オフィス再開に関する一問一答
オフィス再開に関する雇用上での質問をQ&A形式としてまとめました。回答者はPacific Dreams, Inc.の酒井氏です。
Q1.職場のDeep Cleaningを実施する責任は誰が負うのでしょうか?雇用者か、会社がテナントとして入っているLandlordでしょうか?
→ この場合、雇用者になります。
ただし、各テナントが共有して使っている玄関や受付、トイレ、エレベーターなどのクリーニングは、テナントの責任で行ってもらうことになります。
Q2.マスクやハンドサニタイザー、ワイプなどを提供するのは雇用者の義務でしょうか?
→ 職場でマスクを付けることを従業員に要請するのであれば、雇用者の義務としてマスクを提供しなければなりません。サニタイザーやワイプも、雇用者の提供義務となります。
ただし、NY州ではエッセンシャルワーカーの場合には、業務におけるマスク着用が義務付けられていますので、雇用者の責任としてマスクを必ず支給しなければなりません。
Q3.PCR検査で陽性でも症状がない場合は出社できますか?
→ エッセンシャルビジネスにおけるエッセンシャルワーカーの場合、職場でのPPEの常時装着と最低6フィートのソーシャルディスタンシングが守られているという条件が常に堅持できるのであれば、Yes です。ノンエッセンシャルビジネスの場合は、出社はできません。
Q4.出勤前に自宅で体温測定を行い、発熱のある社員には出社させないといたしますが、何か気をつける事はありますか?
→ その場合、いちおう検温結果を会社に連絡するようにさせるのがよいかと察します。
ただし、その際に気をつけることとしては、検温結果は個人のプライバシーにかかわる医療情報の一部になりますので、結果の管理は従業員の他の人事ファイルとは別のファイルに別けて入れ、機密が守れる管理体制を引くことが必須です。
Q5.オフィス出社を要請しても通勤時を含め自宅待機を続けたい社員がいます。どのように対処すればよいでしょうか。
→ ADA(Americans with Disabilities Act; アメリカ人障害者法 )で規定されている Interactive Process(相互対話方式)のプロセスをとり、会社と社員の対話をまずは試みてください。
会社としては、社員から自宅待機を続けたい旨の正式なリクエストを出してもらいます。
そのリクエストには、たとえばメンタルヘルスのことや基礎疾患(持病)の要因があれば、医師からの診断書を添えてもらうのがベストですが、コロナ感染防止のために医療機関に行くこと自体が難しい場合は、医師の診断書提出の強要はすべきではなく、経済再開に伴って医療機関もリオープンになった時点で、診断書提供の依頼をあらためて出していただければと思います。
Q6.復職を要請しましたが、失業保険受給額が多く、今は復職したくない。という社員がいますが、どのように対処すればよいでしょうか。
→ 会社からの復職要請に従わず、明確な理由が無く復職しない従業員は失業保険をその後も継続して受け取ることは不正受給となります。そのことを当人にまずは伝えて再度、復職を促してください。それでも復職しない従業員に関しては、会社はその従業員の名前を運営している州当局に報告を出すことにより、失業保険の支給は停止され、さらに状況によっては、不正受給額の払い戻しやペナルティが州当局から従業員に課せられることとなります。
Q7.勤務中にコロナ感染の症状が出た従業員に対しての措置を教えてください。
→ まず、職場から自宅に戻ってもらい、安静にしてもらってください。できれば、すぐにウイルステストを受けてもらってください。そしてウイルステストの結果がわかるまでは推定陽性という前提の下に自宅隔離をしてください。陽性であれば、症状が出てから14日間の自宅待機後に再度2回にわたるテストを受け、2回とも陰性の結果が出て初めて職場復帰ができます。陰性の場合は、症状が緩和し、発熱が解熱剤を使わず3日間なく、症状が出てから7日以上経過した段階で職場復帰してください。
Q8.社員と同居するパートナーが日々にコロナ感染者と接するFirst Responderの場合は、その社員をどう扱えば良いですか?
→ First Responder の人は定期的にウイルス検査を受けているのではないかと思われます。その結果が陰性である限り、その人を他の従業員と別けて特別扱いすることは差別であり、してはなりません。
Q9.Welcome acknowledgment レターがないと仕事復帰を始めてはいけないですか?
→ 特に法律で義務付けられていることではないですので、レターが無ければ復帰できないというわけではありませんが、従業員に安心感および会社への信頼感を与える上で、作成されるのが良いでしょう。
Q10.社員間の感染、もしくは来客者が私たちの社員から感染してしまった場合、法的に責任を追求される可能性はありますか? 法的な責任がなくとも、what are the recommended actions we should take in a case like this?
→ どの州かでこの対応は違ってきますので、一概に言うことはできません。ただし、仮に法的に追求されても、現実的に貴社の社員から感染があったのかを証明するのは非常に難しいと考えられます。アメリカですから訴訟されることは絶対にないということはいえませんが、このようなケースで訴訟になることはきわめて稀な事例となることは想像に難くありません。
Q11.テレワークでの勤務が可能である場合でも、会社がAccommodateせず、いきなりレイオフをしても問題ないでしょうか?
→ 会社の経営が立ち行かなくなるようであれば、レイオフをしてもそれは正当(合法的)な理由として基本的には問題になりません。
Q12. Office 共有スペース(トイレ、ランチルーム、ミーティングルームなど)の清掃は、当番制で社員にさせても問題ないか?社員は拒否する権利はあるか?
→ 問題ありませんが、会社としては、Job Description にそれら清掃の業務を書き入れた改訂した新たな Job Description を渡してサインさせることをお奨めします。
このプロセスをとることによって、従業員は基本的に清掃を拒否することは難しくなります。
Q13.日本出張は、企業保険が効かないと2月から言われていますが、米国内の一般論は?
→ 一般論は、従業員に各州での緊急事態宣言が解除になるまでは米国国内の出張はさせてはならないということです。そのような緊急事態宣言中の米国出張については、保険会社は Force Majeure(不可抗力)を理由に、保険の適用を認めない公算が非常に高いと考えられます。
Q14.客先訪問リスクを指数化したいです。車と飛行機の違いなどありますでしょうか。
→ どちらも州の緊急事態宣言が出ている間は、客先訪問は従業員および客先をともに感染リスクにさらすことになり、決してさせるべきではありません。客先訪問させるのではなく、ビデオ会議や電話でご対応するようにしてください。
15. Employer’s liability in terms of the new Workers’ Comp rules (EO N-62-20)について解説をお願いします。
→ 従業員に感染者が出た場合、会社の入っている労災保険(Workers’ Comp)を適用できるように会社は保険の申請をすることができるということです。これは今のところ、CA州知事から出された新たな Executive Order です。(この経過を見て、他州でも追随するところが近い将来出てくるかもしれませんが)
Q16.従業員の中でCOVID-19 の感染者が出た場合、過去14日以内の職場での濃厚接触者とはどのような定義にあたるのであろうか?
→ 6フィートのソーシャルディスタンシングがとれておらず、なおかつマスクなどのPPEが付けられておらず、15分以上にわたって接触があった場合には、濃厚接触(Close Contact)があったと考えられますので、それが濃厚接触者の定義になります。
Q17.同じく感染者が職場で出た場合、職場のDeep Cleaning を行うことはわかったが、その後やはり14日間は職場は閉鎖しなければならないのであろうか?
→ 感染者の出た職場はいったんその段階で閉鎖として、すぐに Deep Cleaning を行う段取りを取ります。Deep Cleaning が終われば、その次の日から職場は再開してかまいません。
(特にDeep Cleaning 後の閉鎖継続についてはCDCでは何も規定していません)
Q18.従業員だけではなく、会社訪問者全員に検温することはできるのだろうか?またそのときにとった記録は、保管しておくべきだろうか?
→ はい、できますので、前もって訪問者にはそのことを伝えておくことが望ましいかと思います。そして検温に関する同意書にサインしてもらうことがやはり望ましい手順となります。
検温した結果は、会社で保管できますが、個人の医療情報になりますので、機密情報として厳密な管理体制の下に保管することになります。
この記事に関してのご質問は、Pacific Dreams, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。
【回答者】
President & CEO
酒井謙吉
Ken Sakai
8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070
Email : kenfsakai@pacificdreams.org
Phone: 503-783-1390
【酒井謙吉氏プロフィール】
信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。
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No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ
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