アメリカではさまざまな分野で、数多くの日本人の方が活躍されています。このコーナーでは、そうしたアメリカで働いている日本人の方に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いしています。今回はニューヨークで、フォトグラファー/シネマトグラファーとして活躍していらっしゃる大野早苗さんにお話を伺いました。
ニューヨークで働く、フォトグラファー/シネマトグラファー、大野早苗さん
大野早苗さん(Sanae Ohno)
Photographer/Cinematographer
https://OHNOPHOTO31.wixsite.com/mysite
「いいもの」をつくり続けていきたいです。
…大野さんの現在のお仕事について教えてください。
主に映画、ドキュメンタリー、コマーシャル関連で、フォトグラファーとシネマトグラファーの仕事をしています。現在はどちらかというと静止画の写真より動画のお仕事の方が増えてきています。
…シネマトグラファーというのはどのようなお仕事でしょうか?
英語でいうとDirector of Photographyで、日本語に訳すと撮影監督になります。映画などの撮影の現場で一台のカメラを動かすには、シネマトグラファー、オペレーター、ファーストアシスタント、セカンドアシスタント、ローダー、メディアマネージメント、カメラプロダクションアシスタントという役割の違う複数のスタッフがチームとなって仕事をしています。シネマトグラファーは、簡単に言うと、監督と一緒にストーリーを映像に視覚化する仕事です。
撮影NeroでCinematographerとして参加した時
…これまでずっと撮影のお仕事をされてこられたのでしょうか?
私の経歴はちょっと変わっていまして、日本の大学では獣医学を学び獣医師の国家資格をとりました。卒業後は外資系の製薬会社のアニマルヘルス部門に4年ほど勤めました。仕事としては、MRの仕事と獣医師として技術支援を主に担当していました。後者の仕事では、畜産業を営む農場や診療所に出向き、動物の健康状態や病気を診断して農家の方にアドバイスさせていただいたり、現場で得た情報をセミナーなどでフィードバックするということをしていました。
…写真はどのように始められたのでしょうか?
ミュージシャンの友達に頼まれて、ライブに行って写真を撮っていたところ、ありがたい事に、色々な人から撮影を依頼されるようになりました。音楽も好きだったので、どんどんとハマっていきました。週末はフェスを撮ったり、平日も時間があればライブハウスに行って写真を撮っていました。
…写真は学校で学ばれたのでしょうか?
いいえ、写真は独学で学びました。ライブハウスでよく写真を撮っていましたが、ライブハウスは暗く、演奏中はミュージシャンも常に動いているので、撮影するのがとても難しくて、試行錯誤しました。カメラ屋さんへ行っては、カメラの機能についてよく質問をしていました。
…ニューヨークにいらしたきっかけはどのようなことですか?
会社に勤めて4年くらい経った時に開催された新商品のコンペで、会社でトップの売り上げを達成することができました。全国一になれた嬉しさと充実感を感じることができました。製薬会社での仕事は嫌いではありませんでしたが、一年だけ自分の好きなことをする時間を持ちたいと考えて退職を決意、ニューヨークへの留学を決めました。
…なぜニューヨークだったのでしょうか?
ニューヨークには中学時代の友人が住んでいたこともあり、何度か旅行で訪れたことがありました。そうした旅行を通じてニューヨークという街が好きになり、いつか住人としてこの街を歩いてみたいと思うようになりました。
…ニューヨークでは何を学ばれたのでしょうか?
まず、ニューヨークフィルムアカデミーで写真と動画について学びました。そこではスタジオ撮影の技術や、動画の撮影から編集まで、ざっくり勉強しました。その後、メトロポリタン・カレッジ・オブ・ニューヨークに編入し、メディアマネジメントのMBAを修了しました。
…ニューヨークではどのようにして仕事を見つけられましたか?
メトロポリタン・カレッジ・オブ・ニューヨークに在学中の時から、テレビのプロダクション会社でインターンを行い、実務の経験を積ませていただきました。大学院の卒業後もその会社で暫く働かせていただいていましたが、その後フリーランスとして独立して撮影の仕事をするようになりました。
…フリーランスとしての初めてのお仕事はどのようなものでしたか?
大学院の教授から、ショートフィルムの撮影現場でのファーストアシスタントのお仕事を紹介していただきました。そして、その現場で出会ったシネマトグラファーの女性が小さな体で大きなカメラを担いでいる姿に感銘を受け、またその方と一緒に仕事をしたいと思い、今後も是非呼んで欲しいとお願いしました。彼女がその後も引き続き現場に呼んでくださり、映画の現場で働くキャリアがスタートしました。今も彼女とは、何かあれば相談ができる良い関係が続いています。
コネチカットでの映画の撮影時の写真
…フォーカスというのはどのような仕事なのでしょうか?
写真も動画も今は自動で焦点がとれるオートフォーカスが主流ですが、映画ではオートフォーカスは使いません。焦点専門の担当がいて、カットの最初にはどこに焦点をあて、次にどこに移動するかを考えて、焦点をとる役割の人をフォーカスプラーといいます。
…初めて映画のお仕事をされた時はどんな印象を受けましたか?
当時は英語でのコミュニケーションに自信がなくて緊張することも多かったかと思います。現場では離れた所にいるスタッフと無線で会話しながら空いた耳で近くのスタッフの指示を聞かなければいけません。当然会話はすべて英語ですので、理解できないこともありました。その場合、スタッフの所に行って間違えないように指示を確認していました。いつもソーリー、ソーリーと謝ってばかりいた私に、ある日ボスが「君はなぜいつも謝ってばかりいるの?」「チームメイトなので謝る必要なんてないよ」と優しく言ってくれました。
ペンシルベニアでの映画の撮影時の写真
…その時どのように思われましたか?
みんなに迷惑をかけていると思い、知らぬまにソーリーが口癖になってしまっていた自分に気がつきました。日本で働いていた時に、足並みを揃えないといけない、人の足を引っ張ってしまってはいけないという考えが体に染み込んでいたのだと思います。日本語の“すみません”には“ありがとうございます”も含まれます。ただ、英語でソーリーはただネガティブな言葉でしかないと気がつきました。
…他にどのようなことを話しましたか?
彼から「チームは助け合うもので、できない人がいたらできる人がサポートすればいいんだよ」「そしてチームで良い仕事をすればいいんだ」と言われました。こちらでは良い仕事ができなければチーム全員が解雇されてしまう事もあります。それからはチームのことを考えて、みんなが気持ち良く働けるよう笑顔でいる、ポジティブな言葉に切り替える、など気を配るようになりました。
…日本とアメリカとでお仕事をされてきて、何か“気づき”などはありましたか?
日本で営業をしてきたことが、ここでも活かされていると思います。当時も、相手が何を欲しているかを理解して、どのようなコミュニケーションをとればよいかを考えながら、まず人間関係を築くことから始めていました。
アメリカでも同じで、仕事の基本は信頼関係だと思います。どんな仕事でも、世界中のどこでも、信頼関係を築く事が何よりも大切なのだと気がつきました。
…これまでアメリカで仕事をされてきて印象に残るエピソードなどはありますか?
映画の撮影の仕事では、スタッフと何カ月も同じホテルに宿泊して仕事をすることがあります。ある現場で仕事が終わった後、いつものようにホテルで焚火を囲んで話をしていた時に、一人の青年がベテランの先輩に質問をしました。「この仕事をずっと続けられる秘訣は何ですか?」と。質問を受けた先輩はゆっくりとこう答えました。「いい人でいることだよ」。そして続けて「大きな声で怒鳴っている人とは一緒に仕事をしたくないでしょう」と話してくれました。シンプルな言葉ですが、いい人でいることは難しい時もあると思うので、とても深い言葉だと思いました。
…アメリカでの仕事で心がけていることは何でしょうか?
たくさんありますが、あえて一つあげるとしたら「オープンでいること」です。ポジティブな自分の気持ちや考えを常にスタッフと共有することが大切だと思います。仕事の効率や質を向上できる意見であれば、尻込みせずに相手に伝えるべきだと思います。アメリカでは、よいアイデアや考えであれば、それを取り入れてくれる環境があり、結果的に、良い仕事につながると思います。
コネチカットでの映画の撮影時の写真
…数々のお仕事をされてこられたと思いますが、印象に残るお仕事について教えて教えてください。
3年以上も前の仕事ですが、ショートフィルムの撮影で、有名な女優さんとお仕事をさせていただきました。耳も遠くなられて、認知症も少し始まられた高齢の女優さんでしたが、カメラが回った瞬間、彼女を取り巻くオーラが一瞬で変わりました。その時はプロとしての女優さんの素晴らしさやすごさを目の当たりにして、鳥肌の立つ思いでした。そして、こうした瞬間を経験させてもらえる今の仕事を選んで本当に良かったと思いました。
…仕事での喜び、やりがいについて教えてください。
私達の仕事は現場ごとに解散するので、二度と会えない方もいらっしゃいます。そのような中、一緒に仕事をさせていただいた方から、別の現場に呼んでもらえた時はとても嬉しく思います。仕事に対して良い評価をいただけたのだと思いますし、また一緒に仕事がしたいと思っていただけたことだけでも光栄に思います。
…今後の夢や抱負について教えてください。
予算や時間には制限がありますが、その中でなるべく妥協しないで「いいもの」をつくり続ける人になりたいと思っています。そのためには、自分の技術を向上させていかなければいけないと思いますし、仕事に対する気持ちも前向きでいたいと思います。
…アメリカで仕事を探している人にメッセージをお願いします。
アメリカは無限のチャンスが開けている場所だと思います。アメリカでは、目標の大きさに関わらずゴールに向かう道には障害が少ないと思います。目の前の道は開けていますので、あとは自分が先に進んでいくだけです。とにかくがんばれば何かしらのチャンスが待ち受けています。また、がんばればがんばっただけの努力が報われる国だと思いますので、とにかく信じて前に進んでみてください。
また、やりたい事を見つけて、キャリアチェンジに迷っている方がいらっしゃったら、是非挑戦していただきたいです!好きなことに夢中になっている時のエネルギーは年齢関係なく、何よりも力強いと思います。
…ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
【取材協力・お問合せ】
大野早苗さん(Sanae Ohno)
Photographer/Cinematographer
Web Site:https://OHNOPHOTO31.wixsite.com/mysite
Email: ohnophoto.31@gmail.com
【取材・文】
QUICK USA, Inc.
菰田久美子(Kumiko Komoda)
Email:quick‘@919usa.com
★★クイックUSAにレジュメのご登録がまだの方は、今すぐご登録ください!★★
クイックUSAでは、ご登録者の方に対して無料のキャリアカウンセリングを実施しています。
★★Emailにてレジュメを送るだけで登録完了のエクスプレス登録もご利用いただけます!★★
アメリカで現在お仕事をされている方、OPTや学生の方など、現在アメリカに住んでいらっしゃる方へ
アメリカでのご転職・就職で何かご質問がございましたら下記よりご連絡ください。
【アメリカでのご転職・就職をお考えの方へ】
★アメリカでのお仕事探し、就職・転職はクイックUSAにお任せください。
弊社のサービスにご登録がお済みでない方は、まずは英文履歴書のご登録をお願いいたします。
www.919usa.comより、オンライン登録をしていただくか、
quick@919usa.comまでE-mailにて英文履歴書を添付ファイルにてお送りください。
折り返しご連絡させていただきます。
※クイックUSAではニューヨークとロサンゼルスを拠点に全米で、留学生や社会人の求職者に対してアメリカでの就職・転職のお手伝いをしています。ご紹介しているお仕事は、金融、会計、IT、輸出入、人事、営業など多岐に渡ります。 雇用形態はお仕事をお探しの方のライフスタイルに合わせて、 フルタイムのお仕事とテンポラリーのポジションをご紹介。
クイックUSAでは経験豊富なリクルーターが、求職者の皆様一人ひとりのご希望などを伺いアメリカでのキャリアプランを一緒に考えさせていただいています。 アメリカでお仕事をお探しであれば、アメリカ求人多数のクイックUSAに是非ご登録ください!(無料)
【お問合せ】
QUICK USA, Inc.
[New York Office ](Headquarters)
8 West 38th Street, Suite 802, New York, NY 10018
Email:quick@919usa.com
Phone: 212-692-0850
[Los Angeles Office ]
1995 W.190th Street, Suite 200 Torrance, CA 90504
Email:quickla@919usa.com
Phone: 310-323-9190
[Dallas Office ]
5851 Legacy Circle, Suite 600, TX 75024
Email:quicktx@919usa.com
Phone: 469-626-5265
[Dallas Office ]
5851 Legacy Circle, Suite 600, TX 75024
Email:quicktx@919usa.com
Phone: 469-626-5265