2021年は2.6%昇給すべきか?
■報酬調査について
報酬の決定は社内公平性と社外競争力の2つの視点から考えるとよく言われる。通常であれば、社外競争力については、消費者物価指数の動向や報酬調査による昇給予想率等を参考に自社の標準的な昇給を決めるというプロセスになるはずだ。
しかし、2021年はCOVID-19の影響もあり、報酬決定の舵取りが難しいと言わざるを得ない。これは米国の各企業でも同じだろう。
2020年4月〜5月に行われたWorld at Workの調査では2021年の平均予想昇給率は2.9%という数字が出ていた。
▼下記の動画も参照のこと
10月7日に出された大手人事コンサルティング会社Willis Towers Watsonのレポートによると2021年の昇給率の平均は2.6%という数字が発表されている。
▼出所
Executiveの昇給率は2.5%で、一般のスタッフより0.1%だけ昇給率が少ない。
このレポートは9月に行われた調査で現れた結果だが、春先に行われた調査に比較して35%の企業が昇給率を減少させているとのことだ。多くの企業が先行きの不透明感ゆえに昇給率を決定するにあたり、迷いを見せているのが分かる。
同じ調査において66%の企業は2021年もボーナスの支給を予定していると発表している。
■報酬制度の設計について
一方で米国人材マネジメント協会のニュースでは報酬設計自体はCOVID-19の中でも据え置きをしている企業が多いというニュースも出ている。
▼出所
そのため、報酬設計自体は下記のように固定給の一定のパーセンテージを設定して、変動報酬を支給することが考えられるが、先行きが不透明な時代にはできる限り固定費(固定賃金での昇給)の拡大を抑え、人件費の変動費化を図ることが考えられる。つまり会社と個人の業績・成果によって、報酬を変動させることができるように設計するということだ。
▼出所
■御社の労働分配率は?
このような環境の中、改めて人件費を管理するにあたり、粗利に占める人件費の割合いをチェックしてみることも大切だろう。御社の労働分配率(労働分配率=人件費÷粗利)はコロナ前とコロナ後で変化があるだろうか?
コロナ前の労働分配率を維持した上で、2021年の昇給やボーナスの計画を立てる際、「コロナ後に売上が下がる中、どの程度の人件費を見込むか」という計画には労働分配率を再度チェックすることが考えられる。
■報酬と動機付けについて(新しいインセンティブの仕組みは登場するか?)
最後に、報酬と成果の関係を考えるにあたり、約10年前のダニエル・ピンクのTedでの講演動画をご紹介しよう。
▼
動画でも語られているように、回答が決まっているような仕事はインセンティブによって仕事の成果も上がるが、クリエイティブな仕事はインセンティブを与えることではなかなか成果が上がらない。逆に成果が下がることが分かったという。
クリエイティブな仕事に必要なのは、自主性・成長・目的と言った「個人が仕事に見いだす意味」が重要なのだ。動画で事例が紹介されているようにWikipediaやLinux等、無報酬ながら参加するメンバーによる貢献によって成り立った素晴らしい仕事がある。「馬にニンジンをぶらさげる」方式のインセンティブではこのようなクリエイティブな仕事は成り立たなかったというのだ。
このダニエル・ピンクのTedを思い出させたのは3年前にTedで話されたAdam GrantのGive & Takeだった。
▼
与える人ほど成功するというこのコンセプトについて、組織のインセンティブの仕組みをどのように考えたら良いだろうか?
ダニエル・ピンクのTedから10年。この時に既にビジネス界のインセンティブは発見された事実と乖離していると言われている。
2021年、ビジネス界はようやく新しいインセンティブの仕組みをもっと積極的に導入することになるだろうか?
今回も御覧いただき誠にありがとうございます。
引き続き皆様の安全と健康、そして、可能な限りのビジネスの再興をお祈りしております。
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【執筆】
Philosophy LLC 代表
山口 憲和
Norikazu (Kazu) Yamaguchi,
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