就職、転職の際に意識したい！企業のパーパスとは

就職、転職の際に意識したい！企業のパーパスとは

最近ビジネスシーンでよく耳にする「パーパス」。パーパスは存在意義を意味し、近年、企業経営においてこうした問いかけの重要性が増しています。長年にわたり企業にとって最も重要なことは利益をあげることだとされていましたが、時代の流れは急速に変わりつつあります。今回はパーパスについて詳しくご紹介させていただきます。

パーパスとは

パーパスは目的と訳されますが、ビジネスや経営においては「存在意義」として使われます。経営理念と似ていますが、ミッションのように与えられるものではなく、社会性（組織の外）を意識した意味合いが大きくなるところがポイントです。つまり、ビジネスシーンで多く耳にするパーパスとは、社会とのつながりを強く意識して、企業が「社会において、何のために存在し、事業を展開するのか」という存在意義を明確に宣言するものです。

なぜ今パーパスが注目されるのか

アメリカのLinkedInが、3000人のビジネスパーソンを対象に2016年7月に実施した調査では、「人々の社会や生活に対してポジティブなパーパスを掲げる企業で働くならば、給与が下がってもかまわない」と答えた人は全体の49％という、なんとほぼ半数を占める驚くべき結果となりました。なぜパーパスを支持する考え方が広がっているのでしょうか。

企業経営やブランディングにおいてパーパスが重視されるようになった背景としては、次のような要因が考えられます。

１．ミレニアル世代の価値観の変化

1980年から1995年の間に生まれたミレニアル世代の間では、就職先を考える際に売上や利益、規模よりも、「企業文化」「社会への貢献度」をあげる人が増えています。単に商品を作り、サービスを提供すること以上のパーパス、すなわち自らの人生における「働く意味」や「自分自身の存在意義」を求めているのです。

２. エシカル消費に見られる消費志向の変化

物が家庭に行き渡り、かつ人口の減少によって消費市場全体が縮小するなか、現在は、「エシカル消費」が注目されています。消費者は自分の欲望や流行にとらわれず、環境や社会にとってよいビジネスを行っている企業を、その商品の購入という形でサポートしようとする傾向があります。この傾向は特にミレニアル世代以降の若い消費者に顕著にみられ、消費者はなぜその商品を購入するのかというパーパスを明確にすることで、自らの価値を他と差異化します。

３. 投資家の評価基準の変化

これまで投資家にとっては、企業を評価する上で「収益が得られるかどうか」がもっとも重要な基準でしたが、社会全体がサステナブルやESGへの志向を強めるに伴い、環境（Environment）、社会（Social）、ガバナンス（Governance）の観点を重視した「社会的課題の解決に貢献できるかどうか」という新たな評価基準が加わりつつあります。

このような要因から、パーパスは注目され、パーパスを経営に取り入れる企業が世界で増えているのです。

パーパスを持つ企業の取り組み

2019年にAmazonやApple、ウォルマートなどアメリカトップ企業の経営者たちをメンバーとする日本の経団連に類似する財界ロビー団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は「もはやビジネスの最終目標を利益にしない」という趣旨の声明を発表し大きな話題となりました。

これは、今まで半世紀に渡って続いてきた株主資本主義を支えてきた1970年代の経済学者ミルトン・フリードマンの主張、「企業の社会的責任は利益を増やすことにある」と大きく異なる主張であり、これからのビジネスの流れを変える大切な主張です。

このようなパーパスをベースに考えるビジネス経営をよしとする考え方は業界団体だけに受け入れられているのではなく、すでに先進的な企業や組織による、独自の取り組みも進んでいます。

パタゴニア

アウトドア系・スポーツ系アパレルブランドのパタゴニアは「パタゴニアは、我が故郷地球を救うためにビジネスを行う」というパーパスを掲げ、その実現のため様々な取り組みを行っています。

最も顕著な活動は全売上の1%を地球のために寄付する取り組みです。寄付金は「気候変動」「環境教育」「食料問題」など現在の地球における重要な課題に取り組む世界中の「サステナビリティに特化したNPO」に寄付されています。

またパタゴニアは、特別減税で手にした税金還付金1000万ドル（約11.5億円）やホリデーシーズンのセールの売上1000万ドルも、気候変動問題解決を目指す研究団体などへ寄付しています。

さらに、2016年には原材料となる土壌利用方法、動物の取扱いなどサステナビリティを確保するための基本原則を定め、商品の原材料も「地球にやさしいもの」を使用しています。

Amazon

Amazonのパーパスは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」です。Amazonではパーパスを実現するため、「価格」「品揃え」と「利便性」をイノベーションで改善していくというミッションを掲げています。

例えば、重たい荷物を運べない高齢者に低価格で迅速な配達を実現するシステムや、仕事や子育てで忙しい女性や都会に住んでいない地方在住者の方でも欲しいものが便利に買い物できるサービスを提供することにより、お客様が不便だと思っている事への解決を実践しているのです。

こうした取り組みを行うことによりAmazonは豊富な品揃えがあり、便利で低価格であるというブランドイメージを確立しています。

ネスレ

売上高世界最大の食品メーカー、ネスレは、「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」というパーパスを掲げ、未来のために植物由来食品を開発したり、2025年までにネスレ製品のパッケージを100パーセントリサイクル可能、あるいはリユース可能にし、プラスチックの使用を3分の1削減するという目標に向けて、研究と技術革新を推進させています。

また、若者をバーチャル教育で支援するため、複数の地域でバーチャル インターンシッププログラムを新たに開始したり、牛乳たんぱく質アレルギーの乳児を支援するための商品を開発して販売するなど、「個人と家族」「コミュニティ」「地球」の3つの領域で活動を展開しています。

パーパスが社員という個人に与える影響

企業のパーパスの制定は社員にとっても重要なファクターです。企業がパーパスを実践するために活動を行うことにより、社員は日々自分が携わっている仕事が、回り回って社会にどのように役立っているのかをパーパスと結びつけながら実感することが可能になります。

また企業のパーパスが社員の「何を達成したいのか」「何を大切にしているのか」「社会に対してのどのような影響を与えたいのか」などといった個人的なパーパスと一致することができれば社員は仕事に対して大きなやりがいや誇りを感じることができます。また社員はワークエンゲージメントが高まることで、個人の力を最大限に発揮しやすくなります。

何のために働いているのかが明確になれば社員は仕事に一生懸命に向き合うことができ、自身の仕事に意義を見出せれば自然と成果が生まれ、社員の成長や人生の喜びにもつながるのです。

企業のパーパスを知るには

企業のパーパスを知るにはそれぞれの企業のウェブサイトを閲覧するのがおすすめです。パーパスに力を入れている企業であれば、パーパスそのものだけではなく、なぜ企業がそのパーパスを掲げているのかなどの説明、その企業のパーパスを実現させるための具体的な取り組みなどが詳細に書かれています。

またインターネットや新聞、雑誌などでその企業が取り上げられている記事を読むのもよい方法です。パーパスのことが書かれていなくても、記事の中にその企業のパーパスにつながる業務の内容や、パーパスを実現させるための取り組み、またその企業が社会に対してどんな影響を与えているかが書かれていることがあります。

商品を販売している企業であれば、商品を実際に購入して使用してみるのおすすめです。デザインや使いやすさ、使っている材料など、その商品には企業の理念が表れているはずです。サービスを提供する企業であれば、そのサービスを使ってみるのもよいですね。

就職、転職活動の際には企業のパーパスを意識！

企業のパーパスは社員の働きがいや仕事における喜びに直結する非常に重要な要素です。就職活動や転職活動をなさっている方は、企業を選ぶ際に、ぜひ企業のパーパスを意識してみてください。同じ業種であってもパーパスがある会社とない会社では働きがいが全く違うかもしれません。

まずは自分が「何を達成したいのか」「何を大切にしているのか」「社会に対してのどのような影響を与えたいのか」をしっかり考え、企業が掲げているパーバスに注目するのも、自分にフィットする企業の見つけ方の一つの方法かと思います。

パーパスを追求している企業の場合で、自分の考えと方向性が合致していれば、面接の際の志望動機などでしっかり自分の考えを伝えるとよいでしょう。

またパーパスのリサーチをすることで企業のことをよく知ることができれば、就職や転職が決定して働き始めた後に、思っていたのと違うなどのミスマッチを事前に防ぐことができます。

今回はビジネスシーンで最近注目されている「パーパス」について詳しくご紹介させていただきました。就職、転職活動の際は、ぜひ企業のパーパスを意識して活動を行い、やりがいがあり、誇りが持てるお仕事を見つけましょう。