失業保険の不正受給
ここ3ヶ月以上にわたって毎週ほぼ100万人以上の失業保険申請が全米で続いています。1930年代の世界大恐慌以来の未曾有の大失業時代がコロナのパンデミックで突然到来してしまいました。オフィスや店舗の閉鎖で一時帰休やレイオフにあった従業員は一斉に失業保険の申請に走っています。失業保険そのものは本来各州ごとに運営されているものですが、このような事態を見据えてアメリカの連邦政府が早々と追加支援措置を講じ、4月から州の失業保険給付にプラスされて毎週$600があわせて支給されるようになりました。ただしこの措置は今月(7月)いっぱいで終了することになっていますので、最後の追い込みをかけて失業保険申請に乗り出す人もまだまだ大勢出ています。
このような失業保険給付の大判振る舞いが行われている今回のコロナ経済下におきましては、国や州の緊急事態発令に便乗して、失業保険を不正に受給する詐欺的行為もかつてないほど激増しています。また悪意はないにしろ、失業保険制度の趣旨を理解せずに本来受給すべきではない状況下になっても受給を続けようとする元従業員も散見されます。しかしながら、意図的であるにせよないにせよ、失業保険の不正な受給は立派な犯罪行為であるとして、発覚すれば罪に問われ、不正給付の全額返済ならびにペナルティ、さらに悪質であった場合は、刑事罰に処せられ、収監される憂き目にあうことにすらなります。
コロナのために会社経営が傾き、従業員を一時帰休またはレイオフ(解雇)した場合には、その直接のあおりを受けた従業員は通常、失業保険給付資格を持ちます。一時的にせよ仕事を失った従業員は、自分で失業保険を取り扱う州の行政機関にオンライン上で失業保険の申請をまずは行います。その申請に対して、州機関は元雇用主の会社にレターを送り確認を取ります。もしそのレターに書かれてある内容が事実と異なる場合には、会社はアピールとしてそのレターに事実を書いて州機関に返送します。もし、事実が書かれてあれば会社は何もする必要はありません。
ここの部分で特に確認していただきたいのは、会社を辞めた理由についてです。その理由が会社都合の理由であったのか、あるいは従業員の自発的な退社であったのかで、失業保険の給付資格が変わってまいります。つまり、会社都合での理由であることが給付資格の上で必要であるからです。(コロナ禍では会社都合、本人都合以外に本人、家族の罹患などによる「その他の理由」に起因する場合もあります)現実には自己退職した元従業員もダメもとであるかどうかはわかりませんが、とりあえず申請を出す人が数多くいます。それをそのまま放置しておくと、会社は事実を認めたという判断をされ、失業保険給付が認められることになります。そのようなことが積み重なってまいりますと、会社が州に納めている毎年の失業保険税のレート上昇に跳ね返ってくることになります。失業保険は保険のひとつでありますから、使うほどにその保険料、つまり保険税率は上がってしまいます。失業保険税は基本的に会社が100%支払っており、従業員の負担はありません。
さらにIDセフトと呼ばれているのですが、従業員の個人情報を盗んで、その本人になりすまして、失業保険申請を出して給付を得ているという詐欺的行為も手口として顕著になってきています。中にはプロの詐欺的集団組織が裏で暗躍していて、個人や会社、さらには州政府機関にハッキングやシステム攻撃を仕掛けて情報窃盗を繰り返し、そういった情報が闇のサイトで売買されていたりします。中には、海外からの組織が攻撃を仕掛けてくることがあることもわかっています。巨額の金額が不正受給されている場合には、ほぼプロの詐欺集団の関与によるものだといわれています。
今後とも大失業時代がここしばらくは続くであろうという前提のもとに、巨額の失業保険がアメリカの中で給付され続けることになります。その状況にピンポイントで狙いを絞っている情報武装した火事場泥棒がいるということに対して会社としても細心の注意を払ってほしいと思います。そしてもし、失業保険給付に疑念を覚えたら、あるいは不正の臭いを感じたら、各州で設定されているホットラインまで迷わず電話をしてみてください。また、貴社の元従業員を会社に呼び戻しをして再雇用した場合には、州機関のサイト上でその旨を報告することのできるページがありますので、そのサイトから報告を出して、職場復帰後に失業保険給付が続くようなことがないようにしてください。
最後にもう一度申し上げておきたいのですが、アメリカの失業保険制度は各州で運営されているため、州が異なればその運営方式はすべて異なります。ですから州の数(50州プラスワシントンDCやプエルトリコ、ヴァージン諸島なども)ほど、違った制度となっていますので、対応の仕方は全部異なってまいります。失業保険のご相談をお受けしても対応は個別対応で違ってくるということです。わからないことがありましたら、決してそのままに放置せず、アメリカの失業保険制度に熟知しているHRコンサルタントまでご相談されることをお勧めいたします。
※この記事に関してのご質問は、Pacific Dreams, Inc.まで、お気軽にお問い合わせください。
【執筆】
President & CEO
酒井謙吉
Ken Sakai
8532 SW St Helens Dr. Wilsonville, OR 97070
Email : kenfsakai@pacificdreams.org
Phone: 503-783-1390
【酒井謙吉氏プロフィール】
信州大学卒業後、YMCAでの語学講師などを経て1987年にオレゴンに渡米。当時三菱金属(現:三菱マテリアル)が買収した米国半導体シリコン製造会社に勤務。1996年に退職後、パシフィック・ドリームズ社を立上げ、在米日系企業ならびに米国企業のクライアントを対象に人事管理コンサルティング、マーケティングと異文化コミュニケーションのノウハウを提供している。また全米各地で、毎月日系企業向けの人事セミナーを精力的に展開している。
●「アメリカの人事部」ニューレターのお申込み
クイックUSAは「アメリカの人事部」を発足し、在米日系企業様向けにニュースレターを配信させていただいております。アメリカでビジネスを遂行していくために、必ず知っておかなければならない法律、人事・労務、ビザなどの最新ニュースを定期的にお届けしております。「アメリカの人事部」のニュースレターの受信をご希望の企業様は、下記までお気軽にお申し付けください。
「アメリカの人事部」のニュースレターお申込みご希望の方はお手数ですが、会社名、ご担当者様氏名、役職、電話番号、会社のご住所、E-mailアドレスを明記の上、下記E-mailアドレスまでご連絡くださいますようお願いいたします。
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com
「アメリカの人事部ニュースレター」のバックナンバーをご希望の方は、
E-mail:info-usjinjibu@919usa.com まで、
ご希望のナンバーをお気軽にお知らせください。
【バックナンバー】
No.1 日本の人事について、トランプ政権発足以降のビザ取得の状況
No.2 人事が知っておくべき高額医療/消費者保護法(CCPA)施行/感染症対策
No.3 コロナウィルス拡大で米国CDCも推奨「在宅勤務」について/シックリーブ
No.4 在宅勤務特集/在宅勤務に関するQ&A
No.5 コロナウイルスに関するQ&A/WiFiの規定/より快適な在宅勤務のコツ
No.6 CDC雇用者向けページを確認しよう/After COVID-19の訴訟について
No.7 ポスト・コロナの職場環境/ビザ取得の状況/WEB面接のコツ
No.8 出社への不安という理由/職場再開における適正な準備と手順
No.9 Return to Workのポリシーを作ろう/オフォス再開に関する一問一答
No.10 コロナ禍で考える「評価制度の構築」/ Don’t be silent ~アメリカの人事は差別との闘いであるから
No.11 移民法、雇用調整助成金(ERC)最新情報
【アメリカでのご採用をご検討中の企業様へ】
★採用でお困りなことはありませんか?
クイックUSAでは、アメリカでのご採用のお手伝いをしています。
フルタイム、パートタイム、派遣等、御社のご採用のお手伝いをさせていただきます。
お気軽に下記までご連絡ください。
●人事・労務関連のご相談にも応じております。
クイックUSAではハンドブックの作成・見直し、ジョブディスクリプションの作成、セクハラ防止セミナーの開催など、
人事労務関連のご相談も承っております。内容、お見積りなど何でもお気軽に下記までご相談ください。
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】
★アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。
弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。
www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、
quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。
折り返しご連絡させていただきます。
※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。 雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。 クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)
QUICK USA, Inc.
[Los Angeles Office ](Headquarters)
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[New York Office ]
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
【こちらの記事もおススメです!】
【アメリカの人事部】
・EMPLOYEE RETENTION CREDITの取扱いがアップデートされています!
・感染症(新型肺炎・季節性インフルエンザ)に対し人事部がすべき事
【アメリカ人事・労務関連】
・在宅勤務でどう対応?!マネジメントと評価制度ウェビナー(後日無料個別相談可)
・【無料個別相談】オフィス再開に向けてのコンサルテーション / Quick USA × Key International
・【E,Lビザ】移民法ウェビナー(無料)開催!QUICK USA x S.W. Law Group
・QUICK USA x Kintone【無料】ウェビナー開催!
・HRの専門家に個別相談できるチャンス!「日系企業向けWEB相談会」
・ニューヨークにて「HRマネジメントセミナー」が開催されます。
・ニュージャージーにて「HRマネジメントセミナー」が開催されます。
・2020年に向けて、従業員ハンドブックのアップデートはお済みでしょうか?
・2020年1月10日(金)トーランスにおいてHRマネジメントセミナー開催!
・12/11,12/12ニューヨークにて日系企業向けHRマネジメントセミナーを開催いたします!
・すぐに実践できる!アメリカの企業に学ぶ、社員の士気を高める15の方法
・ネバダ州でのサービス拡大のお知らせ!ラスベガスで開催される展示会にもスタッフを派遣いたします!
・9/23「働き方改革 次の一手」~新しい時代のマネジメント~セミナーレポート
・10月8日(火)「ニューヨーク州セクハラ防止トレーニング」ウェビナー開催!
・イリノイ州において、職場でスタッフ全員に年に一度セクハラ防止トレーニングを提供することが義務付けられました。
・ニューヨーク州で、セクハラや差別に関する法律が改正されました。
・イリノイ州では採用時に過去の給料について尋ねることが禁止されます。
・【「働き方改革 次の一手」~新しい時代のマネジメント~ セミナー開催!(無料)
・カンザスシティでは採用時に過去の給料について尋ねることが禁止されます。
・知らないと会社が滅びる!?ミレニアル世代の考え方~今後の企業マネジメント変革
・「働き方改革 次の一手」~新しい時代のマネジメント~セミナー開催リポート
・夏休み期間の有給インターンシップ希望の学生をパートタイムスタッフとして採用した事例
【アメリカ転職・就職関連】
・プロに相談しよう!8月の「WEB就職・転職相談会」(無料)
・アマゾンジャパンで働きませんか?新規ポジション5件ご紹介!
・企業が欲しい人材になる!「ITリテラシーが高い人材」とは!?
・【転職成功談】コロナ影響下でも転職に成功した秘密を教えます。
・2021年度 新規H-1B申請数が年間上限発給枠に達しました。
・米国および各国大使館でビザ発給業務が一時停止されています。
・アメリカでの就職・転職活動にキャリアカウンセリングがおすすめな理由。
・アメリカでビザサポートのある最新求人を一挙にご紹介です!!
・メキシコで働いてみませんか?【就労ビザサポートのある】メキシコ最新求人
・アメリカで就職!最新版OPTの方の求人の探し方、お仕事探しの流れを教えます!
・あなたのレジュメは大丈夫?絶対外せない重要ポイントから最近のトレンド、NGまで
・アメリカで採用面接を受けた後、サンキューレターは出すべきか?出さないべきか?
・感謝の気持ちをこめて!「クイックUSA創立20周年記念キャンペーン
・プロが伝授!失敗から学ぶアメリカでの採用面接での成功の秘訣
【ビジネス】
【アメリカの生活を楽しむ】
・2020年最新!サウス・ストリート・シーポートとピア17の見どころ、遊び方
・ニューヨークの「ショーフィールズ」に未来のデパートの”カタチ”を見る!?
・ロックフェラーセンターのクリスマスツリー~サックスフィフスヴェニューのホリデーウィンドウ2019
・しっかり働いたら、週末にはおいしいものを食べに行こう!「IZAKAYA MEW Flushing」
・リラックスハーブで心と体を整える!おすすめハーブティー10選
・ニューヨークのメイシーズの「クリスマス・ウィンドウ・ディスプレイ」2019
・アトランタに行くなら必見!大人も子どもも楽しめる「コカ・コーラ博物館」
・ニューヨークのメトロポリタン美術館の「PLAY IT LOUD INSTRUMENTS OF ROCK & ROLL」
・ニューヨークのメトロポリタン美術館のファッション展覧会「CAMP : Notes on Fashion」
・ニューヨークに「MERCADO LITTLE SPAIN」誕生!
・ローワーイーストサイドの「エセックスマーケット」新たな場所で再オープン!
・ニューヨークで桜のお花見をするなら、セントラルパークがおすすめ!
・ロサンゼルスで”粉もん”が食べたくなったら「ちんちくりん」へ!
・ニューヨークのスターバックス リザーブ ロースタリ―でコーヒーカルチャーを楽しむ!
・ニューヨーク近代美術館(MoMA)のブルース・ナウマン特別展を見に行きました。
・ケネディスペースセンター・ビジターコンプレックスの見どころ、最新情報
【アメリカで働く人にインタビュー】
・アメリカで働く人にインタビュー【アクセスファイブ/代表 高橋伸さん】