Q3  州からの外出禁止命令でお店を当分クローズしなければならない事態となり、ほとんどの従業員を一時帰休(レイオフ)による自宅待機とした。それら従業員に対して最大10日間、80時間までの緊急有給シックリーブ(EPSL: Emergency Paid Sick Leave)を新しい法律に従って提供しなければならないのであろうか?

 

→ 州からの命令で、お店をクローズしたり、工場をシャットダウンした場合は、このESPLは該当にならないと連邦労働省(DOL: Department of Labor)のウェブサイトでは書かれていますので、雇用主はこの新規の有給シックリ-ブベネフィットを一時帰休させた従業員に提供する義務はありません。ですから、代わりに雇用主は自宅待機の従業員に対しては、一時帰休中は州の失業保険をオンライン上から申請するように伝えてください。

 

 

Q4  もしも社内にコロナウイルスに感染した従業員がいて、その従業員から職場でウイルスをうつされて症状が出てしまって自宅隔離になった場合、労災保険(Workers’ Comp)適用の対象になるのだろうか?

 

→ はい、この場合、職場内で勤務中に罹患したということであれば労災の対象になりますので、保険会社に病院での検査結果とともに必要な手続きを取ってください。さらにOSHA(Occupational Safety and Health Administration; 職業安全衛生局)のフォーム301に記録を取り、その記録を保管しておかなければなりません。

 

 

Q5   65歳以上で何らかの慢性疾患をもつ人のコロナウイルス感染リスクが高いということで、自社で働く65歳以上の従業員に対して一律自宅待機命令を出してもそれは年齢差別にあたらないであろうか?

 

→ 65歳以上の人であっても慢性疾患とは縁のない健康な従業員もいるはずですので、年齢だけでの線引きをして一律強制的に自宅待機命令を出すというのは、やはり年齢差別を禁止しているADEA(Age Discrimination in Employment Act; 雇用年齢差別禁止法)に抵触する可能性が高いと思われますので、強制することはできないと思われます。また、慢性疾患をもっているかどうかという質問を従業員にすることは法律(ADA:  Americans with Disabilities Act; アメリカ人障害者法)に抵触することになりますので、すべきではないと申し上げられます。

 

 

Q6   コロナウイルスに感染した従業員を会社はそれを理由に解雇することはできるのだろうか?

 

→ コロナウイルスに感染した従業員はその時点で障害者となったという解釈が成り立ちますので、障害をもったことを理由に解雇するということは、まさしく障害者差別となり、それはADA(Americans with Disabilities Act; アメリカ人障害者法)違反にあたる行為となります。雇用上での障害を理由にした解雇を含む職場での差別は法律で厳しく禁止されています。

 

 

Q7  オファーレターにサインをすでに取り交わした採用予定者に対して、コロナウイルスの影響のために雇用を延期あるいは取り消しすることは可能であろうか?

 

→ この質問への答えはイエスです。つまりオファーレターというのは契約書ではないので、状況如何によっては延期や取り消しは可能だということです。通常オファーレターの中には ”At-Will” の雇用であるという記述が含まれていますので、それでできることになります。その場合、コロナウイルスの影響で採用を延期されたり取り消された採用予定者の人は、特別に州の失業保険の申請をすることができるかもしれません。まずは、州のウェブサイトにいかれてみて、そのような失業保険申請ができないかどうか、確かめてみてください。各州ではコロナウイルスのための何らかの失業保険特例プログラムを用意してくれています。

 

 

Q8   弊社はエッセンシャル・ビジネスで物流倉庫を毎日稼動させている中で、自身の感染リスクを心配して自宅勤務の希望を申し出る従業員が何人か現れたが、倉庫に来なければできない業務ばかりなのでそれら希望はみな基本的に断っている。そこで、中にはコロナが終息するまではしばらく出社を見合わせ自宅待機するという者が出てきたが、そのような従業員にも会社は今度の新しい法律である緊急有給シックリーブ(EPSL: Emergency Paid Sick Leave)および拡大家族休暇(EFML: Expanded Family and Medical Leave)を提供しなければならないのであろうか?

 

→ この場合は、緊急有給シックリーブも拡大家族休暇もそのどちらも適用にはなりません。通常の会社からのシックリーブや有給休暇(PTO: Paid Time-Off)を使うようにしてください。それらを使い切ったあとは無給での自宅待機を許すことになります。無給の自宅待機中もこのような状況下では失業保険の対象にはならないはずですので、そのことをくれぐれも誤解のないように従業員にはクリアにお伝えください。

 

 

Q9   CARES Act (Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act: コロナウィルス援助救済経済保障法)によると、連邦から失業者一人あたり毎週$600 の追加失業手当てが最長4ヵ月間出されると聞いたが、弊社の従業員の多くは最低賃金に近い給料で働いている者も多く、このような手厚い失業手当が出れば、通常働きに来ているときよりも好待遇となってしまうが、本当にそんなことが許されるのか?

 

→  はい、失業した従業員に対する連邦からの週$600 の追加失業手当は本当で、確かに州からもらう失業保険とあわせたら、おそらく最低賃金以上の失業手当を毎週もらえることになる人も数多く出てくることが予想されます。失業保険や失業手当てはその代わり、再就職したり職場に再復帰したら当然支給はそこで打ち止めになります。今回はことほどさように手厚い保障が政府から提供されますので、一時帰休や解雇した従業員には公的セーフティネットの存在があることを説明し、パニックになったり必要以上に心配しないように伝えてください。

 

 

Q10 今度の新しい法律である緊急有給シックリーブ(EPSL: Emergency Paid Sick Leave)および拡大家族休暇(EFML: Expanded Family and Medical Leave)は従業員数500名未満の企業が対象ということであるが、従業員が全部で5名しかいない弊社のような零細企業も本当に従わなければならないのか?

 

→ はい、答えはイエスです。ただし50名未満のスモールビジネスに関しては、今回の緊急有給シックリーブおよび拡大家族医療休暇の提供により「事業の継続可能性が脅かされる(Jeopardize the viability of the business as a going concern)」という要件を満たす場合には、学校または託児施設の閉鎖や子供の預け先の確保が不可能という理由」によるそれら有給休暇提供に対しての提供義務が免除(Small Business Exemption)されるとなっています。

 

 

この記事に関してのご質問は、Pacific Dreams, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。

 

 


【執筆】

Pacific Dreams, Inc.

President & CEO

酒井謙吉

Ken Sakai

8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070

www.pacificdreams.org

Email : kenfsakai@pacificdreams.org

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【酒井謙吉氏プロフィール】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。

 


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