あなたの仕事は将来もあるか？リスキリングのススメ！

最近、ビジネスシーンでよく耳にする「リスキリング」。リスキリングは2020年1月に開催された世界経済フォーラム（ダボス会議）で第4次産業革命に対応した人材を育てるための「リスキリング革命（Reskilling Revolution）」が発表され、「2030年までに世界で10億人をリスキリングする」ことが宣言されたことがきっかけとなり、多くの人が知るようになりました。今回はリスキリングについて詳しくご紹介させていただきます。

リスキリングとは

リスキリングとは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、あるいは、新しい職業に就くために必要なスキルを獲得することです。特に最近ではデジタル化により生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変化する職業につくためのスキル習得を指す傾向があります。

リスキリングが注目されている理由

近年は社内でデジタル化を進めるDX（デジタルトランスフォーメーション）の推進が世の中に浸透してきています。業務をAIやコンピューターなどのデジタルを活用して行うことにより、業務効率をアップさせたり、サービスのクオリティを高めるといった事業運営に良い影響をもたらします。このDXを現場で実践するにはデジタルやコンピューターに関する知識を新たに習得する必要があり、その結果、リスキリングが注目されるようになっています。

また新型コロナウイルスの流行によって働き方が変わった企業も多く、顧客とのやり取りが対面からオンラインへ移行したり、社内勤務からテレワークに変わったりし、それに伴なってスキルを身につけなければならない状況も生まれており、これもリスキリングが注目されている理由の1つです。

2015年にオックスフォード大学と野村総研によって「日本の労働人口の49％はAIやロボット等で代替可能になる」という試算が発表されました。またマッキンゼーの調査『未来の日本の働き方』によると、「2030年までに既存業務のうち27%が自動化され、結果1660万人の雇用が代替される可能性がある」といわれています。

リスキリングを考える際にDX（デジタルトランスフォーメーション）が進み、今後の業務がますますAIやコンピューターなどのデジタルを活用して行われていく上で、将来的にAIやコンピューターに代替される可能性のある仕事や、DXが進行した場合に職場で重宝されるスキルについて知っておくことはとても重要です。まずは代替されてしまう仕事について考えていきましょう。

将来的にAIに代替される仕事の特徴

今後、AIに代替されうる可能性の高い仕事の特徴は単純作業がメインの仕事と複雑なコミュニケーションをする必要がない仕事です。

単純作業の仕事はAIの方が人間より作業効率・精度が高くミスが少なくなり、またAIは機械であるため休憩などをする必要がなく、24時間動き続けることが可能です。そのため単純作業をAIに任せることは、企業にとって効率・精度の向上というメリットがあります。

また複雑なコミュニケーションを必要としない仕事もAIに代替される可能性が高いです。まだ時間はかかりそうですが、例えば銀行の窓口での業務や、警備、電車の運転などの業務は複雑なコミュニケーションを必要とせず、今後AIがますます発達することによりAIに代替される可能性が十分にあるといえます。

AIに代替されない仕事の特徴やAI時代に必要なスキル

一方、AIが代替できない仕事は、人間の方がAIより優れている想像力や感性といった能力が必要とされる仕事です。

創造力とは、「独自の方法で、新たなものを創り出す力」のことで、人はAIより優れた創造力を持っていると考えられています。AIは既存のデータの特徴・パターンを学習することで能力を身につけるため、「新たなもの」を創り出すことが非常に苦手だからです。AIを用いて効率よくデータを集め、分析を行うことは可能ですが、そこで得た情報をどう活用し、何を生み出すのかを考えるのは人間にしかできません。

また感性とは「五感を使って相手の思考・感情を感じ取る力」です。感性は人間特有の性質であり、現時点でAIに人間と同等の感性を持たせることは不可能です。人間が持つ優れた感性は、特に深いコミュニケーションを必要とされる場面で活躍します。

例えばカウンセラーは、会話において言葉だけではなく、相手の表情や身振り、語気などから、相手の考えていることや感情を読み取る必要があります。ですが、AIは相手の感情や考えを読み取る感性を持っていないため、このような仕事をこなすことはできないのです。

つまり、AIの活用が進む現代でこの先、必要とされる能力は

１. チャレンジ精神や主体性、行動力、洞察力などの人間的資質

２. 企画発想力や創造力

３. コミュニケーション能力やコーチングなどの対人関係能力

など先ほど述べたように、AIではなく人間だからこそ持てる創造力や感性といった能力に関係するものが重要な価値あるスキルになる時代が来ることが予想されます。

リスキリングに人気の内容や職業

リスキリングは一般的に「情報通信業」「金融業、保険業」「教育、学習支援業」などの業種で盛んであり、職種でいうと「経営・経営企画職」「IT系技術職」「営業推進・営業企画職」」「企画・マーケティング職」「商品開発・研究職」などで盛んなようです。

リスキリングを行うための方法にはいろいろな方法がありますが、近年では特にオンライン学習サービスが人気です。人気の高いオンライン学習サービスの１つである「LinkedInラーニング」は、LinkedInを登録しているユーザーであれば誰でも利用できるオンライン学習サービスです。最近ではコロナの影響でオンライン研修が増えたため、社員教育のためにLinkedInラーニングを導入する企業も増加しています。

世界中の人が学ぶ、LinkedInラーニングでの人気の高いオンラインコースはパイソンやエクセル、オンラインマーケティングなど実務的なコースに加えて、タイムマネジメントやコミュニケーションスキル、プロジェクトマネージメントなどのコースなどになっています。実務的なハードスキルだけではなく、コミュニケーションやタイムマネージメントなどのソフトスキルのコースにも人気があることは注目に値します。

一方、日本国内で人気のオンライン動画学習サービス「Udemy Business」においては2022年上半期に受講された人気講座トップ10のうち８講座がDX及びIT関連の講座であり、この結果から現在の日本でのリスキリングの主流はDXであり、エンジニアなどIT系の職種の人に限らず、文系職を中心とした、社会人の大多数を占める「ITを使う人」のリスキリングも加速していることがわかります。

リスキリングに積極的に取り組む米国大手企業

世界経済フォーラムが2020年に発表したレポート「The Future of Jobs Report 2020」によれば、2025年までに8,500万の仕事が機械などに置き替えられる一方、9,700万の新しい仕事が、人間・機械・アルゴリズム間の分業に適応することで生まれる可能性があると推定されています。こうした状況の下、米国企業は様々なプログラムを用意し、人材を新たな成長分野へシフトさせる「リスキリング」に積極的に取り組んでいます。

例えば、米アマゾンは12億ドル以上を投資し、2019年から2025年までの6年間で、約30万人の従業員に無料でリスキリングの機会を提供すると発表しています。輸送ネットワーク、オフィスやフルフィルメントセンター、テクノロジーハブ、小売店にまたがる幅広い従業員向けに技能訓練プログラムを立ち上げ、その規模を年々拡大していく予定です。

またAmazonは入社してから90日以上経過した従業員を対象にアメリカ国内数百の大学における準学士号あるいは学士号取得にかかる費用を100％給付、さらに高校修了やGED、非英語母語者の英語習得のための経済支援も行っています。

通信大手の米ベライゾンは、2030年までに社内外の約50万人の労働者を訓練することで、デジタル時代の新しい業務に適応させる「Verizon Skill Forward」という無料のオンライン教育プログラムを展開しています。プログラムではウェブ開発者やITサポートスペシャリスト、Java開発者、デジタルマーケティングアナリスト、クラウドプラクティショナーなどに必要とされるスキルを学ぶことが可能です。

ターゲットは従業員の教育や学費、学生ローンの返済を軽減するために4年間で総額2億ドル（約220億円）の教育プログラムを導入しており、その一環で、米国内で同社が提携する大学や短大など40校に通う従業員の学費や教科書代を全額負担しています。また、米ウォルマートの教育プログラム「Live Better U」でも、同社の従業員を中心に150万人分の大学授業料と書籍代を同社が100％負担しています。

Googleは社内だけでなく、社会に対して広いリスキリングのためのトレーニングを提供するために、「Google Career Certificates Fund」という1億ドル規模の基金を発表しました。この基金は、アメリカにおける労働者の3分の2を占める学位を持たない人々向けに、より条件がいい仕事を見つける役に立つスキルのトレーニングプログラムを提供することを目的としています。

このように、米国では多数の大企業が積極的に従業員や社会に対してリスキリングに取り組んでおり、また、従業員のリスキリングは企業にとって成長するための重要な戦略になっています。企業内でリスキリングが活発に行われるようになれば、技術職の人材不足などが社内異動で賄われるようになり、退職率は減少し、また、空いたポストを社内の昇進によって満たせる確率が増加するからです。

また、個人はリスキリングを行うことにより今までに持っていなかったスキルを獲得し、キャリアアップや年収アップを見込むことが可能となりチャンスが広がります。今後はリスキリングをするかしないかで企業も個人も将来的な成果に大きな違いが出ることになるでしょう。

今後、DXが進むにつれてAIやコンピューターが活用されることが増えれば、リスキリングもそれに伴い、ますます盛んになっていくことが予想されます。皆さんも、時代の波に取り残されないように、ぜひ、今回の記事を参考にリスキリングにチャレンジしてご自身のチャンスを広げてみてください。

【参考リンク】

The Most Popular 20 Courses to Help Your Employees Reskill for What’s Ahead

―社会人の学び・リスキリング最新トレンド2022ー社会人35,000人と国内800社のUdemy受講トレンドを分析

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